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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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黒猫のダンジョン出入口をエルフのダンジョンがあった場所に設置し直した後、その隣にエルフのダンジョンの出入り口も設置した。


黒猫のダンジョン認定後部屋に戻ってすぐにエルフとの繋がりの継続も望み、エルフのダンジョンも探したのだ。


だから今現在聖女様ダンジョン・黒猫ダンジョン・エルフダンジョンと出入り口が3つも並ぶことになり、6畳の裕の部屋の何もない壁は見事にダンジョン出入口で埋まり、必然的に家具の配置も変える事になった。


今は部屋のほぼ真ん中にベットの下に机とクローゼットがある、所謂ロフトベットが置かれている。


ぶっちゃけ少々狭い感じがして心理的にも窮屈だったが、これだったら裕の部屋の壁にはまだ空きがあり、後二つは出入り口設置も可能かなと考えてもいた。


しかし実際の所、ダンジョンを5つも管理するのは難しいだろう。

今でさえ3つを曜日を決め交互に攻略しているが、次の願いまでの予測を立てるのが難しい。

少なくとも後3カ月か遅くても4か月後までに願いの申請を2回はこなしたい。


裕にとって空間の出入り口を新たに作ったり消したり出来る能力と、完全記憶能力の2つは今すぐにでも絶対に欲しい能力だった。


しかし黒猫もエルフも管理者不在の空間を選んでいた事で、裕には空間の正確な成長具合が分からず、尚更にその予測を難しい物にさせていた。


この際比較的願いの申請が早いと分かっている真新しい空間を2つ探し出して攻略するか?と考えては、そうなったら管理が大変だろうとその考えを打ち消すという葛藤をこの数日繰り返していた。


正直な話、真新しい空間がすぐ近くに存在すれば何の問題も無いが、もしかなり離れた場所だったらと考えると、少なくとも出入り口を新しく作り出す能力を手に入れてからでないと安心して探す事もできないと諦めていた。


でも、探し出した空間がたとえどんなに遠くだったとしても帰って来る手段がない訳じゃ無いだろう、ただ時間が掛かり不便だというだけだ。

そして帰って来れさえすれば、この部屋に出入口を設置出来るだろうから何も問題ないだろう。


でも万が一出入り口を元に戻す時点で空間が歪む様な事があったなら、最悪空間から出る事もできなくなると言う事も考えられる。

そんな危険な賭けは絶対にするべきではないだろう。


と、考えてみたり


しかしこのままいつ行われるか分からない願いの申請を待つより、できて間もない新しい空間を手に入れた方が早いんじゃないのか?と考えてみたりしながらベットに寝ころび悶々としていると≪出入り口が上空や海底と言う場合もあるのよ≫と脳内に響いた。


裕は謎空間が地上にしか存在しないと勝手に思い込んでいたが、どうやらそうではないという事実を知り正直かなり驚いた。


黒猫にそう言われてしまうと、安全を最重要に考える裕としては殆ど賭けの様な空間探しは諦めるしかなかった。


(!!!黒猫??)


まったく気配もなくベットに寝転んだ裕の隣にゆっくり歩いて来ると身体を丸め眠そうに蹲る黒猫。


「何で!?」


裕は叫ぶように黒猫に問い質していた。


≪退屈したので少し出てみた≫


黒猫は気怠そうに顔だけを持ち上げて裕をじっと見つめるが、裕が聞きたかったのはそういう事ではなかった。


「だから何でここに居るんだよ」


ここはダンジョンの中ではなく裕のロフトベットの上だ、裕が混乱するのも無理はない。


≪私が管理できる範囲ギリギリだけど問題はなくダンジョンから出る事は可能なの≫


黒猫の答えに、そう言えば管理者が空間から出て攻略者を探すと言う様な話を聞いた覚えもあった様な気がした。


しかし管理者が本当にその存在をダンジョンの外でも維持できるのだと実際に目にして驚いたが、それよりも少し引っ掛かるものがあり思わず問い質す。


「管理者が管理できる範囲って50㎞じゃないのか?聖女様はそう言ってたぞ。ここはあの空間がある場所からそれ以上離れている筈だ」


≪その範囲は管理者の格によって違うのよ≫


「格ってなんだよ。管理者にも能力の違いがあるって事か?」


≪そんな所、それより君が何やら悩んでいる様なので答えようと思って≫


「ダンジョンの外なのに俺の考えている事が通じていたのか?」


≪出入り口に近かったせいもあるだろうけど、かなり強い思念だったと思うわ≫


管理者にも格というきっと裕が考える所のレベルとか能力の違いがあると知った事にも驚いたが、黒猫がダンジョンから出てきた事にもそして口調もすっかりと変わっている事にも裕はあれこれ驚き過ぎてもう何も言えなかった。


≪そんなに悩む必要もないわ、私の願いの申請はもうすぐよ。君の攻略ペースから逆算して、私も簡単に予測できる様になったのよ≫


黒猫の話に裕はなるほどと一人納得していた。


考えてみればこの黒猫とは出来たばかりの空間だった事もあって、その付き合いもそこそこ長く願いも既に5回も叶えて貰っている。


きっとこれが繋がりの深さ絆の深さの作用と言う事なのだろう。


「その格の違いって何なの?」


≪君に理解しやすく説明するなら、この世界に生まれ出てからどの位空間を浄化させたかといった所かしら≫


それってやっぱり管理者のレベルみたいなものかと裕はひとり勝手に納得した。


「それよりダンジョンから出て来て本当に大丈夫なのか?」


≪今は何も問題ないわね≫

黒猫は裕に伝えたい事はすでに伝え終わったとばかりに大きなあくびをしてまた蹲る。


裕はダンジョンに影響がないなら別に良いかと、黒猫がこの部屋をうろつくのを許し、隣に寝そべる黒猫の頭を静かにゆっくり撫でていた。



読んでいただきありがとうございます。

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