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『導かれる者たちの中で 〜レベルを上げて魔王を倒す。それが正しいと、誰も疑わなかった。〜』  作者: 街角のコータロー
第2章

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第9話 : 『選択の自由』

世界は、勇者を守る。


 それはもはや仮説ではない。


 外部からの致命は折れる。

 事故は逸れる。

 確率は安全側へ傾く。


 だが。


 勇者の内側までは、触れない。



 その戦闘は、静かだった。


 中規模の魔物群。


 強度は適正。


 本来なら問題ない。


 だが。


 勇者の剣が、わずかに鈍る。


 踏み込みが、半拍遅れる。


 思考が別の方向へ逸れる。


 “俺が勇者でなかったら”。


 その問いが、剣の軌道を乱す。


 魔物の刃が迫る。


 角度は悪い。


 今度は崩落もない。


 槍も折れない。


 小石も転がらない。


 純粋な一撃。


 当たる。


 浅い。


 だが明確に、当たる。


 聖女の回復が走る。


 賢者の補助が重なる。


 暗殺者の刃が魔物の首を断つ。


 戦闘終了。


 だが。


 暗殺者は理解する。


 今のは。


 補正が“最小限”だった。


 外部要因は介入しない。


 勇者の遅れは、そのまま結果になった。


 死なない程度に。


 だが。


 修正しきらない。


 勇者が選んだ遅れは。


 世界は強制的に矯正しない。



 夜。


 勇者は傷口を見つめる。


「最近、妙に考えちまう」


 火を見つめたまま言う。


「俺がいなくても、回るのかって」


 聖女は即座に首を振る。


「回りません」


 迷いない。


 救う言葉。


 賢者は静かに言う。


「機能的には代替は存在する。しかし君が最適だ」


 理屈。


 冷静。


 勇者は苦笑する。


「最適、か」


 暗殺者は沈黙。


 ほぼ確信している。


 勇者が最適なのではない。


 最適化されている。


 勇者という工程が。


 世界の循環維持のために。


 だが。


 勇者が自ら疑えば。


 最適化は揺らぐ。


 そこだけが未確定。



 魔王城。


「勇者の内面揺らぎ、増加傾向」


 闇宰相が報告する。


「外部補正は維持」


「はい」


「内面干渉は」


「観測されず」


 魔王はゆっくりと歩く。


「世界は工程を守る」


「はい」


「だが部品の自意識までは固定しない」


「そのようです」


 魔王は理解する。


 これが唯一の穴。


 勇者が勇者であることを選び続ける限り、工程は進む。


 だが。


 選ばなければ。


 循環は開始しない。


「余を討たねば、始まらぬ」


 既知の事実。


 だが。


 勇者が討たなければ。


 世界は“次”を作れない。


 魔王は目を閉じる。


 外から壊せない。


 内からしか。


「勇者に選ばせよ」


 闇宰相は問わない。


 方法は一つ。


 対話。


 直接干渉。


 観測を超える。



 焚き火。


 暗殺者は勇者を見ている。


 ほぼ確信。


 言葉は形になっている。


 だが。


 まだ言わない。


 勇者が自ら問いを深めるのを待つ。


 補正は強い。


 だが。


 選択は自由だ。


 勇者が剣を取るのも。


 振るうのも。


 魔王を討つのも。


 討たないのも。


 自由。


 世界は守る。


 だが。


 決めるのは。


 勇者だ。


 暗殺者は静かに目を閉じる。


 次で。


 言葉にする。


 工程の外側を。


 役割のまま。


 自由である方法を。


 静かに。


 確信を持って。



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