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61話 軍師、喧嘩に勝つ

 白獅子隊の騎士たちはエルバッハ村へと向かっていた。


「隊長を取り返すぞ!!」

「おう!!」


 大声を上げ進軍する騎士たち。鎧を身に纏う彼らは、木の棒や盾で武装していた。


 そんな彼らを見て、周囲の森林に潜む黄金隊の騎士たちはしたり顔を見せる。


「はは。あいつら、俺たちが隠れているのも知らずに」

「今日こそあいつらには痛い目を見せてやる」


 そこから少し離れたエルバッハ村。

 その入り口でゴルゼン、セケム、エルゼもまた笑みをたたえていた。


 ゴルゼンはセケムの顔を見て言う。


「セケム殿、奴ら狙い通りやってきたぜ」

「言っただろう。ああいう奴らは、煽ればすぐに乗ってくる。全て、僕の読み通りだ」


 自慢げな顔で言うセケム。


 しかし、その隣に立つセケムの師駒ライルは、白獅子隊を神妙な面持ちで見ていた。


 セケムはそれに気がつくと、苛立った様子でライルに問いただす。


「なんだ、ライル。嬉しくないのか?」

「師駒なんて皆ぶっきらぼうじゃないのか?」


 ゴルゼンがおかしそうに笑うと、セケムは不満そうな顔で答えた


「それが気に入らないから、僕が気分がいい時は笑顔でいるよう命じているんだ! それなのに、こいつはいっつも……」


 セケムは歯軋りすると、そのままライルを平手打ちした。


「……この覚えが悪い馬鹿が!」

「申し訳、ございません。しかし、どこか妙だと思いまして」

「妙?」

「はい。相手は、人質がこちらの手にあることを知っています。あのように堂々と、村を目指してくるでしょうか?」

「頭に血が上っているんだ! だから、猪のようにこちらに向かってきているんだ!! そんなことも分からないのか!?」

「ですが、相手は猪ではなく──」


 パシンという音が周囲に響く。

 再びライルの頬をセケムが叩いたのだ。


「黙れ!! 先ほども、くだらないことで僕を煩わせるなと言っただろう!! これは命令だ!」

「失礼、いたしました」


 ライルはセケムに頭を下げた。


 エルゼが呟く。


「顔はいいのに頭は悪いわねえ。ねえ、セケム。私のD級の師駒と交換しない?」

「悪いが、エルゼ。こいつはB級だし、戦いの腕だけは確かだ。それじゃ釣り合わないよ……まあ、こんなやついなくても、俺には強い師駒がいっぱいいるけど」


 セケムはそう言うと、遠くからやってくる白獅子隊に視線を戻した。


「他の師駒だったら考えてもいいよ。今から白獅子隊の奴らと戦わせるから、気にいる奴がいるかも。君の師駒も見れるしね……ゴルゼン殿、作戦開始だ!!」

「おう! お前ら、作戦開始だ!! 一人二人殺しちまってもいい!! 徹底的にぶちのめせ!!」


 ゴルゼンがそう言うと、黄金隊の旗手が旗を振るう。

 同時に、白獅子隊の周囲の森林や茂みから黄金隊の騎士とセケムの師駒が現れるのだった。


〜〜〜〜〜


 戦闘が始まる直前、アキトたちはエルバッハ村を目指し、伏せていた黄金隊の後ろを進んでいた。


 シスイ、アカネ、フィンデリアは別行動を取っており、シスイとフィンデリアは北から、アカネは南から黄金隊を挟む算段となっている。


