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第82話 アタックオブザスシバトルクラブ!①

スシバトル部vs寿司同好会のスシバトル


対戦カード:帯刀冴(スシバトル部所属)、鳥路英莉(寿司同好会所属)


ルール:ファイブウェイ(タコ、アオヤギ、アジ、マグロ、自由枠での五貫勝負)

 共通食材:

  タコ:ミズダコ(北海道産)

  アオヤギ:バカガイ(北海道産)

 各陣営調達食材:

  アジ、マグロ、自由枠


審査形式:桶ヶ丘高校の学生から25人(一人2pt)、特別審査員5名(一人10pt)

 特別審査員枠は根木登緒子代表して他四名を選定する。


 月曜日と火曜日の二日間という短い時間で色々な協議を重ねスシバトルのルールが無事に決まった。先程、金星さんから笹垣にルールの通達が行われ無事承諾されたため、あとは食材を準備していくだけだ。


「司先生、食材は多分旬だからこうなったと思うんですけど……気を付ける所とかあります?」 


「私も聞きたいです!」


 食材のラインナップは主に鳥路さんと金星さん、そして司先生で決めていったので俺と賀集さんは選定理由を把握しきれていない。特にアオヤギは貝なのはわかったけど、実際にそれがどんな貝なのか俺は把握していない。


「タコとアオヤギは仕込みの技術、アジは鮮度、マグロは仕入れの力、自由枠は……テーマ性かしらね」


「て、テーマ性?」


 寿司にテーマとかあるのか?


「このスシバトルでその寿司が何を表しているのか……鳥路さんが得意なレスバが案外試されるのかもね」


「な、なるほど?」

 

 司先生の補足に賀集さんは納得したかのような返事をしたが、その表情は俺同様に理解しているようには思えない。レスバで寿司が美味くなるなら苦労しないと思うんですけど……


「マグロについてはお任せくださいまし! この金星瑠璃子、最高のマグロを確保してみせますわ!」


「任せた」


 鳥路さんが金星さんに両手でサムズアップをし、マグロの件を一任する。

 市場で競りとかに勝たなきゃいけないっぽいし、ここは金星さんの財力を信じる以外無いだろう。向こうにも笹垣がいるし決して不平等な話ではない。

 金星さんが両手を叩くとメイドさんが突然現れノートPCを金星さんの前にセットする。セッティングが終わると金星さんは手慣れた感じでPCを操作し始めた。

 メイドさん、確かほたるさんって名前だっけ。鳥路さん以上に表情が読めないけどどういう経緯で金星さんに仕えているんだろう……今は関係ないか。


「司先生、アオヤギの下処理の確認がしたいです」


「明日練習しましょうか、それまでに準備しておくわ。タコも一応確認しておきましょう。座学ぐらいは今からおさらいする?」


「お願いします」


 詳しい寿司事情は鳥路さんと司先生に任せておくべきだろう。

 アジは当日朝に仕入れる形になるけど、事前に確保しておかなきゃだろうしこれも金星さんメインかな。自由枠はもう決まってるけど……こっちは鳥路さんが準備するって言ってたし。本当にアレで行くのかな……


「山ちゃん、私達はどうしよう?」


 そうなると俺と賀集さんに何ができるかって話だが……


「賀集さんには当日空気がアウェイにならないように、鳥路さんを応援してくれそうな友達に声を掛けてくれると嬉しいかな。あとは寿司警察が誤解な件も少し内容に含めてくれると……」


「わかった! 任せて!」


 スマホを取り出し高速タップを繰り出す賀集さん。交友関係が広い賀集さんならこの問題もきっと解決してくれるだろう。

 さて残るは俺だけど……スシバトルでは特にやることが無いのは事実である。アジの仕込みは付き添いで行く予定だけども。とはいえ暇を持て余すつもりは一切無い。この一連のスシバトルの火について事実確認をしていこうと考えている。そろそろ来てくれるはず……タイミングよく家庭科室の扉がノックされた。 


