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第92話 スシネバーダイズ前編⑤

前回のあらすじ:

後攻を帯刀に取られた鳥路さんがまさかの勝利宣言。

タコのスシバトルが始まる!


◆◆◆


「さぁ一戦目はタコ! 今回は北海道産のミズダコを使ってもらいます! 大きいですねぇ! 審査委員長の根木さん! ズバリ勝負の鍵は何でしょう!」


 ステージ上で会場を盛り上げる放送部のMCが審査員席に座る根木さんにマイクを向ける。


「……一品目のタコと二品目のアオヤギは共通食材。下処理の技術が問われるだろう。今回のミズタコは別に生でも行けるようだが……二人とも茹でて使うようだな」


 根木さんが言うように、鳥路さんと帯刀の調理スペースではお湯が沸かされており茹でる準備はできているようだ。現在二人とも塩でタコのぬめりを取っている最中だ。そして、下処理が終わるとほぼ同時に二人は熱湯の中にタコを入れた。

 どこで差が出るのかギャラリーに見守られる中、またしてもほぼ同時に二人はタコを熱湯から引き上げる。そのままタコは氷水で冷やされ、二人はタコを切り分ける準備を始める。


「さぁここまで下処理に差は無さそうです! そうなると勝負を決めるのは握りの技術かぁ!? 今回のスシバトル! 一般審査員25名、特別審査員5名、合計三十貫を一品目毎に握ることになります! 安定した握りの技術が試されますよぉ!」


 その辺について鳥路さんに不安はない。以前根木さんに指摘されて手の温度については、氷水で冷やしながら握る事にして対策済みだ。最初の勝負は接戦になるかもしれない……

 帯刀の方を見ると、タコの足というか腕をネタに切り分け始めている。包丁も板前が使ってる高そうな奴だ。向こうも調理器具に抜かりは無いといったところか。 


「……お? おおっと!? ここで鳥路さん! タコの足を……クーラーボックスに全部戻してしまったぞ!?」


 MCの実況で騒つく会場! タコの寿司なのに足を使わない!?


「や、山ちゃんタコのお寿司って足を使うんだよね!?」


「俺も詳しく無いけど、イメージはそっちだなぁ!? 帯刀も足使ってるし!」


 賀集さんと俺も困惑する。タコの食うところって足だよなぁ。スーパーにも足だけ売ってるし……


「と、鳥路さん! なんと! 頭! タコの頭です! タコの頭を良い感じのサイズに切り分けています!」


 MCが言う通り鳥路さんはタコの頭を捌いている! 

 く、食えるんだろうけどさ! 何で頭!? いや胴体!? 

 鳥路さんの表情を覗いても迷いは一切ない。初めから頭をつもりだったのか!?

 

「根木さん!? どうなんですか! なんかグロいんですけど!」


 MCが根木さんの頬にマイクを押し付ける。若干苛立つ根木さん!


「グロさなら足と大差ないだろ! ええっと、これはあれだな。鳥路が北海道出身なのが関係してそうだな」


「と、言いますと?」


「こっちじゃあんまり食わないが……北海道だと普通に食うんだよでかいサイズのタコの頭。」


 根木さんは寿司屋の娘だけあって寿司に詳しい! 頼もしい!

 

「しかも今回のミズダコは北海道産。鳥路が知っているミズダコにも近いだろうよ。寿司になっても変なものは出てこないはずだ」


 根木さんのコメントで盛り上がるギャラリー!


「タコ食いてぇ!」


「帯刀さんのと一緒に食べたらタコ尽くしみたいじゃない? 審査員に選ばれないかしら!」


「そういえば一般審査員っていつ決めるんだ?」


 確かに。一般審査員が誰なのかまだわかっていないな……

 そんなことを思っていたら二人が握りの体勢に入っていた。


「両者握りに入ります!」


 部位が異なるため純粋な握り勝負では無くなったが、MCの誘導で二人の握りの様子に注目が集まる。


「おおおお! 両者すごい! 本物の寿司職人顔負け! いや、寿司職人以上の握りの手際! まさに達人! どちらの寿司の形状も完璧な形に見えます! 速さは僅かに帯刀さん優勢! ですが今回はスピード勝負ではありません! 美味さこそ正義!」


 声援やら叫び声が入り混じるギャラリーの声! やはり二人の寿司の技術は高い!

 帯刀が小手返しとかいうやつで、鳥路さんが本手返し。スピードの差はそのせいだろう。


「さぁお待ちかね! 審査員の発表です! ステージの画面にご注目!」


 MCの声に合わせて今度は大型モニターにいくつもの名前と学年が映る。


「モニターに映った人が今回のタコの審査員です! 対象者は観客席前のスペースでお待ちください!」


 なんかスペースあると思ったらそのためか……ゾロゾロとそこに審査員が集まってくる。学年も性別もバラバラな感じに見える。ほぼランダムっぽいな。


 そうこうしている内に鳥路さんと帯刀が三十貫の寿司を握り終えていた。なんだかんだほぼ互角。

 係員……多分放送部の人だな。その人達が皿に乗せられた寿司を審査員の元に運んでいく。鳥路さんが白いお皿で帯刀が赤いお皿。体育祭の時と同じ色分けだな。


「審査員の方々に寿司は届きましたかね? ではまずは白いお皿! 鳥路さんのお寿司から実食タイムです!」


 MCに言われ鳥路さんの寿司を食べ始める審査員の人達。

 鳥路さんのタコの頭の寿司! 正直俺も食べてみないと味の想像ができない!

 果たして審査員はどんな反応をするのか……! 緊張が走る!

感想・評価をいただけると、執筆の励みになります。


◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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