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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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「今、大丈夫?ちょっと急ぎで話があるんだけど」


例の空間に入っていたのか電話に出るまでに時間があったので、裕は挨拶を省き急ぎだと言う事を伝えた。


「うん大丈夫だよ。何かあった?」


涼太の声と口調に裕は焦っていた気分が少しずつ落ち着いて行くのを感じていた。

見た目は本当にモブの様で印象が薄いのに、時々鋭くなったり安心させてくれたりと相変わらずの涼太だった。


「今家に居るんだけど、玲子さんが来たんだよ。それで俺の能力についてあれこれ聞かれて、例の空間の場所を教えろって迫られた。教えないと他国の諜報員に接触されて大変な事になるって脅されたんで、涼太さんと一緒じゃないと話せないって返事しておいた」


裕は玲子との話の内容を搔い摘んで話したと言うより、何をどう話したら良いか悩んで覚えている限りを話したつもりだった。


涼太は裕のこういう話を黙って聞きながら途中で的確な質問を繰り入れ、話の内容のすべてを明確に理解する能力に優れていたので、裕はその後も安心して涼太と話した。


そしてちょっと話が長くなったが、多分すべてを話し終わった事を確認して裕は何となくホッとしていた。


「玲子さんの事はちょっと面倒そうだけどでも安心して、山伏君には迷惑かけられないし詳しく話せない事もあるので黙っていたけど、情報は僕達の方にも色々と入っていてこちらも動いているから大丈夫。と言っても不安だろうから話せる所だけ報告すると、例の空間に関してのマニュアルを作っている所。空間の認定システムや管理者との意思の疎通のコツなど、多分他国も詳しく知りたいだろう事を重点にした物なんだけどね。それをこの件に関わっている他国との交渉の要にしようと手を尽くしていて、携わっている人達に言わせるとかなり良いものができそうだと喜ばれているんだ。それもこれもみんな山伏君のお陰だと本当に感謝しているんだよ。そしてすでに交渉は始まっていると言うのに、今さら山伏君個人に接触する意味も無いし、そもそも山伏君を重要視している人は居ないと思うな。それに今では山伏君も未調室の正式な職員だからね、僕達がちゃんと守るよ。だから今回の様に何かあったら連絡だけは忘れないでね。それから玲子さんの事は僕がどうにかするから渡されたと言う連絡先だけ教えてくれる」


裕は涼太に安心して良いと言われた事でもうすっかりとこの話は済んだ気になり、言われるままに玲子から渡された連絡先を教え電話を切った。



しかし数日して課長から連絡があり国家未詳案件調査対策室へ出向くと、例の空間は海外で探す事も可能なのかと唐突に聞かれた。


裕は思ってもいなかった質問に一瞬言葉が詰まった。


きっと転移する時の条件付けとして国の指定もできるのではないかとは思っている。

思ってはいるが実際にやってみない事にははっきりとした返事をする訳にもいかず、裕は分からないと答えるしかなかった。


もっとも聖女様かエルフに聞けば答えて貰えるかもしれないと考え、早速ダンジョンに入ろうと思っていると言うのに課長の話はまだまだ続き、永遠に続くのかと思われた。


課長の説明によると、海外で例の空間を見つける事ができれば、日本としては多大なる恩を売れていろんな交渉が進めやすくなるらしい。


その上に作り上げたマニュアルの内容の確かさも証明もできるので、今回の色々な問題の他にもこれからの外交問題のいくつかも解消されるだろうと言う話だった。

話が長すぎてあまり覚えていないが多分概ねそんな感じであっていると思う。


とても重要な事なので是非期待していますと、課長にいつもの調子で押し切られてしまい裕は本当に困ってしまった。


先に例の空間を探す様に言われていたがその件はどうするんだ?

課長はどっちを先にとかは特別に何も言ってなかった(と思う)し、見つけるのは簡単じゃないと言ってあるんだから、探せるかどうかの返事だけで良いんだよな?


それで万が一海外の空間に転移できなかった場合どうなるんだ?

と言うよりも、課長は海外で空間を探すためには海外に行かないとならないとは考えないのか?


そして仮に空間内転移で海外の空間を見つけられた場合、空間内転移の能力を隠すにはどうしたら良いんだ?


課長はもう既にいろんな問題が片付いたかのようだったが裕は課長のペースにすっかり圧され、聞かなくてはならない事を何も聞いていなかった事に今さら気付き、課長が退出して行った扉を見詰めるばかりだった。


取り敢えず海外の空間へも転移できるかどうかを試し、課長と話すべき内容を纏めて課長のペースに引き込まれないようにしっかりと準備してからもう一度話そうと決めるしかなかった。


そして裕はまた絶対に課長対策専用のボイスレコーダーを買おうと決めたのだった。



読んでいただきありがとうございます

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