第54話 好奇の目と怒声
星乃と別れて教室に戻るとクラスの大半の生徒が来ていた。朝から動物園のように騒がしい教室は孝也がドアを開けたことで静まり返った。
やけにクラスメイトの視線が孝也に集まる。なぜ自分がこんなに注目されているのか理解できない孝也は気にすることなく教室に入り自席へと向かう。
席に座ると早々にニヤついた顔の晴翔達が近寄ってきた。
この顔をしている2人が面倒臭いことを嫌と言うほど知っている孝也は座ったばかりの椅子から立ち上がると再び教室から出ようとする。
しかし、晴翔に先回りされていた。
「随分と遅かったじゃないか、孝也?」
肩を寄せて耳元で晴翔が囁く。反対側には遙が立っており、逃げれる状況ではなかった。
はあ、と一つため息を吐き孝也は気怠さを全面に出しながら口を開いた。
「別に遅かったからってお前達に迷惑はかからないだろ」
「そこじゃないよ、たかちゃん。教室から出て行った後しばらくして星乃さんと2人で廊下歩いてたじゃん! まったく〜隅に置けないな〜。それで2人でどんな話してたの〜?」
遙が目の輝きが普段より一層増していた。
「今日の勉強会についてだよ。廊下で偶然あったからな少し話してただけ」
「少しって言う割には遅かったじゃん」
「話し終えた後、トイレに行ったからな」
「くっ……どこにも突っ込む夜要素がないじゃん」
そう言いながら遙は悔しがっている。晴翔は孝也をじっと見て何かを観察しているようだった。
こういう時の晴翔は妙に勘がいい。だからこそ悟られないように平常にしてなくてはならいない。
「そうか。それなら遅くなっても仕方ないな」
どうやらうまく誤魔化すことができたらしい。孝也と星乃が教室の前を通ったのを見ただけで2人が興味本位で追って来なかったので本当によかった。
なんとか面倒臭いことから乗り越えた孝也だったが、安心するには早かった。
「おい、三河! ちょっと来い!」
教室の中だけでは収まらず廊下にも轟くほどの大声。そしてそんな大声で呼ばれて孝也は驚いて肩をビクつかせた。
声が聞こえた方へ振り向くと東海林が鬼のような形相で孝也の方へと歩いてくる。
(来いと言ったのにこっちに来るのかよ……)
そんなことを思い、東海林を見ながらどうしようか考える。
「星乃さん大好き東海林くんがこっちに来てるよ……まあ、目当てはたかちゃんだろうし、がんばってね!」
「じゃあな、孝也。また後で」
さっきまで横にいた2人はその言葉が聞こえたかと思うといつのまにかいなくなっていた。
「おい、三河。ちょっと話がある」
語気が強く、いかにも苛立っている様子の東海林。こういう人は明らかに面倒だ。
孝也は淡々とした口調で東海林を遇らう
「いや、俺はお前に話すことはない。さっさとどっか行け。HRが始まるぞ」
「いいから話を聞け! そして俺の質問に答えろ!」
いつの間にか教室の中は静まり返っており、注目は孝也と東海林に集まっていた。晴翔、遙は好奇の目を向け、松原は友達といたが、話をやめてしまった心配そうな目を向けていた。
こうなると逃げることは出来なさそうだ。仕方ない、障子の質問とやらにテキトーに答えてこの状況をすぐに収束させよう。
思考をまとめ、一つため息を吐くと孝也は東海林の目を見た。
「わかった。それで質問ってなんだ?」
「お前、星乃さんと一緒に空き教室に入って行ったそうだな」
東海林は孝也の肩を力強く掴まれて少し痛い。
それ以上にとんでもない発言をしてくれた。教室にいる陰で星乃を好きだった奴らも目が鋭くなった。
「どういうことだ!」
「答えろ!」
「お前、星乃さんとな、何をしたんだ!」
そして教室の至る所から叫び声が飛んでくる。今までは孝也が星乃に好意を持っていないと思っていたから静かだった奴らも流石に東海林の言葉を聞いて黙っていられなくなったようだ。
しばらく孝也は教室が静まるを待ち、黙っていたが一向に静かになる気配がない。それどころか喧騒は激しくなる一方だった。
そして孝也にも限界は存在した。
「お前らうるせさいな……少し黙ってろ!」
東海林が面倒臭いことと外野からの声でいい加減に苛立ちが抑えられずに今まで出したことのないほどの大声で怒鳴った。
孝也が怒鳴ったことで教室が静寂に包まれた。晴翔、遙、松原も驚きのあまり口をポッカリと開けて動きが止まっていた。
第54話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
今回は孝也くんが怒った話ですねー最近彼を怒らせてばっかりな気がします。
それだけ感情が豊かになってきたということなんでしょうか〜
これからドンドンと感情が豊かになっていく人が増えていうことでしょう!
それではまた次回、お会いしましょう




