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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第89話 バイトの誘い

 星乃と遊んでから既に3日が経っていた。

 あの日以降、平穏な休日を過ごしていた。たまに晴翔から勉強を教えてくれと泣きついた電話が来るくらいだ。

 孝也自身は学校から出せれている課題も順調に終わっており、時間があれば本を読むか、たまに本屋に出かけるといったことをしていた。

 今日ものんびりした1日を過ごそうとリンビングのソファで寝転びながら本を読んでいた。

 「孝也〜。来週って暇?」

 先程まで電話をしていた母がスマホを片手にやってきた。部屋を外して電話する時は大体仕事の電話のはず。

 今もスーツ姿で仕事に行くための格好をしている

 「んー特に予定はないけど」

 本に栞を挟んで机に置き、体を起こす。

 「それなら来週2泊3日で叔父さんの旅館の手伝いに行ってくれない? なんか団体客が入ったらしくて人手が欲しいんだって」

 叔父の旅館は海辺にある、それなりに昔からあるところだ。

 毎年声はかかっており、晴翔と遙の3人で行っていた。

 いつもなら1泊2日だった。それに内容も掃除や部屋の整理等々で仕事は主に昼間で夜は遊んでいた。

 「2泊3日の団体客ってもしかして接客もやらされるのか? それなら嫌なんだけど……」

 いつも裏方の仕事だけで接客は旅館で働いている人たちがやってくれていた。しかし来る人数が多いとなるとそうも行かない気がする。何より知らない人と接するのが嫌だ。

 「何よ毎年行ってるじゃない。バイト代も出してくれるって言ってたし。それに晴翔君たちも呼んで欲しいって。人手は多い方が助かるって言ってたから他に声かけれそうな人がいたら呼んでいいって」

 「でもさ……」

 「いいから早く連絡しなさい。孝也が行くことはもう伝えちゃってるんだから」

 何をやってくれているんだ、この母は……。しょうがないが晴翔たちに聞いてみるか。

 母親に少し呆れながら、スマホを取り出し、晴翔と遙にメッセージで期間などの条件を送った。意外にも早く既読が付き、「もちろん行く」と2人から返事がきた。

 「行くってさ。それで何人くらい呼べばいいんだ?」

 「さあ? 孝也達で3人でしょ。あと2人くらいで十分じゃない?」

 「そうか......。当てがないこともないが」

 つぶやきながら孝也は後の2人をどうするか考える。

 「明日までに教えてね〜。それじゃあ私は仕事に行ってくるから。戸締りしっかりね」

 言うことだけを言ってそのまま家を出て行った。

 「ああ、気をつけてな。……めんどくさ」

 1人取り残されたリビングで呟いた。


 意外にも早く人が集まった。

 あと2人ほどいないか? と聞いたら遙が星乃と松原に声をかけ、全員が来週のいつでも来れることになった。

 決まってすぐに作られたグループでは全員が各々の楽しみなことを話し合っている。


 空が陽光の赤と夜の闇の中間で揺らめいてる時間。母さんが仕事から帰ってきた。

 「ただいまー。外すごい暑いんだけど」

 「おかえり。晩飯は作ってあるけど、先風呂の方がよさそうだな」

 汗で首や髪が湿っている。今日は一日中家に篭っていたから外の状況は分からなかったが、ニュースを見て猛暑日だったらしい。

 「さすができる息子ね。先にお風呂行ってくるわ」

 親指をグッと立てて、そのまま風呂場へ行った。


 母さんが風呂から上がり、エアコンの前で涼んでいる。孝也は晩御飯をテーブルに運んでいる。

 「そうだ。朝言ってたことだけど……」

 「まあ、先に食べましょう」

 冷房で十分涼んだのかそのまま椅子の座る。配膳が終わった孝也も椅子に座った。2人共、両手を揃える。

 「「いただきます」」

 「んー美味しい。私の息子とは思えないわね」

 唐揚げを食べながら酒を飲む。いつの間にか缶ビールが置いてあった。

 「母さん、いつの間に酒を」

 「暑かったんだからいいじゃない。一杯だけよ」

 「はあ……。それで朝のことだが、俺を含んで5人になりそうだ」

 「わかったわ。あとでその人数で伝えておくわ」

 それからは母さんの仕事の愚痴に付き合いながら晩飯を終えた。

 母さんは勝気な性格のせいで酒が強いと思われているが、缶ビール一杯で潰れてしまう。

 そのため、ソファで1時間くらい寝ている。

 「下戸なのに酒なんて飲むから。ほら、水飲んで! 早く部屋に行ってくれ」

 「うう……。今行くわ」

 持ってきたコップの水を飲み干すと2階の部屋に上がって行った。

 1人になったリビングで本を開き朝の続きを読もうとすると着信が響いた。

 「誰だ?」

 画面を見ると晴翔だった。切っても良かったが、出るまでかけ続けてくるのが目に見えたので仕方なく電話に出た。

 「なんだ? もう夜も遅いぞ」

 「まだ10時だぜ。まだまだこれからだろ」

 テンションの高い声がスマホ越しに聞こえてくる。少しスマホから耳を離して口を開く。

 「うるさいな。要件はなんだよ」

 「ああ、悪りい。それよりも今年も行けるんだな」

 「そうだ。母さんから聞いた限りいつもより少し期間が長いらしい。どうも団体客が入ったとか」

 「そっかー。まあ俺としては~はるちゃんと一緒に旅行が出来ればなんでもいいから」

 飄々とした声が聞こえる。晴翔と遙は2年連続で参加しているため何となく勝手がわかるのだろう。

 「そ・れ・よ・り・も孝也。勉強おしえて」

 「急だな」

 晴翔が電話越しに泣きついてきた。

 「実はさ……」

 話を聞くと、どうも親に話したところ夏休みの課題を半分以上終わらせないと今回の手伝いに行くなと言われたようだ。

 「そうか。まあ、頑張れよ」

 「そんなこと言わないで孝也様ー。助けてください! ほら孝也だって女子3人の男子1人なんて気まずいだろ?」

 痛いところを突かれた。こういう時に突破口を見つけるのだけはうまい男だ。

 「……はあ。わかったよ」

 「まじでありがとう! それじゃあ早速だけど」

 「ちょっと待て。今部屋に行くから」

 孝也はリビングの電気を消し自分の部屋へと行き、晴翔の分からない箇所を聞きながら自分の課題もついでに進めることにした。

 「夜はまだ長いからな。よろしく頼むぜ孝也」

 「頑張るのはお前だ。俺は教えるだけ」

 晴翔の勢いにため息を吐きながらノート開いた。

前回の投稿から意外と早く更新することになりました。

最近執筆活動が楽しくて、色々構想が捗ってます。

次回の更新も意外と早いかも……?

不定期なので期待はしないでください笑

それではまた次回、お会いしましょう

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