【第三話】 箱根・小田原 食い倒れ、そして不本意な帰路
箱根・小田原 食い倒れ、そして不本意な帰路
モビリティーパークでの撤収は静かに始まった。
昨夜も焚き火を眺めながら一人満足気に酒を飲み、今朝は焚き火台の煤を落としつつ、のんびりとコーヒーを啜る。これもまたキャンプの醍醐味。
キャンプ道具を積み込み、Z900に火を入れる。
今日はもう一走り、箱根・小田原を回って、食べ歩いて、満腹で帰る日。
ルートは海沿いではなく、あえて山を抜ける。三島から箱根峠を越え、芦ノ湖方面へと向かうワインディングは、春の陽気も手伝って実に気持ちがいい。
箱根の山間、国道一号線を下り、「Bakery & Table 箱根」へ立ち寄る。
テラス席から芦ノ湖が望める人気のベーカリーカフェで、開店直後でもすでに行列ができている。
名前を書き、しばし待つ。待っている間も、他のライダーと軽く言葉を交わす。
「今日はどちらまで?」
「小田原で飯食って帰ります。」
「それ、正解。」
……どこか昨日も聞いたような会話だ。
呼ばれて席に案内され、ブレンドコーヒーと「サーモン フォカッチャサンド プレート」を注文。休日の朝、これ以上の贅沢はない。
カウンターの女性スタッフに
「平日もこの混みようですか?」
と尋ねれば、笑顔で
「晴れた日はほとんどこんな感じですよ。バイクのお客様も多いです。」
「でしょうね。」
と、お互い笑う。
■
満足して再びZ900を走らせ、次は小田原・早川漁港へ。
ここも食い倒れには欠かせないスポット。立ち寄るのは、地元でも評判の食事処、「魚市場食堂」。
早めに到着したため並びは短い。注文したのはもちろん、刺身定食(上)。
プリプリの鯵、脂の乗った鰤、赤々とした鮪、どれも新鮮そのもの。
「市場直送だもんね。」とつぶやきながら、ご飯を掻き込む。
隣の席に座っていた年配夫婦と自然と会話が弾む。
「ライダーさん、今日はどこから?」
「伊豆キャンプ帰りです。」
「いい趣味してるわぁ。うちの息子も昔はバイクでよく走ってたのよ。」
「また走れるといいですね。」
と、ほっこりしたやり取り。こういう時間も旅のご馳走。
■
食後、小田原漁港を軽く散策し、干物や地元野菜を土産に購入。
このまま下道で群馬まで……と考えていたが、ここで思い知る。
「下道、混み過ぎ……」
国道一号も134号も渋滞。GWでもないのに、この混雑。
悩んだ末、背に腹は代えられず、小田原厚木道路から圏央道へとルートを取る。
不本意だが、高速ワープ。
狭山PAでコーヒーを飲みながら、一息。バイク置き場にはキャンプ道具満載のバイクがちらほら。なんとなく、同志感がある。
「渋滞には勝てんよなぁ……」
Z900を労りつつ、アクセルを握る。
■
群馬に戻ったのは夕方前。
無事故無違反、今回も良い旅だった。
キャンプギアを降ろし、干物を冷蔵庫へ入れ、土産を机に並べる。
ソファに座って、ふとつぶやく。
「さて、次はどこ行こうか。」
またバイク旅は続く。
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