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第44話 アルティメットブレイジングコンプリートニュートリショナルフードスシドライバー①

 松風先輩と鳥路さんのスシバトル二連戦は一勝一敗の引き分けで終わった。

 月曜日の学校で松風先輩がスシバトル部を辞めたことが俺のクラスにも情報としてすぐに流れてきた。何が起きたのかと色々噂になっていたけど、俺達寿司同好会は松風先輩の決断の理由を知っている。

 その日から数日間、鳥路さんにスシバトルを挑む生徒は一人も来なかった。副部長を撃破した鳥路さんに無策で挑むのは無謀だとスシバトル部は判断しているのかも知れない。


 スシバトルの無い寿司同好会では美味しい寿司屋マップ作りやスッシー談義で大いに盛り上がった。鳥路さんといつの間にかスッシーにハマっていた賀集さんからスッシーの布教を毎日のように受けていたけど、俺にはスッシーはそこまで刺さらなかった。ちなみに鳥路さんと賀集さんは明日から始まるゴールデンウィークのどこかで松風先輩とスッシーコラボカフェに行く約束をしているとのこと。


 ……俺はこの一か月でスシバトルの色々な側面を見てきた。俺が知る限り鳥路さんの関わったスシバトルはなんだかんだコトが丸く収まっている。その一方で司先生がスシバトルを止めようとする気持ちも理解できた。俺はスシバトルとどう向き合うべきなのだろうか。

 まぁ、明日からの連休でそんな難しい話は忘れてしまいそうだ。スシバトルについて考えるのは連休が明けてからで良いだろう。



 そう考えていたのが良くなかった。



「鳥路英莉! この私とスシバトルで勝負しろ!」


 放課後の家庭科室にホビー漫画に出てきそうなノリの女子が……スシバトルチャレンジャーがエントリーしてきてしまった。



◇◇◇



「究極爆走完全栄養食《きゅうきょくばくそうかんぜんえいようしょく》スシドライバー! 握った寿司をレーンで走らせて相手の寿司を破壊する! 三貫デッキを用意して二本先取! 簡単だろう!?」


 印刷されたスライド資料でルールを説明するホビー漫画系女子。女子の制服を着ているし体系的にも女子で間違いないのだけど、口調や精神性が小学とか中学男子のそれ。身長の低さも相まってそう見えるのか、彼女がまだ一年生だからなのか……

 説明を聞いている鳥路さんと賀集さんは常時はてなマークを頭の上に浮かべている。その裏では金星さんとお付きのメイドさんが家庭科室にスシドライバーで使うと思われるレーンの準備を進めている。空想のホビーじゃ無いのかよこれ。


「さぁ! 鳥路英莉! スシバトル部一年! とどろき叶夢かのんが相手だ! 正々堂々勝負しろ!」


「……え? 何これ? え?」


 鳥路さんの思考が追いついてない。俺と賀集さんもだけど。


「スシドライバー! この夏! いや! 今年のゴールデンウィークに流行予定のホビーだ!」


「それはわかった……」


 もう既に顔から疲れが見える鳥路さん。

 俺は無言で何やってんだという表情で金星さんに訴えかける。

 金星さんからサムズアップが返ってきた。コミュニケーションって難しい。


「君が松風先輩に何を吹き込んだかは知らないが……その正体! スシドライバーが明らかにしてくれるだろう!」


 スシドライバーに信頼を寄せすぎじゃないか?


「……とりっじ、断っても良いんじゃない? これスシバトルじゃないと思うんだけど……」


 賀集さんなんて事を。いや、俺もそう思うけど。


「別に断っても良いが、君がその程度のスシドライバーだと根も葉もない噂を添えて学校中に言いふらすぞ!」


 熱血キャラなのにやることが悪辣だなぁ。あと勝手に鳥路さんを勝手にスシドライバーにするんじゃない。


「はぁ……寿司は何を握ってもいいの?」


 溜め息をつきながら立ち上がる鳥路さん。


「マシンに載せることができてレーンの幅に収まる寿司なら何でも大丈夫だ!」


 マシンと呼ばれるモノはモーターと電池にフレームだけのシンプルな構造の車に寿司を載せる皿がくっついただけのもの。レーンは一周してから交差する場所でマシンがぶつかり合うような構造になっており、幅はお皿の大きさより少し余裕がある。寿司載せる意味あるのかこれ。


「ただし! 載せる寿司は異なる三種類であること! 更にそれぞれにかっこいい設定を考えなければいけないぞ!」


「……なんで?」


「その方がかっこいいからだ!」


 鳥路さんが天を仰ぐ。この子とまともな会話をする事を諦めたとかそんな感じかな……金星さんはそれを見て扇子で口を隠しながら震えている。何笑ってんだ。


「……始めましょう」


 鳥路さんがスシバトルの目になった。こんなのでも真剣勝負! その気持ちの切り替えの早さ! 流石鳥路さんだ!


「メイク! スシマシン!」

 

 轟さんが叫ぶ。


「……」


「メイク!! スシマシン!!」

 

 轟さんが再び叫ぶ。鳥路さんも叫べと轟さんの目が言っている。


「ええ……」


「メイク!!! スシマシン!!!」


「め、メイク、スシマシン……」


 スシバトルが始まる! 

 ……鳥路さんは既に羞恥心で相当なダメージを負っていそうだ。

 轟さんはもしかしたら強敵なのかもしれない。主に精神攻撃的な意味で……

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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