「こんにちは。山本くんに呼ばれて来たのだけれど……」


「松風先輩! お待ちしてました!」


 俺は扉の前に立つに松風先輩の元へと駆け寄る。


「すみません。受験勉強とかでお忙しいのに」


「気にしないで。こう見えて結構優秀なんだから!」


 実際学業も優秀なんだろうなぁ、松風先輩。


「……帯刀さんとスシバトルするのね」


「はい。これ以上被害を広げたくありませんから」


「そうね……」


 少し複雑そうな表情を見せる松風先輩。スシバトル部を辞めた身とは言え、帯刀と楽しい時間を過ごした思い出もあったのかもしれない。


「あ! それで、用件なんですけど……ちょっと前に松風先輩のお父さんと帯刀さんが寿司で一悶着あったみたいなんです。松風先輩は何か知ってたりしますか?」


 今帯刀を中心に起きているスシバトルの火種……知っておきたい。


「父が帯刀さんに、今のままじゃ寿司職人になれないって言った件かしら?」


「そ、それです! 松風先輩のお父さんがなぜそんな事を言ったのかわかりますか? 俺、帯刀さんの寿司の技術は当時も高いものだったと思うんですよ。でも否定されたということは何か問題があったんじゃないかって!」

 

 鳥路さんには強みをぶつけてもらうが、俺は俺で帯刀の弱点をつけるように準備をしておこうという狙いだ。一つはうっすらと浮かんでいて既にルールに盛り込んでいる。


「私から見ても帯刀さんは当時から高い水準で寿司を握っていたと思うわ。ただ、その頃って私と父が喧嘩をしていたから……父がどうしてそんな事を言ったのかは聞けていないのよね」


 松風先輩、スシバトル部に入ったのはスシバトルでお父さんを倒そうとしてたからなんだよな……


「確認していただくことって可能ですか?」


「ええ、可能よ。父に聞いておくわ」


「ありがとうございます!」


 これでこの件の謎は解決しそうだ。あと、松風先輩に聞いておいた方が良い事ってあるかな……

 突如、松風先輩の後ろの家庭科室のドアが勢い良く開かれ、俺も松風先輩もビクッと反応してしまう。


「な、何で松風先輩が寿司同好会に!? いや、そんなことより! 鳥路英莉! いるんだろ!? 私とスシバトルしろ!」


 いきなりのスシバトル宣言! というか誰だこの女子!? もしかしてスシバトル部か!?


「いや、あの、スシバトルは帯刀さん鳥路さんで金曜日に行うから今日じゃないんだけど……」


 やんわりとお帰りいただこう。


「うるせぇ! そんなことは知っている! スシバトル期間中に別のスシバトルをしちゃいけないなんてルールに記載されてないんだから問題ないんだよ! 鳥路英莉! 私とスシバトルしろ!? 怖いのか!?」


 な、なんだって!? そんなこと許されるのかよ!?


「当日までに私を消耗させる作戦か……帯刀に言われてやっているのか?」


 鳥路さんがいつの間にか俺の横に立っていた! 速いよ!


「何のことやら……スシバトル部の絆が私を行動させただけだ!」

 

 あるのかあの部活に絆という概念が……軍事施設の兵士みたいな感じだったぞ。軍事施設も兵士も見たことないけどさ。


「で? 勝負の内容は?」


 完全スシバトルモードの鳥路さんがルールの確認を行う!


「掛かったな!? 私が得意とするエビで勝負だ! 食材はここにあるぞ! 今この場でお前を叩きのめしてやる!」


 もう一人のスシバトル部員はクーラーボックスを抱えていた。やる気満々だな……


「わかった。審査員は松風先輩で良い?」


「えっ!?」


 鳥路さんが松風先輩を巻き込んだ。松風先輩も流石に驚く。


「元スシバトル部の審査員だと!? いや、これはスシバトル部の私が有利! スシバトル部の絆は永遠だ! 良いだろう! それで行こう!」


 この人何でも全部口で言っちゃうな……ここまでアレだと鉄砲玉として派遣されたのか、単独での暴走なのか判断できないな。


「……き、絆?」


 松風先輩が絆を疑問視している事はスシバトル部員の耳に届いていないようだ。


「このスシバトル部四天王が一人! エビの海老原えびはらが寿司警察を摘発してやる! 覚悟しろ! 鳥路英莉!」


 突発的なスシバトルが始まってしまった……!

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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