第18話 そして、怒りの弾をこめた
わ~い!! なんだかマンガのタイトルみたいだ♪(*^。^*)
嫌だったけど、辛かったけど
色んな人にヨッシーの事を、聞いた。
センパイと交代で影日向くんを着て、男の子にも探りを入れた。
けれど、何も出てこなかった。
部室に搬入した荷物をセンパイと仕分けしながら、私は思わず話し掛けた。
「ヨッシーの件、デマじゃないでしょうか? そのデマで先生に呼び出されてヨッシーは悩んでいたとか…」
「そういう可能性はないとは言えないけれど…それだったら吉井さんの事をわざわざ私たちには言わないと思うの…学園長先生は…」
「吉井って、杏のクラスメートの?」
後ろから天鬼センパイの声がしてセンパイは「しまった!」と手で口を抑えた。
「いや、今更遅いって、でもまあ聞きなよ」と天鬼センパイは続ける。
「その吉井さんがオトコと歩いているの、見たんだよね… ちょっと知ってるヤツでさ、『壱瑳』って言うフリーター。ウチのグループにも色気出してたんだけど、絶対入れなかった!…コイツ、ぱっと見、真面目なイケメンなんだけどさ、実は悪いヤツ。特に女性に…」
私とセンパイは顔を見合わせた。
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女子演劇部の部室に、ヨッシー、センパイ、そして影日向くんを着た私が居る。
3人のセンパイ方は外レンだ。
私が居るのは「影っち!一緒に来て。杏には内緒で」とヨッシーから声を掛けられたからだ。
私としては本当に申し訳なく、複雑な気持ちなのだけど…
しばらくの沈黙の後、センパイが口を開いた。
「影日向くんが同席していてもいいの? あなたにとってあまりいいお話ではなくってよ」
ヨッシーは口を真一文字に結んで影日向くんを見た。
「構いません」
センパイは頷いた。
「どうしてあなたは… 『自分が不純異性交遊をしている』って訴え出たのですか?」
ヨッシーは覚悟していたかのように小さくため息をついた。
「話、聞いていただけますか?影日向くんにも」
影日向くんも頷いた。
ヨッシーは話し始めた。
「私は父のスーパーでバイトしています。これは家の仕事の手伝いという事で学校からも許可をもらっています。 カレは私の働いている店でのパイセンです。音楽関係の専門学校に通っていて学費の為にバイトしてるって聞きました。でもチャライ感じが全然なくて…仕事に対しては真面目だし私達後輩への面倒見も良くって、すっごい意外だなあって
第一印象でした…」
「最初はいいパイセンだなあ…くらいにしか思ってなかったんですけど、ふとした行き違いで私が自分の父の事を鼻にかけて、みんなの事をバカにしてるって誤解されて…。その時、カレは私を慰めてくれたり、一所懸命フォローしてくれたりしたんです。
私、いつもはこんな風にしてるけど、意外と泣き虫なんです。 その時はたまらなくってバックヤードの柱の陰で涙抑えていたんだけど、いつの間にか寄り添ったセンパイが頭を撫でてくれて…初めてキスしました」
「最初、夢中になったのは私のほうでした。その内、『僕がランチでよく行くお店で一緒にディナーしたい』って連れて行ってくれて… 出されたジュースが実はカクテルだったみたいで、急に立てないくらいに酔ってしまったんです」
「カレは『花織は大人っぽいからお酒飲めると思ってた、ゴメンね』と言ってくれたんだけど具合悪くなってしまって、タクシーに乗せられたんです。タクシーの中でお水飲ませてもらったんだけど、更に朦朧として…
気が付いたら、ベッドに寝かせれていて…
初めて抱かれました」
「それから、カレとのデートの最後は毎回だったんだけど… いつも痛いばっかりでカレの言うようではちっとも無かった。なのにカレは『いつまでも痛い痛いって、オレに愛情は無いの?』って… そのうち変態的なこともされるようになってしまったんです…」
ヨッシーは隠していた手首の内側をそっと見せた。
一度ではない赤黒い傷跡がある。
「もう… このままじゃダメだって、分かっているんです。でも、まだカレのこと好きだから…辛くて… だから自分自身を無理にでも引き剥がそうと、学校に自分で電話したんです…」
センパイは両手をぎゅっ!と握って、涙を流している。
でもセンパイ!それは違う! だってヨッシーは泣いていない。
だから私たちは泣いてはいけない!
