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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第64話 テスト終わりと合流

 「はい、そこまで。ペンを置いて後ろから解答用紙を送ってください」

 静かな教室に終わりのチャイムと共に教師の声が広がる。一斉にペンを置く音が聞こえる。

 回収したテスト用紙を封筒に入れると教師は出ていった。

 その瞬間から教室中がにぎやかになった。

 「終わったー!」

 「ようやく勉強から解放される……」

 「あとは夏休みを待つだけだな」

 各々テストから解放されて水を得た魚のように生き生きをしている。

 孝也も椅子に座りながら軽く両手を組んで伸びる。同じ姿勢でずっといたからか体からはバキバキと音が鳴った。

 体の凝りをほぐしたあと帰り支度を始める。周りの喧騒に紛れて静かに準備をしていると人影が近づいてきた。

 「テストお疲れさまー。私は準備できてるよ」

 「ヤッホー、たかちゃん。まさかとは思うけど月曜日みたいにこっそり帰ろうとしてないよね?」

 「孝也、お前は強制参加だからな?」

 やって来たのはいつもの3人だ。楽しみといった雰囲気の笑顔の松原。それに比べて晴翔と遙は孝也が先に帰らないように見張りに来たのか、ジッと疑いの目を向けてくる。

 諦めのため息を吐きつつ、孝也はぼやく。

 「流石にこの状況で帰れないだろ」

 孝也がそういった理由それは3人が孝也を囲むような感じで立っていた。完全に包囲されており、逃げれるはずがなかった。

 仕方なしに席から立ち上がる。

 「行くんだろ。ならさっさと行くぞ」

 カバンを背負い、歩き出す孝也を見て3人は嬉しそうに笑いながらついてくる。

 廊下に出ると下校しようとしている人、他クラスの生徒と話している人などの多くの人でごった返していた。その中でも4人は纏まって歩いていたが、教室を出てすぐに遙が青ざめた顔でつぶやいた。

 「あ、そういえば私、星乃さんとの集合場所決めてなかった……」

 「……でもほら、星乃さんって隣のクラスなんだし、今から呼びに行けば大丈夫だよ」

 晴翔は遙を慰めるために優しい言葉をかけているが、横で聞いていた孝也は楽観的な考えで言ってるなと内心思っていた。

 「そうだよね! 今から行けば良いんだもんね。よし、行こう〜!」

 晴翔の言葉で再び元気になった遙は5組に前まで走っていく。追いかけるようにしてあとをついていく。遙が先に5組のドアの辺りで顔を覗かせて教室の中を見ていた。晴翔と松原も教室から出てくる人の邪魔にならないように端の方から星乃を探す。

 だが、星乃の姿を見つけることはできなかった。

 「まさか、私が集合場所言わなかったから先に帰っちゃったのかな……」

 今度はガッカリしたように肩を落として声が小さくなっていく。こんなに落ち込んでいる遙を見るのはいつぶりだろうか。孝也は少しレアな状態の遙を見て心の中で面白がっていた。

 「星乃さんに限ってそんはずないよ!」

 松原が一生懸命に遙を励ましているが、どうにも効果はイマイチのようだ。

 「誰か星乃さんの連絡先持ってないの?」

 「私は持ってないなぁ」

 「私も……」

 「そっか……。どうしようか」

 だれも星乃の連絡先をもっていないらしく、彼らが思いつく限りの手はなくなった。

 ここで孝也は顎に手を当て、悩んでいた。唯一、星乃と連絡が取れるのだがこれを告白することで面倒なことになるだろうということだ。

 教室の前で悩んでいる4人の集団。5組の生徒からは変な目で見られていたが、今は誰も気にしていない様子だ。

 どうしようか、悩んでいるとズボンの後ろポケットに入れていたスマホが振動する。孝也はスマホを取り出すと画面には《星乃雫》と表示されていた。悩んでいたら向こうから連絡が来た。

 孝也は応答の表示を押すとスマホを耳に当てる。

 『もしもし、どうした?』

 『今みなさんがどこにいるのかわからないので電話したんです』

 いつも以上に近くで聞こえる星乃の声に孝也は少しばかりドキドキしていた。極力、平静を装いながら会話を続ける。

 『5組の教室の前だ。そっちこそ今どこにいるんだ?』

 『私は今図書館にいます。5組にいるなら私がそっちに行きましょうか?』

 『いや、図書館の方が静かな気がするし、俺たちが向かうから待っててくれ』

 『わかりました。では待ってますね』

 『ああ』

 淡々と要件だけを伝えた会話は終わり、スマホを耳から離して通話を終了した。スマホをポケットにしまい、3人の方を見るとニヤニヤした顔の晴翔と遙がじっと見ていた。その様子に少し驚いたが、すぐに顔を顰めた。

 「連絡先持ってるなら先に言ってよ〜」

 「そうだそうだ! ずるいぞ。孝也」

 野次を飛ばしてくる2人を無視して先に歩き始める。

 「あ、ちょっと待ってよ!」

 そう言って3人は後ろから追いかけてくる。そして図書館へと向かうのだった。

 「孝也くんと星乃さんってどういう関係なのかな……」

 誰にも気づかれないように呟き、1人不安な顔をしながらついていく。

第64話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

テストが終わり、孝也と星乃が連絡先を交換していることが知られてしまいました!

松原の感情がどうなっていくのか、書いていてちょっと楽しいです。もちろん孝也くんたちの心情を描くのも楽しいですからね!

いつも読んでくれてありがとうございます♪

それではまた次回、お会いしましょう

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