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第63話 スポーツデイアンドスシバトル②

前回のあらすじ:

スシバトル部が寿司屋を潰していた。


◆◆◆


 なぜ司先生がスシバトル部を潰そうとしていたのか、なぜ鳥路さんが自分をスシバトラーではないと否定するのか……その理由は明白だった。


「店の名前は?」


 鳥路さんの声色は怒りに染まっている。

 

「……慶寿司いわいずしですわ」


 知らない寿司屋。そして永遠に味を知ることのできない寿司屋だ。


「店主がご年配ではあったけど……不味さで潰れるような店ではなかったはずよ」


 司先生が店について教えてくれた。それが本当ならばスシバトル部はとんでもないことをしている。そもそも不味いからと言って店を潰して良いわけじゃない。


「そうなるとわかっていたのか? お前はそのためにスシバトルを流行はやらせたのか? 自分が何をやったのか!」


「とりっじ!」


 賀集さんが鳥路さんの言葉を遮る。


「そんなわけないでしょ!」


 金星さんが鳥路さんの言葉を強く否定した。声を荒げる金星さんを見るのはこれが初めてかもしれない。


「……スシバトルはエンタメ、人を楽しませるためのもの、寿司の新しい可能性、私はそう思っていた。でもそうじゃなかった!」


 金星さんは……スシバトルをエンタメとして捉えていた。それほどに帯刀さんの寿司は凄かったのだろう。実際に俺が見た時も鳥路さんに匹敵、いや、鳥路さん以上の技術を持っていると感じた。


「金星さんはどうしてスシバトル部を辞めなかったの? それにどうして今もスシバトルを支援するような真似を?」


 司先生の疑問は俺も感じていた。スシバトルのギャップを感じた段階でスシバトルを捨てるべきだし、被害を広げないように動くべきだと思う。


「一度始まったスシバトルは止める事はできない……帯刀さんの目的は国内の寿司屋を全て潰すこと。今起きてるスシバトルは序章に過ぎませんわ」


 本気で言ってるのか? 全国の寿司屋を潰すって何のために? 何を考えているんだ、帯刀冴……


「私は……スシバトル部の暴走が怖かった。だからそれを秘密裏に抑止するようにスシバトル部に残りました。寿司同好会に味方したのもそれが理由ですわ」


 寿司同好会に有利な判定は意図的だったんだな。筋は通ってたから違和感はなかったけど……


「しかし、それにも限界がありました。スシバトルの火は琴音さんすら飲み込んだ。本来なら四月の終わりにスシバトル部は松風鮨でスシバトルをする予定でした」


 松風先輩がスシバトル部に入っていた理由は松風鮨の内部崩壊を阻止するため。でも帯刀の目的を考えるとそれは松風鮨を潰すためのスシバトルだったということになる。


「……そんな時に北海道から一人の転校生が来ましたわ。その転校生は早めにこちらに引っ越してきて始業式の前日まで毎日寿司屋巡りをしていたそうですわ」


 鳥路さんだ!


「スシバトル部が活動していない春休み中に報告されるスシバトル。何が起きているのかと混乱しましたわ。でも、蓋を開ければ潰れた店はゼロ。逆に寿司の質が上がったという報告まで入ってきましたわ」


「確かに鳥路さんはスシバトルで勝っても潰すとかそんな事言わないよね」


 思えば鳥路さんは寿司を食わせろとかもっと腕を磨けとかその手の要求しかしていない。スシドライバーはまぁ仕方ない、食べ物で遊ぶもんじゃない。

 とにかく、鳥路さんは春休み中に不味い寿司屋でスシバトルしまくってたけど目的は潰すためじゃないはずだ。


「寿司が食べられなくなる方が問題」


 自分であれだけ握れるのに……でも鳥路さんらしい答えだ。


「私の望んだスシバトルをする人がいる。しかも調べれば同じ高校に転校する生徒。私は……鳥路さんを利用しようと考えましたわ」


 金星さんは鳥路さんが転校する前から存在を知っていたってことか。どうやって金星さんが知ったかについては……知らない方がい良いだろう。しれっと個人情報を調べたりできるの怖すぎる。


「私はまずスシバトル部員ではない根木さんにお願いをして鳥路さんにスシバトルを挑んで貰いました。まぁ、あそこまで悪役っぽく振るまえとは言っていなかったのですが……」


「あ! そうなの!? 根木さんと栄寿司の話を聞くたびに最初のアレが違和感あったんだよね! なるほどね!」


 しばらく謎だったことがわかってスッキリした。


「食材に差をつける真似をしたのは金星さんの入れ知恵?」


 少し怒りが引いた鳥路さんが金星さんにスシバトルの洗礼について尋ねる。


「そこまでしろとも言ってなかったはずですわね……」 


 また根木さんの事がよくわからなくなってしまった。


「とにかく、鳥路さんはスシバトルに勝利し、確かな実力があることもわかりましたわ。だから、スシバトル部に勧誘するという建前で琴音さんを差し向ける予定でしたの、もちろん琴音さんを止めるために。結果、鳥路さんは琴音さんを止めてお店も救いました」


 なるほど……副部長をいきなり繰り出したのはそういった意図も……ん?


「あの……サブリナさんって……金星さんが、その、用意した人じゃないの?」


 賀集さんがスルーされた人の事を聞いてくれた。


「あの人は全くの想定外ですわ。根木さんも災難でしたわね……」


 意図せずスシバトラーが集まる確率ってどれだけなんだろう。今のところ結構高いんだけど? 海外のスシバトル人気はどうなってるんだろう……


「話が逸れましたわね。私がスシバトルを継続させる理由は一つ……スシバトルを正しい方向に戻すためですわ。放置してもスシバトルは決して健全にはならない」


 スシバトルを正しい方向に?


「帯刀さんが闇のスシバトラーなら、鳥路さんは光。私は光のスシバトルが闇を祓うと考えています」


「それって……」


「鳥路さんに帯刀さんの野望を止めてもらいたい。そのためなら……私は何でもしますわ」


 金星さんが立ち上がり、鳥路さんの目を真っ直ぐ見る。

 金星さんの手は……小さく震えていた。

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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