 そんな中、アキトのもとにリーンが戻ってきていた。


 リーンからの報告を聞いたアキトは複雑そうな顔を見せる。


「ネア殿は無事……しかし、黄金隊の軍師はセケムとエルゼだったか」

「如何しましょう、アキト様? 敵にも一名、強そうな師駒がいました」


 二人とも数十の師駒を抱えている。

 多くはF級のポーンばかりだが、セケムはB級のナイトも所持していた。

 そのB級が相手となると、アキトの師駒たちでも辛いかもしれない。


 ──出直すか……いや、時間が経てばネアの身に何が起こるか分からない。

 しかも彼らが他の村に狼藉を働く可能性もある。

 なるべく早く片付けたい。


 アキトはそう言うと、自分たちの師駒を見回した。


 ──俺にはフィンデリアというS級の師駒がいる。

 彼女の回復能力を以てすれば勝てる。


 しかもセケムは小心者だ。

 最高戦力であるB級の師駒には、自分の身辺を守らせている可能性がある。


 それに彼が包囲以上の作戦を練っているとは思えない。

 彼が好きなのは立案であって、戦場の指揮はそうでもない。そして何度かの模擬戦で彼が指揮を不得手としていることは分かっている。

 想定外の事態に対応できる男ではないのだ。


 作戦を変更する必要はなさそうだな──


「このまま作戦を続行しよう。戦闘はシスイとアカネに任せ、俺たちは村へと向かう。リーンのおかげでネア殿が村にいることもわかったしな」

「かしこまりました」


 リーンとヴォルフはアキトの声に深く首を縦に振った。


 それからまもなく、アキトたちの耳に雄叫びが響いてくる。


 エルバッハ村を目指していた白獅子隊の四方から、黄金隊が攻撃を始めたのだ。


〜〜〜〜〜


 周囲からやってくる黄金隊を前に、白獅子隊の騎士たちは落ち着いていた。


「あの軍師の言うとおり、待ち伏せしてやがったか」

「全員、盾を構えて防御に徹しろ! 軍師さんの部下が来るまで、耐えるんだ!!」


 白獅子隊は円形陣を組んで迎撃の準備を整える。


「やれ!! 全員、ボコボコにしろ!!」


 一方の黄金隊の騎士たちは、皆勢いのままその円形陣へと突っ込んでいった。


白獅子隊は盾で押し返すように応戦するが、やがて四方を逃げ場のないまでに包囲されてしまう。


棒だけでなく殺生力の高い棍棒まで使う黄金隊。

しかし白獅子隊たちは一歩も引かず、猛攻を防いでいった。


「このままでは流石に……軍師さんの増援はまだか? ──うん?」


 激戦の最中、周囲の声より一際大きい野太い声が響く。


「どけ、邪魔だ!! 俺がやる!!」


 その声のほうから、黄金隊の騎士たちが吹き飛ばされてくる。


「軍師さんの師駒か!?」


 アキトの師駒が来たと喜ぶ白獅子隊の騎士たち。


 しかし、黄金隊の騎士たちを押し除けた鎧の大男は、まっすぐと円形陣へと向かってきた。


 大男は長柄の斧を振り回しながら叫ぶ。


「俺と勝負しろ!! セケム様の第一の師駒である、このストル様と!!」

「こいつ、敵か!? 盾を構えろ!!」


 白獅子隊の騎士たちは盾を両手で構え、ストルに備える。


「邪魔だぁああああ!!」


 ストルは長柄の斧を目に止まらぬ速さで振るった。


「ぐはっ!?」


 盾でストルの斧を防ぐ白獅子隊の騎士たち。

