第10話 なんだか 妬けちゃう
今回の主役はヨッシーです。
吉井花織がふと、お弁当の箸を止めて手を挙げた。
「パイセン~!」
見ると奏センパイが様子を見に来てくれている。
「パイセンには“こっそり立ってる”ことなんて無理なんスよ。目立つんだから」
ヨッシーの言葉にも物ともせずにセンパイは涼やかな笑顔で歩み寄って来る。
「吉井さん こんにちは。影日向くん!ご機嫌はいかが?」
「パイセン~!男女差別的な発言、止めてくださ~い」
「あら、そうかしら?」
「それとも、影っちは特別なんスか?」
センパイは答えずに首を傾げて微笑んだ。
なので影日向にお鉢が回ってきた。
「影っちは止めた方がイイすよ。変態だから」
変態って!
「影っちったら、さっき、間違えたフリして杏の席に座ったんスよ。学校来てる時は、ずーっと杏の方ばっか見てたくせに」
センパイはすまして言葉を返す。
「それじゃ、間違えないわよね。今も座ってるし」
「でしょ? コイツ、杏フェチなんですよ。だから…」
「だから?」
「こいつの事は好きにならないほうがイイっす」
センパイは鈴のように笑われた。
だが、ヨッシーはセンパイから視線を外さない。
「吉井さん。実は、今日はあなたにお願いがあって来たの」
「なんでしょう?」
ヨッシーはまだセンパイから目を離さない。
「杏ちゃんは昨日今日と授業をお休みしてるでしょ? 後でノートを見せてあげて欲しいの」
センパイ!お上手!
ヨッシーは頬杖を突く。
「じゃあ、杏狙いなんだ…」
また矛先がぁ…
「杏ちゃんの事は、好きよ」
ヨッシーは手のひらから頬を離した。
「同性だから、不純異性交遊にはなりませんよね?」
センパイはまた鈴のように笑われる。
「可愛い後輩として、好きよ」
「なんだかなぁ…」
とヨッシーはまた頬杖を突く。
「影っちと杏の両方とも好きで独り占めしたいってのは、ナシですよ」
「そんな事、考えないわよ」
「考えなくても、思ってしまうことは、あったりするものじゃないですか?」
「そうなの?」とセンパイは穏やかに微笑まれる。
「ここに居ないから言うけど…私なんかは杏みたいに清々と生きてないからさぁ。やっぱり杏に憧れるし…、たぶん影っちも同じ感じだったりすると思うんだ」
いやいやいや、清々となんてしてないし…
何とも居心地が悪い…
「杏ちゃんが好き?」
珍しく直球なセンパイの言葉にヨッシーは真っ直ぐ打ち返した。
「えぇ!とても」
影日向な私は顔が赤くならないかとひやひやものだ!
なのにヨッシーは、今度は真っ直ぐ影日向に目を向ける。
「杏にはいい恋愛をしてもらいたいの!分かるでしょ?」
影日向は気圧されて頷いてしまう。
「不純異性交遊は、ダメよ」
とのセンパイの言葉にヨッシーは軽くため息をついて小声になった。
「その点については、私は“見る目”がないんだよね」
「杏を傷つけるような事をしたら、ぶっ飛ばすかんね!!」
それから、ヨッシーはセンパイの方に向き直った。
「パイセンもですよ!」
ヨッシーの勢いにセンパイもちょっと戸惑ってらっしゃる。
「私も?」
ヨッシーはまた、ため息混じりだ。
「えぇ!えぇ!ホントに!…なんだか 妬けちゃうよ」
本当はかなりオトナで繊細なヨッシーはよく人を見る子でもあります。
こんな親友がいたら素敵です。(*^_^*)
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