第21話 そして現在に
あの日以来、松原は彼の様子が急変したこと理由をずっと考えていた。しかし全く思い当たる節がなく、考えても考えても分からないままだった。
そして松原は考えることをやめて本人に直接聞くという結論に至った。そして彼女は一生懸命、あの男子を探していたが一度も見かけることもなく高校の一年生が終わり、春休みになった。
何回も彼のこと諦めて忘れようとした。でも忘れようとにると逆に常に考えてしまい、彼女の中で忘れられない存在になっていた。
春休みが終わり、始業式の日。高校2年生になって初めて登校する。学校に着くと昇降口にはクラス替えの大きな紙が張り出されていた。多くの生徒が上を向いている。たまに喜んだり、残念がったりしている声が聞こえてくる。
人混みの中、何とか人の間を縫って前に行く。自分の名前を探しているとしばらくして4組の場所に名前があった。
「ここでもクラス全員と仲良くなるために頑張ろ!」
新しいクラスに胸を躍らせながら教室に行く。
ドアを開けると中には既に人がたくさん来ていた。松原は自分の席に向かう途中、どんな人がいるのかチラチラ見ながら歩いていく。
既に何個かのグループが形成されているようだった。見たところ、去年同じクラスだったり、部活の友達で集まってるようだった。
その中に3人で話してるグループがあった。
男子2人に女子が1人。学年でも有名なカップルともう1人は一体誰だろう? 顔がよく見えない。
なぜか彼の顔が気になり、移動して顔を見ようとする。
「由紀じゃん! 今年もよろしくね!」
移動しようと席を立った瞬間、昨年友達になれた人が手を振りながら話しかけてくる。話しかけてくれた子は松原にできた最初の友達だった。だから彼女には嫌われたくなかった。
ここで彼女に返事をしなければ嫌われてしまうかもしれないと思い、歩き出そうとしていた足を引っ込めた。
「今年もよろしくね!」
返事をしながら彼のことはまた今度確認すれば良いかと思った。
それからすぐにクラスで自己紹介があり、顔を確認することが出来た。
気になっていた彼は悩んでいた松原を救ってくれた男子生徒だ。何より同じクラスだったことに彼女は心の中でとても喜んだ。
同じクラスであの時拒まれた名前も知ることができた。
三河孝也君というらしい。あとは彼と仲良くなるだけだと思っていた。
しかし、ついこの間一緒になった日直の時になるまで彼に話しかける機会が全くなかった。
そして現在に至る。
松原の思い出話を聞いて孝也は頭を抱えていた。孝也には全く覚えのないことだったからだ。
自分ではないことを信じ、顔を上げて再確認のためにもう一度聞く。
「本当に俺がそんなこと言ったのか?」
「そうだよ! 孝也くんのおかげで私は救われたんだから」
彼女は身を乗り出しそうな勢いで大きい声を出す。松原の態度からするとどうやら本当らしい。
「そうか……」
孝也はため息混じりに呟く。再び頭を抱える孝也を見て松原はじっと見つめながら問いかけてくる。
「……覚えてないんですか?」
できれば最初に俺が疑った時に気づいて欲しかった、と思う。
「ああ、全く記憶にない」
覚えてないものは仕方ないと開き直ることにした。だが、その答えを聞いた松原は肩を落としてみるからにがっかりしている。
その姿を見て少しだけ罪悪感を感じていた。
「なんか、ごめん」
あまりにも悲しそうにするので思わず謝ってしまった。その言葉を聞いて松原は首を横に振る。
「うんうん、気にしないで。孝也君からしたら大したことじゃないもの」
松原はこう言ってくれるが孝也も人間なので気にするなと言われて「はい、そうですか」と納得できるほど豪胆な性格ではない。
だが孝也にはそれ以上に気になることが一つあった。
「しかし、今の話だと俺を好きになる要素がないと思うんだが?」
「そ、そのことについての言及はしなくていいんじゃないかな?」
彼女は少し取り乱しながら答える。言いたくないと言われると聞きたくなってしまう。
「気になるんだから仕方ないだろ」
そう言うと彼女は大きなため息を吐いた。
「わかったよ! 教えるよ! あの時私の悩みを解決してくれたときから!」
それを聞いて思ったことを口に出す。
「最初からか」
「言わなくていいよ!」
椅子から立ち上がって孝也の言葉にいいツッコミを入れていると
「ちょっとそこの2人、図書館では静かにね」
松原の大きい声のせいで司書の先生に怒られてしまった。
怒るなら俺じゃなくて松原だけだろ、とも些か不満にも思ってが言っても仕方ないので出かかった言葉を飲み込む。
「すみません……」
松原は顔を真っ赤にして小さい声で謝りながら静かに座る。
別にそこは普通の声でいいんじゃないか? と思う孝也だった。
「孝也君て意外にいい性格してるよね……」
テキトーなことを思ってると松原が急に褒めてきた。
「ありがとう」
褒めてくれた感謝を伝えると彼女は呆れているような姿だった。
「別に褒めてないんだけど……」
ならどういう意味なのだろうか? と眉尻を下げるが聞いたら今度こそ答えてくれなさそうなので聞くに聞けなかった。
「もう、私のことは全部話したんだから孝也君のこと教えて」
唐突に無茶苦茶のことを言い出す。様子を見るに何か吹っ切れたようだった。
「まあ、いいか。答えられる範囲でなら」
孝也も散々聞きいてしまったので言える範囲でなら答えてあげようと思った。
第21話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
今回で松原の過去の話は終わりにしようと思っています。もしかしたら何か付け足すかもですが。
生活環境が激変したので更新が週に2回の不定期になりますが、その辺の情報はTwitterとかで確認をお願いしますね
それではまた次回、お会いしましょう
PS:疲れた状態で書いたので結構グズグズだったかもしれませんが、ご了承ください。