 しかし、その衝撃を受け止めきれず吹き飛ばされてしまう。


「へへっ! 骨のない奴らだ!!」


 ストルは倒れた白獅子隊の騎士たちに近づき、斧を振り上げた。


 黄金隊の中からも殺すなと声が上がるが、ストルはそのまま斧を振り下ろし始める。


 死を覚悟する白獅子隊の騎士たちは目を瞑った。


 だが。


「くっ──え?」


 騎士が目を開けると、そこには腕に矢を受けたストルがいた。


 ストルは矢をへし折ると、周囲を睨む。


「つっ! どいつだ!?」

「某だ!! 某と勝負しろ!!」


 その声が響くと同時に、弓を手にしたシスイが現れた。


「白獅子隊のやつか!?」

「とめろ!!」


 黄金隊の騎士たちはシスイを止めようと迎撃する。


 しかしシスイは刀の峰で彼らを気絶させ、ストルへと向かった。


 セケムの他の師駒も対応するが、D級とF級ばかりでC級のシスイの敵ではない。


 シスイはFランクの師駒たちを刀で払い除けていく。


 ストルはそんなシスイのほうを見るとふっと笑った。


「こりゃあ少しは骨がありそうなのが来たな!! その薄っぺらい剣ごと叩き割ってやる!!」


 ストルはシスイへと走り、斧を振るう。

 シスイはその場で高く跳びそれを避け、刀で反撃する。

 しかしストルもそれを防ぎ……シスイとストルの激しい打ち合いが始まった。


 一方でアカネは、黄金隊の騎士を中心に相手に戦っていた。


「姉様、目的を忘れぬよう!! ……聞いてないか」


 激闘を繰り広げるシスイを見て、アカネは呆れるような顔をした。


「姉様が強敵を相手をするなら、私は数を減らすのに集中するとしましょう」


 そう言ってアカネは刀を振るい、黄金隊の騎士を次々と気絶させていく。だが、セケムとエルゼの師駒には目もくれない。


 倒すのに時間のかかりそうな師駒は後回し。それがアカネの戦法だった。


「おい、俺と戦え!!」

「待つんだ!!」


 黄金隊の味方であるセケムとエルゼの師駒のほとんどは、そんなアカネをなんとか止めようとその後を追った。


 それを見ていた白獅子隊の騎士が叫ぶ。


「あの二人が惹きつけてくれている!! 今度はこっちが押し返すぞ!!」


 包囲されていた白獅子隊はその隙を逃さず、攻勢に転じた。


「あ、あいつら最初からこれが目的だったのか……」

「に、逃げろ! 一旦逃げて態勢を整えるんだ!」

「やめろ! ゴルゼン様が許すはずがない!」


 挟撃を受けた黄金隊は大混乱に陥り、戦線を離れる者が続出するのだった。


〜〜〜〜〜


 黄金隊と白獅子隊が戦闘に入る中、アキトはエルバッハ村の近くにまで到達していた。


 アキトは茂みに隠れ、村を眺める。


 騎士たちは皆、迎撃に出ているのか姿が見えない。

 一方の村人たちは民家の窓や路地裏から心配そうに外の様子を窺っていた。


「リーン。セケムたちはどこに?」

「向こうの方角です。村の入り口に近い広場でした。会話から察するに、今はそこから近くの村の入り口にいると思われます」

「そうか。ネア殿は広場に?」

「はい。少ししか離れていませんが、十分解放できる時間はあるかと。見張りもつけていませんでしたし。ですが、先ほども申し上げたように、セケムの近くには強そうな護衛が一人おります。どうかおご注意を」

