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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第26話 やってきた問題

 星乃は十分ほど考え込んでから答えを出したようで、顔を上げて孝也の方を見る。

 「私はその話ですが……」

 星乃が口を開いたのと同時に図書館のドアが開かれる音がする。2人揃って音がした方を見ると見知った2人が立っている。

 「図書館は人がいないからいい勉強場所だね。ハルくん」

 「そうだね。ただ孝也がいないから2人でなんとかしなくちゃいけないけど」

 見知った2人とは晴翔と遙だ。今の状況を2人に見られたら絶対に面倒臭くなる。

 孝也は急ぎ、しかし音を立てないように机の下に隠れる。

 「急にどうしたんですか?」

 孝也の奇行に星乃は机の下を覗いて聞いてくる。星乃の方を見ると色々とアレなので顔は向けない。

 「お前と2人っていう状況をあの2人に知られると面倒だから隠れてるんだ。頼むから俺のことは気にしないでくれ」

 珍しく焦っている孝也を見て星乃は頷き、下を覗くのをやめてくれた。

 「あれ? 星乃さんじゃん!」

 乱れた髪を手で軽く直して何事もなかったかのように勉強を再開した星乃に遙が気がつき、はしゃいでる子供のように笑顔で走って寄ってくる。晴翔も後ろからゆっくり歩いて星乃の所まで来た。

 下には孝也が隠れている。孝也は内心めちゃくちゃ焦っていた。

 「お久しぶりですね。えっと……」

 星乃は覚えていたようだが名前は知らなかったのか言葉を詰まらせる。

 そうだった! と思い出したように遙が口を開く。

 「そういえば、私自己紹介してなかったね。私は花香遙。星乃さん、よろしくね! こっちは私の彼氏のハルくんこと川瀬晴翔だよ」

 「よろしく、星乃さん」

 優しく微笑みながら晴翔が挨拶をする。

 「初めまして、星乃雫です。よろしくおねがいしますね」

 星乃も丁寧に頭を下げて挨拶をする。

 「それよりも花香さん、声もう少し小さくしないと司書の先生に怒られますよ?」

 「そっか。気をつけなくちゃ!」

 小声で諭したのに遙の返事はまた大きい声だった。その姿に晴翔は小声で星乃に謝る。

 「ごめんね、星乃さん。はるちゃんすっとこんな感じだから」

 「そうなんですね」

 星乃は納得したように頷く。

 司書の先生の様子を窺っていた遙が星乃に質問をする。

 「それより星乃さんは図書館で何してるの?」

 「テスト勉強ですよ。お2人はどうして図書館に?」

 孝也もそれは確かに知りたかった。普段この2人が図書館に来ることなんてないからな。

 「実はね、たかちゃんに勉強教えてもらおうとラインしたんだけど既読がつかなくて。ハルくんと2人で探してたの。星乃さんはたかちゃんがどこにいるか知らないよね」

 遙が言ってたことを確認するためにポケットからスマホを取り出すと、晴翔と遙からとんでもない量のラインが来ていた。マナーモードにしてたから気がつかなかった。

 孝也は机の下で頭を抱えている。

 「すみません。三河さんの居場所はわからないです」

 「そうだよね……ってこれ誰のカバン?」

 遙が椅子の上に乗っている鞄に気がついた。

 ヤバい、焦りすぎていて自分の荷物を隠すのを忘れていた。そしてもっと大変なことに勘のいいやつがいるということだ。

 「これって孝也のじゃないか?」

 顎に手を当てて名探偵が謎を推理するかのように鞄を見ながら晴翔が言った。

 「え! それってほんと?」

 遙が目を丸くし驚く。そして晴翔に確認しているところだった。

 「多分だが、孝也のだ。星乃さん、孝也はどこかな?」

 「私がここにきた時にはあったのでわからないです」

 晴翔が問い詰めるが一向に表情を変えずに星乃は知らないの一点張りだった。

 「そっか。ごめんね疑っちゃって」

 晴翔は意外と素直に引き下がった。孝也は机の下でホッとしていた。

 「ハルくん。たかちゃん探しに行こう」

 遙が孝也の服の袖を引っ張って催促する。晴翔も笑顔で応える。

 「そうだね、鞄があるってことはまだ学校にいるってことだし」

 「じゃあ星乃さん。バイバイ!」

 遙が手を振って、晴翔は頭を軽く下げて図書館から出て行った。

 ドアの外が静まり返ったことを確認してから孝也は机の下から椅子を退けて這い出てくる。

 「大丈夫ですか? 三河さん」

 服についた汚れを払いながら星乃の方を見る。

 「ああ、大丈夫だ。俺のカバンだって晴翔が気がついた時が1番焦ったけどな」

 「アレには私もびっくりしました」

 星乃が安堵の笑みを見せる。孝也は一瞬息を飲み、見惚れてしまった。しかし一瞬だ、彼女も気がつかないほどの。

 うまいこと誤魔化すために孝也は話を続け、2人は司書の先生に怒られない程度に談笑する。

 その時、ドアが勢いよく開かれる。

 「あれ! たかちゃん、いるじゃん!」

 遙と晴翔がドアの前に立ち、笑いながら話している2人を見つめていた。

第26話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

今回は珍しく星乃さんとバカっプルの2人が話し合うという回でした。これの直前まで全然違う話を書いていたのですがどうも違うと思い、書き直しました。

その話もこれが終わったら読めると思うのでお待ちくださいね〜

それではまた次回、お会いしましょう

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