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「思った以上に美味しそうだ、人気があるのも頷けるな、うん」
裕は久しぶりに連絡を貰い涼太と会っていた。
家に訪ねて来られても涼太だったら迷惑がらず歓迎するのに、何故か店を指定され待ち合わせてみれば女子が多いお洒落なカフェで、裕はフルーツとクリームがトッピングされたパンケーキを目の前にしていた。
「ここのコレは是非食べてみたかったんだけど、なかなか一人で入る勇気が無くて山伏君なら若いし大丈夫かなって思ったんだ」
涼太はフルーツを使った彩も華やかなちょっとお値段もお高めのパフェだ。
「俺も甘い物嫌いじゃないし大丈夫ですよ。でも何となく意外でした」
裕は本当に嬉しそうにパフェを食べる涼太を眺めながら、女子で賑わうこの店に涼太が違和感なく馴染んでいる事を不思議に感じていた。
(馴染んでいると言うよりも目立たないって感じか?こんな所でもモブ力を発揮できるってある意味羨ましい)
裕は涼太のお陰で自分もそれ程目立っていないのだとは感じていたが、それでも周りの目を気にせずにパフェをほおばる涼太を羨ましく感じていた。
「意外ってこの店のチョイスですか?」
「きっと仕事の話なんだろうと思って来たから、こんなに人が多い店で大丈夫なのかなって」
「そうだね、目立つ行動さえしなければそんなに注目もされないし、第一こういう所で他人の話に聞き耳を立てる人もそうは居ないでしょう」
裕は涼太のあっけらかんとした回答に、男二人でこういう店に入る事自体目立つ行動じゃないのかと思いながらも反論はせずに、裕も黙ってパンケーキをほおばった。
そうしてすっかりと甘味を堪能した二人は店を出て、近くを散策するかのように並んで歩いた。
「玲子さんの問題は片付いたから安心して、もう二度と山伏君に接触する事は無いよ」
涼太はまるでただの業務連絡をするかのように何の感情も見せずに話していたが、裕はどんな風に片付いたのかもう少し詳しく聞きたいと思った。
しかし裕に必要な事ならばきっと涼太なら詳しく話してくれるのだろうと考えて、やっぱり聞くのは止めておいた。
「ああそうだ、課長に海外でも例の空間を探せるのかって聞かれたんだけど、やっぱりちょっと無理かもしれない」
「あれっ、僕はその話聞いてないなぁ。課長とそんな話をしたの?いつ?」
「昨日未調室に呼び出されて、重要事項なので期待していますって言われた」
「いつもの様にこちらからの質問を受け付ける余地も持たせずに話を切り上げたんですね。まったくあの課長には困ったものです。分かりましたその回答も僕の方から課長に話しておきましょう。他に何か課長に話があったら伝えておくよ」
涼太に改めてそう聞かれると、課長に他に聞きたかった事があった様な気もしたが、何故かすっかりとどうでも良くなっていた。
裕は涼太をそれ程に信頼していると言うか、任せておけば大丈夫だと言う安心感があった。
「新しい空間探しは今しているので見つかったら連絡するって伝えてください」
「分かった伝えておく。それで山伏君は相変わらずダンジョンの攻略はしているの?」
「うん、一応高卒認定試験の勉強もしているから、あんまり長い時間は入れないんだけど」
「やっぱり資格は必要だと思うよ、頑張ってね。それで何か新しい能力を手に入れた?」
「まだだけど、次に手に入れたい能力は決まってる」
「ちなみにどんな能力なのか聞いても良い?」
「今の管理者と引き続き繋がれる能力って感じかな」
裕は何の警戒も抵抗もなく涼太に聞かれた事に素直に答えていた。
「何それ、それってちょっと凄い能力の感じがするね」
「そうでしょう、管理者も学習しているって言ってたから、引き続き繋がれればもっと親密になれる気がするよね。いや、といっても別にもっと親密になりたいとか彼女にしたいとかそんな下心は無いんだけどね」
裕は聞かれた事以上を口早に話し、必要も無い事を口走った事に気付き、仄かに顔を赤くして動揺を見せて少し慌てていた。
「ハハハ、相変わらず楽しんでいる様で安心したよ」
涼太は軽く笑ったが、けして裕を軽蔑した様子を見せなかった事に心からホッとしていた。
「ところで新しいダンジョンはいつ見つけたの?やっぱり結構簡単に見つけられるようだね。できればどうやって見つけているのか僕としては詳しく知りたいところなんだよね。それに今の管理者と引き続き繋がれるって事は、消滅後って事だろうから当然引き続き別のダンジョンに入れるって事になるのだろうね。でもその場合場所の問題はどうなるのかな?山伏君がダンジョンまで通うの?それとも管理者が山伏君に寄り添ってくれるの?もし山伏君に寄り添ってくれるなら、これほどスゴイ能力は無いよね。だって絶えず山伏君専用の新しいダンジョンが近場で手に入るって事でしょう。良くそんな能力を次々と思い付くよね、その発想力は本当に感心する位羨ましいよ」
裕は矢継ぎ早の涼太の言葉に顔を青くして何も答えられなかった。
やってしまった感がハンパなかった。
「答えたくない様だから詳しく聞くのを我慢していたけれど、いつか話してくれるのを僕は待つよ。まぁ、それとは別にまたこうして時間を作ってくれる?他にも行ってみたい店がまだあるんだ」
「俺ならいつ誘って頂いても大丈夫です」
涼太の誘いに裕はかなり緊張気味にやっとの事で何故か丁寧に答えていた。
ぶっちゃけもうバレている様でもあるし話しても良いかなとは思っているのだけれど、何故かまだ素直に話せないのだった。
今までずっと秘密にしてきた事も関係していると思っているが、やっぱり心のどこかで誰かにバレたらと言う思いを拭いきれないでいたのだ。
そうして駅まで一緒に歩き、二人は軽く挨拶を交わし手を上げて別れたのだった。
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