第13話 一女さんは女たらし?
というよりも“人たらし”だったのかも…
センパイが落ち着かれた後、ばあや様は不要になった荷物を車に積んで、帰って行った。
センパイは今日、ウチでお泊りなのだ。
出来上がった料理をテーブルに並べる頃には、センパイはすっかり元気になっていた。
「まとまりが無くて…ごめんなさい」
とおっしゃるメニューは
エビ、ズッキーニ、プチトマト、モッツァレラのアヒージョ
スタッフドパプリカ
牡蠣と三つ葉の茶碗蒸し
鴨とクレソン、焼きネギの失●園風ポトフ
あと、今日も出張で家に帰って来れないお父さんの為にと、フリーザーバックに入れて冷凍したビーフシチューも持って来てくれた。
「私の父は、殆ど家に居ないのですが、時差の関係で朝方とか夜遅くとか、不意に帰宅するのです。 そんな時の父のお気に入りのメニューです。 元々はいたずらに作ってみたデミグラスソースの処遇に困って作ったものなのですが、自分で試してみても美味しいので…」と遠慮がちにおっしゃる。
私とお母さんは顔を見合わせ、異口同音に
「お父さんにはもったいない」
「出張先でウニ、カニ、イクラの海鮮丼を食べるから大丈夫!」
と口撃した。
それを聞いてクスクス笑うセンパイをお母さんはうっとりと眺める。
「それにしても…綺麗ね…」
「私、亡くなった母に似ていますか?」
突然、センパイはお母さんに尋ねる。
「えっ?! 」
「“お母様”は私の母と親交があったと先程伺いました。そして一女様でもあられる訳ですから、観察眼はお持ちかと…」
「そうね…似てますよ。姫も料理上手だったし…」
お母さんは一瞬考える。
「うん、細やかな心遣いに溢れているところも…私も姫をお嫁さんにしたかったくらい。美しいし。でも、奏さんの方が更に綺麗かな… そう、奏さんの美しさには凛々さのスパイスがあるの!惚れ惚れするくらいに…きっとそこがお父様似なのかも」とウィンクした。
センパイの瞳の奥に、いつにない表情が見えた気がした、が、
お母さんが力押しでセンパイに抱き着いた。
「もぉ!恋に落ちてしまうヨ」
ギューッと抱き締められて、センパイはテレテレになる。
テレテレになったセンパイの耳元でお母さんは囁く
「私、美しいひと…描くの 好きだな…」
わっ!!わっ!! 凄い! 女たらしだ!!
そばに立っている私の方が赤くなってる。
「私も一女様に 描いてもらいたい…かも…」
「ホント?! 嬉しい!!」
お母さんは更にセンパイをギュー!!とする。
「何かリクエスト、ある?」
「えっと…」
センパイはお母さんに体を預けたまま思案中だ。ホント!この人はイチイチ可愛い。
「杏ちゃんみたいな感じ!」
えっ?! 私??
「それで、ちょっとエロ可愛いのが…いいな」
いやいやいやいや センパイと私とエロ可愛いのって、みんな方向性違うでしょ!!
「あはははは」とお母さんは抱きしめたセンパイをゆらゆら揺らしながら笑った。
「難しくも素敵なリクエスト!ありがとう!! 燃えるし!萌えるね! これは!! 久しぶりに!」
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「私って、お友達のお部屋には殆どお邪魔したことがないの。だから何をどう言う事はないのだけど…」
私の部屋に入っていただいたセンパイの第一声だ。
「私の部屋。ガランとしてます?」
「ひょっとして前はサッカーの物がたくさんあった?」
「ハイ」
自分でも驚くほど自然に答えられた。
センパイは、以前ネイマール選手のポスターが貼ってあった壁の前に、人形のように足を投げ出してチョコンと座った。
「私も置けるね」
あぁ、ホントに、この方は萌えの塊だ!!
「ずーっと置いておきたいです」
その言葉にセンパイは人形を模してカクン!と頭を下げた
サラサラの髪が投げ出された太もも(細もも?)辺りに掛かる。
イチイチ可愛いんですけど!
「そう言えば」
とセンパイはスクッ!と頭を上げた。
「見た?お母様の?」
「ええ、女の子を口説くやり方をしっかりと!」
センパイはコロコロと笑った。
「そうじゃなくて… “オーラ”!」
「やっぱり! “オーラ”ですよね! 私も見たんです!お母さんから。 と、いう事は…お母さんも影日向くんを着れる?」
「着れるでしょうね。学園長先生だって着れるのだから」
私は想像してみた… これはダメだ!!
「あの、お母さんには」と口の前に指を立てた「内緒で」
「話はしないけど…なぜ?」
「お母さんの事だから『着てみたい』って言うに決まってる」
センパイは吹き出した後、お腹を抱えて盛大にコロコロと笑った。
しばらく笑い続けたセンパイは、ようやく落ち着いて目の端に溜まった涙を拭った。
「ごめんなさいね。確かに…」と言い掛けて、また笑いをぶり返させた。
「影日向くんが…口説き回ったら…大変ですもの…ね…」
二人して笑いが止められず、抱き合って蹲ってしまった。
「でも、お母様はとっても素敵な方ね」
「はい! ありがとうございます。 でも、センパイのばあや様も優しくて、カッコ良くて、憧れます。」
今度はセンパイが私をギューッとしてくれた。
「ありがとう、杏ちゃん。ばあやは私の大切な人… 私に厳して、甘々なの。いつもいつも本当のお母さんだったら…と思っているの」
「素敵ですね」
「お互いにね」
ドアの外で声がした。
「杏ちゃ~ん!奏さんにお風呂に入ってもらってね。 そのあと、アナタ入りなさい」
私はドア越しに話し掛ける。
「お母さんは?」
「入らない!今、ノリノリだもん!」
私達は抱き合ったまま「あはははは」と笑った。
取り敢えず“見えた”話まで辿り着けました(^^;)
有り難くもキャラクターの皆さんが良く動いてくれますので…
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