叫べ拳銃唸れ弾丸
大人が嫌いだ。自分の好きなものを潰して周囲に溶け込もうとする大人が嫌いだ。オレたち子供、……まぁ未成年だし子供でいいか。子供をナメた目で見てくる大人が嫌いだ。自分にもそんな過去があったから分かる、などとほざく何一つ分かっていない大人が嫌いだ。
そして、今日は久しぶりにその"大人"がオレの家に来るらしい。
遡ること1日前、今日もオレは家の外を散歩していた。この街、北往生市はなかなか退屈しない場所だった。超能力者、魔術師、妖怪、吸血鬼に妖精、なんでもござれだ。オカルトと呼ばれる類のものがここには大体集まっている。ただこの街は地図には記載されていない。正確には、昔の地図には記載されていたが、20年ほど前に政府がこの異常な街を無いものにすると決めたらしい。だから当然、電気もガスも何もない。
そんな街だから散歩をすれば、
「ヴァァァァァッ!!」
「死ねこの野郎!」
何に喰われたのかも分からない理性を失くしたバケモノが襲いかかり、オレも見かけ次第拳で応戦する。この街では、こういうバケモノを狩り収集ボックスにポイすると、飯やら武器やらがもらえる。こうして生計を立てている訳だが、オレはこの生活を結構楽しんでいたりする。
「元気だなァ、クソガキ」
「まだ生きてんのかよ、クソジジィ」
「ジジィじゃねぇ俺ァまだ40だ」
「40はもう初老だっつーの」
このグラサンかけたイヤに細長い初老のおっさんは、家を失くして彷徨っていたオレをこの街に引きずり込んだ張本人であり、オレに住む場所を与えたよく分からないおっさんだ。
「しかしお前、もうあの銃使ってねぇんだな」
「殴ってオワリだし、弾丸入手しづらいしで、もうアレはただの装飾品だな」
「いくらバケモンたぁ言え、頭殴って破裂させられるやつなんて"最強さん"くらいだと思っていたんだかな」
「できるモンはできんだよ」
「ま、別にいいけどよ、じゃな」
やはりというか、こんなおっさんでも武器は使うらしい。
でもこんな街だ。オレがそういうパワー系の能力を持っている、なんて可能性だってあるんだろう。
おっさんと別れてまたしばらくバケモノ狩りをしながら散歩していると、太陽はターンエンド、月のターンとなったようだ。
それは、家に戻ろうと道の角を曲がろうとした時のことだった。
何か途轍もない不快感を感じ、無意識のうちに曲がり角から距離を取っていた。
なんだ、この感じ。なんというか、バグのような、あまりにも歪な存在感がある。戦闘できるよう警戒しながら、角に近づき、覗く。
「ーーーー!!」
黒板を引っ掻いたときのような、そんな甲高く不快な音、いや、ヤツの声なのだろう。声が辺りに響く。つまるところ、気づかれた。ならッ!
「先手必勝デストロイあるのみってやつだッ!死に晒せェェッ!!」
「ーー!ーーー!!」
頭を狙ったオレの拳は虚しく空を切る。正確には、空の前に"ソレが存在しているはずの場所の"という装飾語が付くが。つまり、すり抜けた。どうやらコイツには実体がないようだ。
ならどうしろってんだ、オレは魔術なんて使えないから霊の類はスルーしてきたってのに。何か手段はないのか?思い出せ……!
脳裏にチラリとグラサンの光が見える。いやアンタじゃ、って。……確かあのオッサンはこういう実体のないタイプのヤツらを専門としていた。ならば、その人からもらった武器であれば攻撃が通るかもしれない!
そう結論づけると、腰のホルスターでほとんど飾りと化していた銃を取り出し、一気に半透明野郎との距離を詰め、こめかみと思しき場所に銃口を突きつける。
「これしか手がねぇってのは不甲斐ねえが仕方ねェ!くらいやがれェェェ!!」
バァァァァァン!!!!と、銃はそのコンパクトさに見合わない爆発音を響かせ、自身のバレルと野郎の頭を見事に吹き飛ばしたのだった。
口は悪くても頭は冷静でよく回る、自分をそんなヤツだと思いこんでる変なヤツです。




