第18話 覚悟の決めどき
考えることをやめて頭の中を空にしていたらといつの間にか昼休みになっていた。晴翔はいつも通り孝也のところまでやって来る。
気力がない様子のそんな孝也を見ていた晴翔がずっと目の前で手を振っていた。少ししてからようやく視界がチラつくことに気がついた。
「何してるんだ? 晴翔」
顔を顰めながら晴翔に聞くと彼は呆れたように話しをする。
「何してんだって……お前がずっとぼーっとしてるから気になったんだよ」
「ああそういうことか」
確かに考え事をしていたからぼーっとしてるように見えていたかもしれない。思考を巡らせ状況を把握し、納得した。
「それでどうしたんだ?」
興味、というよりは今回は心配しているように見える。
「まあ、ちょっと考え事だ」
「ふう〜ん、そうか。それより今日は松原さん、話しかけに来ないんだな。毎日あんなにお前のところに来てたのに今日は一度も一緒にいるところ見てないし。何かあったのか?」
どうも松原の挙動が変だということに気がついていた。昔から晴翔は妙に目敏いやつだった。
「俺が知ってると思うか?」
孝也は平然と知らない言ったが、もちろんそれは嘘で理由は知っていた。多分だが今朝のことが原因だろう。しかしその話をすると晴翔はしつこく聞いてくることになるだろう。そうなれば遙にも話がいくことになるし余計に面倒になる。それを避けるための嘘だった。
「ま、そうだよな。孝也が誰かのことを知ってるとは思えないし」
晴翔も納得しているようだし、これ以上聞かれることもないだろう。
松原が話しかけてこないだけでとても平穏で落ち着いた昼休みが過ごせていた。
昼食を食べ終えた孝也は立ち上がると下の階にある空き教室に移動した。理由は簡単。彼には少し考えなくてはいけないことがあり、賑やかな教室ではそれができないと判断した。
考えなくてはいけないこと、それは松原との約束の場所が図書館だということ、それから星乃をどうやって図書館に来させないか、だ。もしくは松原に図書館以外の場所にしてもらうか。
まず、松原に関しては孝也が近づくと逃げるというこの間とは逆の構図になっており、まともに近づくことができない。というわけで松原に図書館以外の場所を提案するのは無理そうだ。
となるとやはり星乃をどうにかするしかなさそうだ。
孝也はポケットからスマホを取り出すとラインを開き、星乃とのトーク画面を開いた。画面には今朝のやりとりの最後の星乃の『どうしてですか?』で終わっている。
なんていうか、しばらく考えた上で送った。
『図書館で本の整理をするらしいから来るな』
堂々と嘘をついた。顔の見えないメッセージでは嘘をついても対面よりはバレづらいだろと考えた。すぐに既読がついて返事がくる。
『そんな話は聞いてないです』
『そりゃ昨日、星乃がいない時に俺が司書の先生に頼まれたことだからな』
さらに嘘を重ねる孝也。しかし、昨日司書の先生に話しかけられたことは本当だけど。言われたことといえば「最近よく来てくれるね。嬉しいわ」ぐらいだが。星乃がいない時に話してたことなので知らなくて当然のこと。
『三河さんは図書委員なんですね』
『違うがなんか頼まれた。というわけで今日は図書館には来るなよ』
『少し疑問もありますがわかりました』
どうやら彼女もなんとか納得してくれたようだ。取り敢えず、頭を痛くする原因は無くなった。孝也はスマホをポケットにしまい椅子に背を預けた。
そして放課後になった。孝也は荷物をまとめて教室でぼーっとしていると松原が教室から出ていくところが見えた。それにあわせて立ち上がり、教室から出て図書館へと向かう。
図書館に着き、ドアを開けると奥の席に松原が本を読んで座っている。辺りを見回すが誰もいる気配はない。孝也はドアを閉めるとその音で気がついたのか松原が孝也の方を見る。孝也と松原の目が合うと彼女の方からすぐに逸された。少し耳を赤くしているところを見ると緊張してるのようだ。
実のところ無表情の孝也も結構緊張している。椅子を後ろに引いて孝也は松原の前に座る。
ここから覚悟を決めなくてはいけない両者だった。
18話を読んでいただき、ありがとうございます。作者の霊璽です。
更新が遅くなってすみません(時間のことですが)
なかなか宣言通りに更新できないですね〜 今度こそは21時に更新できるように頑張ります。今度の更新は13日の予定でーす。
それではまた次回、お会いしましょう