「さっき言ってた魔物の匂いを嗅ぎ分けることができるやつか……なら、むしろ策は立てやすい」


 リーンは安心するような顔をするアキトに尋ねる。


「村には人間がたくさんいる。アキト様は気がつかれずに行動できる……つまり、アキト様は別行動を取るつもりで?」

「ああ。リーンとヴォルフでその護衛の気を引いてほしい。その隙に俺はネア殿を解放する。ネア殿は騎士だから、すぐにでも戦力として村の解放に加わってもらいたい」

「なるほど。そういうことでしたら、私とヴォルフ様でうまくやりましょう」

「頼む。それと、くれぐれもその護衛との戦闘は避けてもらいたい。ネア殿と合流するまでは、気を引くだけでいい」

「肝に銘じます。では、行きましょう、ヴォルフ様」


 リーンの言葉にヴォルフはこくりと頷き、二人で村のほうへ向かった。


 アキトは村の建物や柵に隠れながら、村の入り口を目指す。


 すると、アキトの目に漆黒の鎧の青年が目に映る。


 周囲にはセケムとエルゼ、そして鎧を着た大男がいた。


 大男は黄金隊の隊長ゴルゼンだろうな……そしてあの鎧の青年がリーンの言っていた師駒か。


 漆黒の鎧の青年は、剣を抜き周囲を警戒していた。


 しかし、セケムたちはそんな青年を見て困惑している。


「突然、どうした!? ライル!」

「セケム様、申し訳ございません……ですがやはり、魔物が潜んでいたようです」

「まだ、そんなことを……なっ!?」


 セケムはライルが目を向けたほうを見て、唖然とする。

 そこには短剣を手にしたコボルト──ヴォルフがいたのだ。


 エルゼも声を震わせる。


「な、な、ななんでこんな場所に魔物が!?」

「お、落ち着け、エルゼ!! ら、ライル、あいつを倒せ!!」

「かしこまりました……しかし、魔物はもう一体いる可能性があります」

「そっちはゴルゼン殿がどうにかする!! お前はそのケダモノをやれ!!」

「かしこまりました……」


 ライルはそう答えると、剣を構えヴォルフへとゆっくり近づいていく──と思えば、急に地面を蹴ってヴォルフに一瞬で肉薄した。


 咄嗟のことにヴォルフは短剣を振るってそれを防ぐ。そして後ろへ跳ぶが、


「っ!」


 ライルはすぐさまヴォルフに接近し、また目に止まらぬ速さで剣を振り始めた。


 あのヴォルフと速度が互角……剣の扱いに関しては、シスイとアカネを思わせるものだった。


 しかし速さでは拮抗していても、長剣相手に探検では部が悪すぎる。


 ヴォルフは全く反撃できず、防戦一方となってしまった。


「ヴォルフ様!!」


 鳥の姿となったリーンが空に現れ、ライルへ突撃する素振りを見せた。


 ライルはリーンが気を引こうとしているのが分かっているのか、リーンには目もくれない。


 リーンに大した攻撃力はないと断じたのだろうとライルの判断力に感心するアキトだが、自分にはやることがある。


 二人が注意を引いてくれている内に、アキトは縄で拘束され地べたに横たわるネアを見つける。

 刀を抜いてネアのもとへ駆け寄ると、すぐさまその縄を斬り落とした。


 ネアはすぐに立ち上がると、歓喜に満ちた顔をアキトに向ける。


「アキト殿!! 来てくれたか!!」

「ネア殿、俺の味方が危ない!! 手伝ってくれ!!」

「おう!! まずは、あのろくでなしを成敗してくれる!」

「待て、ネア殿、せめて武器を──あっ」


 一目散にゴルゼンのもとへと走ったネアは、振り向いたゴルゼンの頬に拳を喰らわせた。


 剣を抜く暇すら与えられず、大男のゴルゼンはその場で力無く倒れるのだった。


 女性とはいえネアは騎士。日頃から鍛えているのだろうとアキトは感心する。


 一方のセケムとエルゼは、振り返るまで気がつけなかったのか、ネアを見て慌てふためく。


「こ、こいつ、いつの間に!?」

「な、縄で縛られていたはずじゃ……まさか村人が……あっ」


 エルゼはついに刀を抜いたアキトに気がついた。


「あ、アキト!?」

「エルゼ、セケム。よくもエルバッハ村で狼藉を働いてくれたな。ただで帰れると思うなよ」

「ぼ、僕は……! ら、ライル!」


 セケムは剣を抜きながら、ライルのほうに振り向く。


 ライルも異常に気が付きセケムのもとへ戻ろうとするが、ヴォルフがそれを許さない。


「ネア殿、今だ!!」


