第37奏:祝杯の誓い
ライブから数日後。
三人はイヴの提案により、綾乃の実家である蕎麦屋『鶴ノ庵』に集まっていた。
それは先日のライブの打ち上げをするためである。
「いらっしゃいっ!」
店の中に入ると、綾乃の父親が笑顔で三人を出迎えてくれた。
「すごい! お蕎麦のいい香りとお店がすごく落ち着く!」
イヴが、店内を見回しながら目を輝かせた。
「お父さん、こっちがイヴであっちが琴音」
綾乃が二人のことを紹介すると、父親は「イヴちゃんに琴音ちゃん、いつも綾乃がお世話になっております」と、深々と頭を下げた。
「綾乃ちゃんのお父さん、いつもお世話になってるのはこっちの方ですよ!」
「はい……! いつも綾乃さんのおかげで、私たちのバンドが成り立ってるんです……!」
イヴと琴音は横に首を振り、いつも綾乃に世話になっていることを強調する。
そして綾乃はというと、顔を真っ赤にさせながら照れており、顔を下に向け、ただじっと黙っていた。
すると、綾乃の父親は手を何回か叩き、場を仕切り直す。
「さあ、さあ! 今日はライブの打ち上げなんだろ? 今日は貸切にしてるし、好きなだけ食べなさい!」
この言葉に、三人は顔を見合わせ、嬉しそうにする。
「はい! ありがとうございます!」
「ごちそうさまです……!」
「……ありがとう、お父さん」
感謝の言葉を述べた各々はお座席に座り、注文をしていく。
「えー、それでは今回はオープンライブお疲れ様でした! かんぱーい!」
「「かんぱーい!」」
料理が揃い、温かい蕎麦と、揚げたての天ぷらを囲んで、三人はグラスを合わせた。
「お蕎麦、すごく美味しい……!」
琴音は蕎麦を一口食べると、幸せそうに呟いた。
「うん! 本当に美味しい! 綾乃ちゃんのお父さん、ありがとうございます!」
イヴもそう言って、満面の笑みを浮かべる。
綾乃は静かに蕎麦をすすりながら、二人の話を聞いていた。
「……美月さんに褒められたこと、今でも信じられない。でも、やっぱりAblazeのライブを観て、何かが足りないって、そう思っちゃったんだよね」
イヴがぽつりと呟くと、その言葉に綾乃も琴音も何も答えられなかった。
綾乃は冷めたお茶を一口飲むと、真剣な眼差しで二人を見つめる。
「ドラム、探そう」
その簡潔な言葉に、イヴと琴音は驚きながらも静かに頷いた。
「うん、そうだね。私たちにとって足りないものを探しだそう」
イヴはそう言って微笑んだ。
「そうだね……。私たちだけの音を、もっともっと高めていきたい……」
琴音も力強く頷く。
「……というかさ! ライブの打ち上げ、お蕎麦屋さんでなんて、私たちぐらいしかやらないよね! なんかだか新鮮!」
イヴが笑いながらそう言うと、三人の間に温かい空気が流れる。
温かい蕎麦を囲んで、三人は新たな道のりへの決意を固めるのであった。
青き魂の音 ー完ー
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