第36話 ぎこちない雰囲気
「お待たせ! そろそろ行こっか」
話を終えた様子の2人がこちらを向き、顔の火照りがまだ微妙に残ってる松原が言う。
孝也は頷くと3人は公園の出口へと歩き出す。
ふと、歩きながら空を見ると雲間から星が見え始め真紅の空が濃紫色に急速に変わりつつあった。
下校時にこんなにゆっくりしたのは初めてかもしれない。少し前までの孝也だったら学校が終わればすぐに家に帰っていた。
案外、楽しいものだ。
そう思いながら公園を後にした。
しばらく星乃と松原が他愛もない話をして談笑している姿を孝也は後ろから眺めていた。そして、ある交差点で松原との別れがきた。
赤信号から青に変わったのを確認すると松原は横断歩道を渡りながら手を振る。
「じゃあ、私こっちだから。今日はありがと! バイバイ〜」
「はい、また明日」
短くそう返事をした星乃は手を振り返していた。孝也も何も言わなかったが軽く手を上げていた。
松原を見送った後、2人は静かに同じ方向に歩き出した。
並んで歩いているが無言がしばらく続いた。ふと、孝也が何かを思い出したようで、星乃を呼んだ。
「星乃、はいこれ」
手渡されたものを見て彼女は首を傾げる。
「どうして急にお茶を?」
「さっき公園で買ってたんだが、渡しそびれてた」
「わざわざ、ありがとうございます」
そう言って受け取った彼女の表情は夜空と月明かりもあってか、いつもより神秘的に美しく見えてしまい、孝也は不覚にもドキッとしてしまった。
「どうしたんですか?」
そのまま歩みを止めて固まっていた孝也を見て星乃が声をかける。
「あ、いやなんでもない。気にするな」
「わかりました」
2人は止まっていた歩みを再開した。そして歩きながら孝也は心の中でホッとしていた。
簡単に引き下がってくれて助かった。あまりにも綺麗で見惚れていたなんて言ったらどんな顔されるか想像もできない。
「明日も勉強会はやるんですよね?」
「あ、ああ。多分あると思うぞ」
考え事をしていたからか、少し返事が遅れた。
そして実際に明日も勉強会をやるのかは分からない。なぜなら誰も明日のことについて言及していないからだ。全員なんとなくあるだろう、というスタンスで今日を終えている。
つまり明日は参加しなくても文句は言われない。仮に言われたとしても誰もあるとは言ってなかった、といえば問題はないだろう。
「ま、俺はいなくても問題なさそうだな」
色々と思考を巡らせた上で発した言葉だったが、星乃は目を丸くして吃驚している。
「三河さんは参加しないんですか?」
「まあ、別に俺はいなくても問題なさそうだしな。遙には星乃が、晴翔には松原がいるしな」
孝也の言ってることを聞いた星乃は自分を指差しながら頬を膨らませて不満を表している。不覚にも可愛いと思ったが表情筋を引き締めて平静を装う。
「私に教えてくれる人がいないじゃないですか」
不服さを態度で表している彼女を気にすることなく、孝也は平然と答える。
「いや、お前はこの勉強会が始まる前にテスト範囲は全部教えてあるだろ?」
それを聞いた星乃は言葉を詰まらせた。
「そ、それはそうですけど……でも、私には三河さんぐらいしか話す人がいないんです」
どうやら会話相手がいなくて不安らしく、彼女の眉尻が下がっているように見えた。そんな彼女の不安の気持ちを晴らすために孝也は精一杯の慰めをする。
「安心しろ。遙も晴翔もいいやつだ。それに松原も自称だが誰とでも友達になれるらしいからな。問題ないだろ」
一生懸命、彼女が安心するように今回いたメンバーのいいところをなんとか頭を絞って言う。
「……そういうことじゃないんですが」
星乃がボソッと何か言ったのが聞こえた。だが、なんと言ったのかは聞こえなかった。
「なんか言ったか?」
「いえ、なんでもないです。ただ、三河さんがそこまで言うので少し安心しました」
孝也からの問いかけに星乃は笑顔で返事をした。しかし、どこか目の奥が笑っていないようにも見えた。
それから星乃の機嫌がなぜか悪くなったので、孝也は彼女の隣を歩いていて少し気まずい雰囲気のまま帰路に着いた。
36話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
更新が遅くなってごめんなさい。金曜日は気をつけますね〜
それと朗報です! 1日のPVが200を超えた日が出ました!!!! 読者の皆様には本当に感謝です。
感想やブックマーもお待ちしてますのでよろしくお願いします!
それではまた次回、お会いしましょう