 アキトはその隙を逃さず、ネアに縄を投げ渡す。先ほどまでネアを縛っていた縄だ。


「おう!! 観念するんだ!!」


 ネアはそういうと、セケムの手首を手刀で叩き、剣を落とす。


 そうしてすぐにセケムとエルゼの手足を縄で拘束した。


 セケムとエルゼは地面に横にされると、ジタバタと暴れる。


「や、やめなさい!」

「そ、そうだ、僕たちは何もしてない!!」


 ネアは怒鳴り声を返す。


「何を今更! 村人から宝石のようなものを大量に集めていただろ!? 潔く罪を認めろ!」

「う、うるさい!! 僕はリュシマコス大公の息子なんだぞ!!」

「何? 大公の息子が盗賊まがいのことをしたのか?」

「い、いや、だからしてないと!!」


 慌てて答えるセケムに、ネアはため息を吐いた。


「見下げ果てたやつだ。しっかり罰してもらいたいが今は──」


 ネアはそう言うとゴルゼンの剣を拾い上げ、武器で打ち合うライルとヴォルフへと近づく。


 アキトも刀を構え、ライルを三方から包囲する。


 ヴォルフと離れ、周囲を見回すライル。


 一歩でも近づけば、自分が斬られるかもしれない──

 隙のない構えに、相当な剣の使い手であることをアキトは再認識する。


 だが、すでに勝負はついた。


 村の外から、シスイ、アカネがやってくる。


「アキト殿!!」

「旦那様、お待たせしました!!」


 アキトに駆け寄るシスイとアカネ。


 それから少し遅れて、フィンデリアと数名の白獅子隊の騎士たちもやってきた。

 皆フィンデリアのおかげか、大きな怪我などはないようだ。


「隊長、大丈夫か!?」

「ああ。そっちは?」

「誰も怪我人はいねえ。今は白獅子隊の奴らを拘束して集めているところだ」

「そうか……なら、あとはこの男だけだな」


 ネアはライルに剣先と視線を向けながら答えた。


 もはやライルに勝ち目はない。

 それに主人であるセケムは捕まった。


 アキトはライルに告げる。


「降伏しろ。剣を捨てたら、縄で拘束する」

「そ、そんな奴の命に従う必要などない!! お前はB級の師駒!! こんなやつら、一瞬で片付けてしまえ!!」


 そう叫ぶセケムに、ライルは不安そうに答える。


「しかし……」

「どうせこいつらは僕には何も手出しできない!! 僕はリュシマコス大公の息子なんだ!! 僕に傷一つでもつかせたら最後──ぬっ!?」


 アキトはセケムの口に縄を噛ませ、ライルに告げる。


「君ほどの師駒なら、すでに勝ち目がないことは分かるだろ。もはや抵抗は無意味で無益だ」


 それを聞いたライルは小さく頷く。


「あなたの仰る通りだ……しかし、私は主人の命を聞くのみ」


 ライルは剣を構える。


 シスイはそれを見て愉快そうに笑った。


「その忠義、天晴れ! ならば、某がお相手つかまつる!」


 シスイとライルは互いに武器を構え、ジリジリと距離を詰めていく。


 ライルの剣の腕には、シスイしか敵わない──アキトもまずシスイに任せるつもりだった。


 しかし──


「なっ……これは」


 一瞬眩しい光が周囲を照らすと、ライルは突如その場でふらつき出す。


 なんとか剣を杖にして立とうとするライルだが、そのままばたりと倒れてしまった。

 死んではいない。

 呼吸はしているようだ。


 周囲もシスイも当然ざわめきだす。


「死んだ、わけじゃないよな」

「一体誰がやったんだ?」


 もちろん、誰かが武器で倒したわけではない。

 

 光によって、ライルは眠らされたのだ。

 アキトは光を放った者に顔を向ける。


「フィンデリアか」


 こくりと頷くフィンデリア。

 主に回復魔法を得意とする彼女。眠りで癒す魔法も知っているのだろう。


「フィンデリア殿は全くせっかちでござるな……」


 シスイが頬を膨らませて言うと、フィンデリアは申し訳なさそうな顔で頭を下げる。


「フィンデリアさん、気になさらないでくださいね。ほら、姉様、早く」

「おう」


 アカネの言いつけ通り、シスイは縄でライルを縛っていく。


「よし……村も奪還した。俺たちの勝利だ!!」


 アキトがそう叫ぶと、師駒や白獅子隊たちもおおと声を上げるのだった。

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