【第一話】 「小さき鉄馬と、群馬ローカルグルメ放浪。」
群馬・伊勢崎市から北へ向かう朝。
今日はハンターカブ125で、のんびりソロキャンプだ。
目的地は川場村、桐の木平キャンプ場。
10時過ぎに出発。
普段は大型バイクに慣れた体も、今日はこの相棒と気楽な旅だ。
前傾にならず、景色を眺めながらトコトコ走る感覚は心地よい。
榛名を横目に、渋川市街へ。
今日の昼飯は決めている。
「林屋食堂」。
渋川の中心部にぽつんとある、昔ながらの町食堂。
派手さは無い。暖簾が少し日焼けしているのがまたいい。
店内に入ると、昼前にも関わらず地元の常連たちがすでに何人も、新聞片手にラーメンをすすっている。
カウンターに座れば、厨房のおばちゃんが「いらっしゃい」と笑顔。
この空気、嫌いじゃない。
ここは迷うことなく、看板メニューの「ソース丼とラーメンのセット」。
群馬で「ソース丼」と言えば、ソースかつ丼。
丼には、薄めに叩かれたカツがたっぷり。ソースは甘めの濃厚タイプでご飯が進む。
ラーメンは昔ながらの中華そば。
透き通ったスープに、ちぢれ麺。チャーシューもメンマも、昭和そのもの。
一口すすれば……「これこれ」。
変に凝ってない。けれど旨い。ホッとする。
周囲の常連たちは、黙々と食べているようで、実は厨房のおばちゃんとも会話を交わしている。
「今日は暑くなるなぁ」「もう田んぼ起こしたかい?」
──そんな日常が流れている。
食後、
「ごちそうさま」
と言うと、おばちゃんは
「ありがとね、どこ行くの?」
と聞いてくる。
「川場まで、キャンプなんですよ」
「あー、いいとこ行くじゃない。気をつけてねぇ」
こういう店がある土地に生きている自分が、ちょっと誇らしい。
■
満腹の腹を抱えて、再びハンターカブで北へ。
赤城山の麓をかすめつつ、利根川沿いを走る。
山が近くなると、空気が涼やかになる。
小排気量だからこそ感じられる景色と匂い。
それが今日の旅のご馳走だ。
「急がない、焦らない。」
ハンターカブの旅は、そう言ってくれる気がする。
■
午後1時過ぎには道の駅 田園プラザ川場へ到着。
群馬では有名な場所だ。観光客も多いが、ソロライダーには居心地の良いスポット。
土産物コーナーを覗き、ビールとソーセージ、パンを購入。
クラフトビールは晩酌用。パンはカンパーニュ。ソーセージは地場のハム工房製だ。
ベンチに腰掛けてソフトクリームを食べていると、隣に腰掛けた爺さんが話しかけてきた。
「そのバイク、面白い色してるねぇ」
「ハンターカブってやつなんです」
「あぁカブか。わしも若い頃は郵便屋で乗ってたよ」
そこから、しばらく爺さんの昔話が始まる。
郵便屋時代、冬の榛名山をカブで登った話。
山奥の郵便配達は過酷だったが、それが今はいい思い出だという。
「バイクはいいねぇ。どこでも行ける」
そう言って爺さんは立ち去った。
こういう会話が、不思議と旅の記憶に残る。
■
午後4時、桐の木平キャンプ場へ。
受付はすぐ終わり、森の中のサイトにバイクを止める。
地面は硬く、ペグが刺さらない。
汗だくで苦戦していると、隣のサイトのソロキャンおじさんが登場。
「貸すよ」
差し出されたのは、鍛造ペグとハンマー。
「こういう時、安物はダメだねぇ」
と笑うおじさんに、心から感謝する。
設営完了。冷えたビールを開ける。
ソーセージを焼き、カンパーニュを炙る。
焚き火の準備もして、静かな時間が流れる。
「ハンターカブで、今日はここまで来た」
そう思うだけで、何だか誇らしい。
■
夜、焚き火とビール。
遠くでフクロウが鳴く。
ソロキャンプの醍醐味は、こういう静けさにある。
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