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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第23話 追求される時間

 翌日、いつも通りの時間に教室に行くとやはり松原がいた。ドアが開かれる音に気がついた彼女は手を振りながら駆け寄ってくる。

 「おっはよう! 孝也君」

 「朝から元気だな」

 思ったことをそのまま口に出しながら、近づいてきた松原を避けて自席に着く。後ろから追いかけてきた松原が机を挟んで孝也の前に立つ。

 「孝也君、ちょっと提案があるんだけど。いいかな?」

 顔を少し近づけて、満面の笑みを浮かべながら問いかけてくる。

 「だめだ」

 何故かわからないが嫌の予感がした孝也は即答した。

 「ええ〜? 断るの早くない?」

 もっとガッカリするかと思っていたが彼女は不満そうな顔をすれど、大して残念がっている様子はなかった。

 「どうせ大したことじゃないだろ。聞く必要がない」

 そういうと松原は得意げな顔で人差し指を立てて横にふる。

 「チッチッチ。孝也君には得しかないことだよ?」

 そう言われると尚更どうでも良くなってしまう。

 「別に興味ないね」

 素っ気ない態度をとる孝也だったがいつも以上に松原もしつこかった。昨日とは全く別人のような態度に少し疲れを感じ始めていた。

 「昨日の方が話しやすかったな……」

 ぼそっと呟くとどうやら彼女にもそれが聞こえていたようで見る見るうちに顔が赤くなっていく。

 「昨日のことは言わなくていいから……」

 急に声が小さくなり少し聞こえづらかったが、どうやら自分の昨日の姿を思い出して恥ずかしくなっているようだった。先ほどとの態度の急変にこちらも少し戸惑う。

 松原の顔は真っ赤になり、黙ってしまう。孝也も話すことがないので教室の中が静寂に包まれる。

 しかし教室のドアが勢いよく開かれ、すぐに沈黙は破られた。

 「よう! 孝也。朝から元気か?」

 「おっはよう〜! たかちゃん!」

 2人並んで教室に入ってきたのは、珍しく早く来た晴翔と遙だった。まだ孝也しか教室にいないと思ったのか2人ともかなり大きい声で挨拶をする。

 またうるさいのが来たと思ったが、2人はそのまま止まってしまう。

 よくよく考えると今は教室に顔を赤くした松原と孝也の2人だけだった。それを見た晴翔と遙がなにを考えるのかは容易に想像がつく。

 松原に関しては2人が来たことに気がついているのかすら怪しい。

 そして2人は目を輝かせて近づいてくる。

 「おはよう、松原さん。まさかこんなに早く来てるなんて思わなかったよ」

 「朝からうるさくしてごめんね〜」

 そして2人の標的になったのは孝也ではなく、松原の方だった。多分孝也が口を割らないことを理解しているのだろう。小賢しい奴らだと思った。

 「え? あ、おはよう」

 2人が来たことを今気がついたらしく、少し赤みが残っている間抜けな顔で朝の挨拶をする。

 顔が赤いことを見逃さない遙はすかさず、松原を問い詰める。

 「由紀ちゃん、顔が赤いけど大丈夫? たかちゃんとなんかあった?」

 遙のその一言でまた松原は顔を赤くする。というか先ほどよりも赤い気がする。

 「え? い、いや……何もないよ?」

 急いで否定するが逆にそれが遙に何かの確信を与えてしまったらしい。そして晴翔は孝也に話しかけてくる。

 「孝也、松原さんと何があった?」

 いつの間にか隣に座っていた晴翔が肩を組んで耳元で小声で聞いてくる。

 もはや何かあったことは確信しているようでいつも以上にウザったらしくニヤついている。孝也は勝手に組まれた肩を外す。

 「何もねーよ」

 そういうと晴翔と遙の2人体制になる。松原の方を少し見るとショートしたロボットのように顔を赤くして止まっていた。遙は彼女からはもう聞けないだろうと判断したらしい。

 「じゃあ2人でなんの話をしてたんだよ?」

 「由紀ちゃんがこんなに真っ赤になっているのはどうして?」

 じっと見てくる晴翔と遙の視線から逃れるために外方(そっぽ)を向く。

 「知るかよ。熱でもあるんじゃないのか?」

 適当に答えると2人でコソコソと話し始めた。

 「絶対知ってるよね」

 「ああ、これは知ってるな」

 どんな話をしているのか内容は聞こえてこないが、どうせくだらないことだろう。それよりもこの間に松原をなんとかしなくては。

 2人がくだらない話に夢中になっているうちに孝也は松原に小声で話しかける。

 「おい、今のうちに自分の席に戻れ。話は昼休みに聞いてやる」

 「う、うん。わかった。じゃあ、また後でね」

 松原はそういうと小さく手を振って自分の席へと戻っていった。

 「あ! 由紀ちゃんいなくなってる!」

 「なに! おい孝也、やりやがったな」

 ちょうど話が終わったらしく、彼女がいなくなったことを孝也の周りで騒ぎ始める。遠くで松原が不安そうな目で見てくる。全部を無視して適当に返事する。

 「別にあいつが勝手にいなくなっただけだろ」

 不満垂れ流しでブーブー言ってくるが聞こえないふりをするが、朝のSHRまで続き、朝なのにかなり疲れた孝也だった。

第23話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

今回は少し早めに更新してみました。理由としたは土日を使ったら意外と早くできてしまった、と言うだけなんですけどね。

読者の皆様は更新は早い方がいいですか? それとも今まで通り21時がいいですか?

その辺の調査したいので感想とかで書いていただければ嬉しいです。Twitterの方でもいいですよ。タグさえついてれば探し出せるはず……(やり方イマイチわかってないですが)

次回の更新は月曜日か火曜日のどちらかです。お楽しみに!

それではまた次回、お会いしましょう

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