「ねぇ」とヨッシーは影日向くんを見た。
「影日向くんは、私より年上でオトコの子だよね。聞かせて、オトコってそう思ったり、感じたりするの?」
本当のオトコの子じゃない私には、オトコの生理やホンノーなんて分かる訳はない。ただ!!!…
『そいつはクソだよ』
頭の中の“影日向くん”が優しい声で答えてくれた。
だから私は、その通りを口に出した。
「そいつはクソだ!!」
センパイは流れる涙を拭おうともせずに立ち上がった。
「カレのところへ連れていっていただけますか?」
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センパイはもう10分以上、壱瑳ってヤツと話をしている。
私は少し離れたところにヨッシーを守るように立っていた。
クソ野郎がヨッシーの名前を呼ぶと、ヨッシーはとうとう涙を流してヨロヨロと行こうとする。
髪の毛が逆立って、はらわたが煮えくり返る。
私はまず左手を真っ直ぐ壁に向かって伸ばし、腕の長さを確かめる。
次に肘を曲げて握りこぶしでゆっくり弧を描いてみる。
それから手の甲を確かめてみる。
影日向くん! 影日向くんを着ている時は、膝、大丈夫なんだよね
と影日向くんに確かめる。
『杏ちゃん!何をする気?』
私、すっごく怒っている。だけど影日向くんのおかげで醒めているんだ。
一発だけ、たったの一発だけだよ
僅かの間があって、答えてくれた。
「膝は問題ないよ」
よし!!
私はヨッシーの肩を掴んで引き留めると、代わりに脱兎のごとく飛び出した。
センパイとの間に割り込んでヤツの鼻先に飛び込むと、左足に重心をのせ押し出すように膝と腰を回転させる
ぶっ殺す!!!
思いっきり肝臓ブローを食らわせてやった!!
ヤツはその場に崩れ落ちる。
センパイは叫び、ヨッシーは固まってしまっているようだ。
だから後ろを見ずに答えてやった。
「残念だけど、これくらいじゃ死なない」
私は口から何か汚いものを吹き出しているヤツを睨みつけた。
「これ以上、花織に手を出したら、今度こそぶっ殺す!!!」
それから私は後ろを振り返った。
「行くぞ!!花織!!」
センパイは何か言いたそうだったけど、
私はずんずん歩き出した。
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学園長室
私は影日向くんを着たままで、センパイと一緒に学園長先生の前に立っていた。
「自己申告します! 吉井さんにはストーカーがまとわりついていたので、オレがぶっ飛ばしました!」
学園長先生は鋭い目で“オレ”を見るが、絶対動じない!!
「これについての証拠はありません」
「先日、吉井さんが学園に言ってきた事はどうなります?」
「それだって彼女の自己申告ですし、証拠になる裏付けは取れませんでした」
学園長先生はため息をついた。
「そういうことですか…」
それから少し悲しい目で“オレ”を見たのが、辛かった。
「影日向くんはしばらく謹慎ですね」
“オレ”は学園長先生の顔が見れなくて一礼して踵を返した。
「待ちなさい!! 杏ちゃん」
“私”は背中を向けたままだ。
「暴力は人を傷つけるだけじゃありません。あなた自身もたくさんたくさん傷つけるのです」
あのお母さんの様な優しい声だ。
「でも… こんな風なことが起きたら、あなたは、またやってしまうのかしら…」
何も答えず、前を向いたまま、ただ、ドアを開けて学園長室を出た。
センパイも残したままで…
『影日向くんは引きこもり』では色んな事をやってみたいなあって思っています(*^_^*)
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