第44奏:響く、心の叫び
隣の楽屋で繰り広げられる激しい言い争う声に、三人は顔を見合わせる。
ドアの隙間から見えた光景は、あまりにも衝撃的だった。
今日のライブで一緒に出演した『Ablaze』のボーカルとドラムが言い争いをしていたのだ。
おそらく、ライブ後に発表された『解散』が原因なのだろうと綾乃は推測する。
「何度も言うが、みんな、この決断に納得しているんだぞ!」
その言葉にドラマーは激しい怒りを覚えたのか、ボーカルの前に一歩踏み出す。
「……納得ですって!? ふざけないでくださいましっ!!」
彼女の怒りに満ちた声が響く。
その声は、誰かに向けられたものではなく、ただ、彼女自身の心の叫びのように綾乃は聞こえた。
ドアの隙間から見ていた三人は、その場に立ち尽くし、ただその光景を静かに見つめている。
「私はもっと、よりもっと、高みを目指したかったのですわ!」
その言葉にボーカルは一瞬、悲しい表情を浮かべたが、何も言わず、ただ、静かに頷いた。
「……わかりましたわ」
ボーカルの表情を見たドラマーは、ただ一言、それだけ言って静かに頭を下げる。
「今まで、ありがとうございました。最後のライブまでよろしくお願いしますわ」
そしてボーカルは黙って楽屋を出た。
すると、楽屋の前で盗み聞きしていた三人と出くわしてしまう。
「「「……あっ」」」
三人は間抜けな声を出すと、ボーカルも驚いた顔をしていたが、何も言わず、ニコリと笑って楽屋を出て行った。
しかし、ボーカルが三人の前を通り過ぎようとした時、一瞬だけこちらに視線を向けたように綾乃は感じる。
その瞳はまるで、諦めと、そして安堵の色を帯びているようだ。
そした三人はただ黙って、その様子を見守ることしかできなかった。
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