第8話 朝ごはんをつくろう
夜更かしした翌朝は眠たいものなのですが…
揺り起こされた。
眠い目をこする。
「お母さん?」
と、おでこにチューされた?!
びっくりして目を見開くと
クスクスと笑っているセンパイだった。
「杏ちゃんはいつもおはようのキスをしてもらってるの?」
いえいえいえいえいえ!!
全力で否定する。
「ドアの外から『起きなさい』と言われるだけです」
センパイにますますクスクスと笑われる。
あぁ 朝から恥ずい
思わず下を向いてしまった私の頭にセンパイはそっと手を置いた。
「一緒に朝ごはん。作りましょ!」
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「杏ちゃんは食べる事、好きでしょ? でもね!料理を覚えると、もっと食べる事が好きになるし、人に食べてもらえる楽しみも生まれるの。こんな素晴らしい体験をしないなんて残念だと思わない?」
それは確かにそうだけど…私は不器用だし、大変そう… と不安な顔をしてしまう。
「今日は杏ちゃんにきゅうりの酢の物を作ってもらいます。昨日美味しかったでしょ?」
「あぁ!あの大根おろしみたいなので作るんですね?」 ちょっとホッとした。
センパイはまたクスクスと笑う。
「スライサーの事? 無くはないけど、それでは練習にならないので…」
と冷蔵庫からきゅうりを2本出してきた。
「まずは流しで洗ってちょうだい」
私から洗ったきゅうりを受け取ったセンパイはその内の1本をまな板の上に置いて包丁を手に取った。
「まず、へたと先端を切り落としてから縦半分に切って、切り口を下に向けてまな板に置くの。こうするとグラグラしないでしょ? 向きは真っすぐよりは、少し斜めにして置いたほうが切り口の見た目もきれいかな。そして端から1~2mm程度の薄切りにしていけばいいよ」
手際よく綺麗に切られていくきゅうりを見ていると
センパイって、家ではきっとなんでも自分でやってる人なんだな…と考えてしまう。
だから“マンガとか”までは手が回らないんだ。
よし!私もやらなきゃ!
まな板の上のきゅうりをつかんでズドン!と包丁を振り下ろす。
まずは“へた”を切り落とした。
「おやおや。大変な勢いね」
可愛い柄のパジャマ姿の学園長先生がキッチンに入ってらっしゃる。
髪をおろして、すっぴんのお顔はニコニコと可愛らしい。とてもとても“鬼の学園長先生”とは思えない。
だから
「大人って、すごい!!」
と思ってしまう。
「包丁をね!持ったまま固まっているとこわいわよ」
と学園長先生は私の後ろに立って、私の両手にご自分の手を置かれた。
「左手はそんなにしっかり握らないで、指先できゅうりを捕まえる感じ。右手で包丁を握るときは人差し指は包丁の背に当てるの」
学園長先生は、ご自分の手を私の手に添えて動かしながら、きゅうりを切ってみせた。
「わかるかな?」
私は熱量が高めの人だ。
その私が温かいと感じるのだから、学園長先生は温かい手をお持ちの方なんだ。
センパイは、ひとつまみの乾燥わかめを煮立った鍋に入れながら、こちらを見てニッコリした。
センパイ! 料理って、作っているときから、もう幸せなんですね。
素直で伸びやかな杏ちゃんは実は周りを幸せにしています。(*^^*)
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