【東北編・第四話】
黙って手を振り、Z900にまたがる。
──さて、ここから秋田だ。
山形から秋田へ抜ける道は数あるが、今回は下道オンリーで横手経由、男鹿半島方面を目指すことにした。
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◆ 山を越え、空気が変わる
国道13号を北上し、湯沢方面へ抜ける峠に差し掛かると、空気がガラリと変わった。
山形の湿り気を含んだ風から、秋田の乾いた、どこか素朴な匂いを持つ風へ。
「お、来たか。秋田の空気……」
バイクを止め、深呼吸する。山を越えると、旅の気分もまた一段上がる。
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◆ 昼食:横手で本場の「横手やきそば」
ちょうど正午を少し回った頃、横手市に入った。
腹が減るタイミングとしては完璧だ。
道の駅でも良かったが、せっかくなので街中の老舗へ足を運ぶ。
地元の人が集う雰囲気のある「食い道楽本店」へ。
注文したのはもちろん「横手やきそば(目玉焼きのせ)」。
もちもちの太麺に甘みのあるソースがたっぷり絡み、トッピングの半熟目玉焼きが見事にアクセントになっている。
刻み福神漬けの塩気が、また絶妙だ。
「これは、ビール飲みたくなるけど……まだ走るからガマン」
うまい飯を食べると、それだけでその街に好感が持てる。
腹を満たし、Z900に再び火を入れる。
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◆ 日本海を目指して走る
午後2時すぎ、再び北へ。
国道107号から寒風山方面へと走る。山を抜けて広がるのは、秋田特有の果てしない田園と、どこまでも高い空。
バイクを走らせながら、旅の孤独と自由をしみじみと噛み締める。
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◆ 鵜ノ崎海岸キャンプ場
今夜の宿は、無料の鵜ノ崎海岸キャンプ場。
目の前に広がるのは、干潮時には「日本のウユニ塩湖」とも言われる不思議な景観の海岸だ。
砂混じりの草地にテントを設営する。風があるのでペグは深めに打ち込む。
隣のキャンパーは年配の夫婦。軽く会釈を交わしつつ、静かに焚き火を準備する。
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◆ 旅人の夕餉:秋の炊き込みご飯と肴
今夜は手をかけすぎない、けれど少し秋を感じられる飯がいい。
スーパーで買ったウドとしめじ、舞茸、ささみの水煮。これらをメスティンに入れ、出汁と醤油を少し。
焚き火の端でじっくりと火を通す。
時間をかけて火を入れ、炊き上がった瞬間、ふわりと広がる香ばしい香り。
「うまそう……」
比内地鶏の炭火焼と、炊きたての炊き込みご飯。
高清水をちびちびと飲みながら、夕焼けに染まる海を眺めてひと息。
喧騒はない。ただ、風と、波と、遠くに聴こえるカモメの声。
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