第95話 スシネバーダイズ前編⑧
前回のあらすじ:
危険操作撮影ドローンが鳥路さんによって撃墜された。
◆◆◆
突然のドローン攻撃には驚いたけど、アオヤギの火入れも終わり握りのフェイズに移っていく。帯刀の方が握り始めが早いのが少し気になるけど……鳥路さんに焦りは無さそうだし大丈夫だろう。
タコの時と同様にモニターに映った名前と学年の審査員がポジションにつく。その頃には両者の用意された全ての皿の上にアオヤギの寿司が乗っていた。
係員の手で審査員の元に寿司が運ばれていく! ここで勝てれば戦況的にかなり有利だ!
「では! 白いお皿! 鳥路さんのアオヤギからお願いします!」
審査員が鳥路さんの寿司を食べ始める!
「うーん! 美味しい! タコとは違って少し磯の香りってやつ? が良いね!」
「さっぱりしてて食べやすい!」
「このベーシックな貝って感じ! 江戸前の顔見たいなもんだよなぁ。北海道産だけど」
悪いコメントは聞こえないし、一般審査員には好評な感じと見て良いだろう。
「食べやすくて美味しいです。ほのかなアオヤギの香りが上品ですね」
「貝類苦手なんですけど、美味しいです」
生徒会長と図書委員の子にも好評。大丈夫そうだ!
「うーん……もっと香りが強いもんじゃないか? これはこれで美味いけどよ!」
漫研の人はもっと香りが強い方が好みのようだ。確かにアオヤギって独特の香りというか味というか……そういうのが美味しいネタではあると思う。
「まぁ、ええ、食べやすくて良いと思いますよ? 寿司は癖が無くて食べやすい方が好きですね」
ロボ研は……いいや。雑なコメントだな。
「……むぅ」
根木さんが無言になる。な、なんだ!? 何か他の人が気付いていない欠陥があるのか!?
「コメントは帯刀のを食べてからにしよう。放送部進めてくれ」
怖い! 根木さんが何も言わないのが一番怖いんだけど!?
と、鳥路さんは大丈夫か!? いつものように余った食材つまみ食いしてるようだけど……
鳥路さんの顔が曇る……! と、鳥路さん!? 何があったんだ!?
「では続いて帯刀さんのアオヤギです! 審査員の皆様、よろしくお願いします!」
疑問が解消されないまま帯刀の番になってしまった!
「うお!? すげぇ香り! 臭いとかじゃなくてアオヤギの香りが強い!」
「本当に同じ食材なの!? 全然違うんだけど!」
「鳥路さんのも食べやすくはあったけど、こっちは正解な味がする!」
た、帯刀の方が香りが強い!? 同じ食材なのになんで!? 下処理にそこまで差が出るものなのか!? 一般審査員でこれなら……特別審査員は!
「上品さの中に力強い磯の香り……! 美味しいです!」
「こっちも好きだけど……うーん……貝っぽいなぁ」
図書委員の反応は悪いけど……生徒会長は帯刀の方が高評価の反応だ!
「これこれ! これがアオヤギって感じ! このクセつよが貝だよなぁ!」
漫研の人も帯刀派! 帯刀のアオヤギは強い風味を残している状態のようだ!
好みの差はあるかもしれないけど……アオヤギと聞いて食べたいのはどちらかという問題!
「いやぁ! 食べやすいだけなんて論外! 論外ですよ! 風味と香りを味わえてこそ寿司! 本物の仕事! テクノロジーの力の差ですね!」
お前さっき癖が無い方が好きって言ってたよな!?
「やはり……帯刀、鳥路のアオヤギとの違いは答えられるか?」
根木さんが帯刀に質問をする。勝負の中で相手を見る余裕なんてあるのだろうか……
「味の感想を聞くに、鳥路さんは下処理を丁寧にやりすぎたようだ。水が多かったか、お酒を入れていたような気もしていたし……火入れの時間がほんのわずかに長かったのかもね。いずれにせよ、北海道産のバカガイは身が大ぶりで風味が他の産地に比べてほんの少し弱い。下処理は酒を入れずにもっと少ない水と塩で火入れすべきだったね」
他人の味の感想だけでそこまで……! 天才を自称するだけある!
鳥路さんの表情は大きく変わっていないけど、俺にはわかる……!
相手の言う通りで反論できないもどかしい鳥路さんの感情を!
ドローンの襲撃のせいで失敗した?
……いや、鳥路さんはもしかしてアオヤギの経験値が少なかったのでは?
司先生に下処理を確認をしていたし……食材に合わせて下処理の方法を変えるほどの技術がなかった……? 悔しいけど帯刀の方がアオヤギの技術は上だ!
「それでは審査員の皆様! 美味しかった方のお皿を掲げてください!」
今度はパッと見て赤が多い! だ、ダメか!
「ダララララ……ダン! 一般審査員が白8、赤17! 特別審査員が白2、赤3! よってぇ……鳥路さん36pt! 帯刀さん64pt! 二本目のアオヤギ対決は帯刀さんの勝利だぁ! 早くも同点! 両者譲らない!」
ギャラリーがタコの時以上に盛り上がりを見せる! スシバトル部の方がホームサイドなのはあまり変わっていないのか……!?
「同じ食材に同じ部位ならスシバトル部が上か!?」
「正面からぶつかればスシバトル部有利!」
「も、もしかしてアオヤギも食べれるのか!?」
ギャラリーの声を聞いたかどうかわからないが笹垣のが指を鳴らし合図を出す。すると再びスシバトル部員が現れ、アオヤギの寿司をギャラリーに配り始める!
「うおおおお! 勝者の味!」
「アオヤギってあんま気にしてなかったけど美味いんだなぁ!」
「スシバトル最高!」
さっきと違って勝った側の寿司が振る舞われている。ギャラリーのテンションが高くなるのも当然か……! しかも今回は同じ食材に同じ部位の寿司……! 敗者に付け入る隙がない! き、きついなこの流れ! 思ったよりスシバトル部の行動がじわじわと俺達を苦しめているのを感じる!
と、鳥路さんは大丈夫か!?
「……ん!」
鳥路さんが自分の手で両頬を叩き、凛々しく顔を上げる。気持ちを切り替えて次の勝負に集中するんだね……!
「鳥路さん! 切り替えて行こう! まだ同点! こっからだよ!」
「とりっじ! 大丈夫! 落ち着いて行こうね!」
俺と賀集さんの声援に鳥路さんが頷く! 大丈夫そうだ!
「さぁさぁ! ここからは各自が調達した食材で寿司が握られていきますよ! 仕入れの力も試されちゃう感じでしょうか!? 映えある三本目の寿司ネタは……アジだぁ! 光り物!」
盛り上がっていくギャラリー!
ステージのモニターになぜか虹色に光るアジの文字が大きく表示される。
……そういう光るじゃないと思う。
そういえば今日のアジは鳥路さんがスシバトル部四天王に勝って良い品質の奴を手に入れたって言ってたっけ。そうなるとスシバトル部が仕入れられたアジの品質は寿司同好会のよりも低かったりするんじゃなかろうか? だとすると……案外あっさり勝てるのでは? 光り物って鮮度とか品質がダイレクトに味に影響出そうだし。笹垣の焦ってる顔が拝めるかも……
しかし、俺の目に映ったのは、邪悪な笑みを浮かべる笹垣だった。
な、なぜ笑っている? お前達は奪われた側じゃないのか!?
それとも既に俺達はスシバトル部の罠にかかっているとでも言うのか!?
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




