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叔母が迎えに来てくれた車に乗って、新しいアパートの建設予定地に出かけた。
裕は助手席に座り、これからどんな所へ連れて行かれるのか楽しみで内心でワクワクしていた。
叔母と久しぶりに一緒に出掛けたと言う事もあるが、裕は何気に叔母の運転で知らない所へ行くのが好きだった。
叔母は裕が子供の頃からいつだって楽しい所へ連れて行ってくれた。
裕の中には家族で何処か楽しい所へ出かけた思い出など無かったが、裕にとって楽しい思い出にはいつも叔母がいた。
それに何れは自分も運転免許を取って、気が向くままに出かけてみたいとも思っていた。
そして連れて行かれたその場所は、今のボロアパートからかなり離れていたが同じ街の中だった。
今のボロアパートの周りは古い家が多く林や畑にも近く辺鄙と言うイメージの場所だったが、ここはギリギリ閑静な住宅街の一画と言った感じだった。
辺りには小奇麗な新しい家が多く立ち並んでいる所を見ると、新しく開発された住宅街なのだろう。
土地もそこそこに広く敷地面積いっぱいにアパートを建て、コンクリートを打った駐車場も併設するらしく、少なくともここでは草むしりに悩まされる事は無くなりそうだった。
3階建ての1階は今のアパート同様1Kと管理人用住居、2階と3階は2DKの作りにすると説明されたので裕は特別に管理人室などいらないと主張した。
「俺一生ここで管理人する気無いよ。勿体ないし俺も今と同じで良いよ。だいたいさぁ、家賃無しだけでも有難いのに俺にこれ以上重い恩を背負わせないでよ」
裕は実際の所今のままダンジョンを諦める事になったら、今まで稼いだお金を切り崩しながらここで細々と管理人やるのも良いとは考えているけれど、広い部屋なんて掃除も大変だし必要ないと思っていた。
それにあまり待遇を良くされると管理人業務に手を抜けなくなるし、叔母に負担ばかりかける様で申し訳なさが大きくなってしまうと思っていた。
「裕がそんな事言う様になるなんて思わなかったわ、叔母さん嬉しくて泣いちゃいそうよ」
叔母は裕の話を聞き、大袈裟にわざとらしく泣く振りをしてみせるので、裕は冷めた目でその様子を見ていた。
「じゃぁさぁ、3階に私達の住居用の部屋を作ってまた同居しようか?そうしてくれると私も色々と助かるし」
「今住んでるマンションはどうするんだよ」
「誰かに貸すか売っても良いしどうにかするわよ」
「そんな事よりさぁ、お金大丈夫なのこんなの建てて」
「そんな事って何よ。私は裕とまた一緒に住みたいの。そしてできればここを裕の新しい実家にしたいのよ。お金なんてちゃんと働いていればどうにでもなるわよ」
裕は叔母がそんな事を考えてくれていたのかとしみじみと嬉しくなった。
家族とは名ばかりのあいつらと違って、叔母は本当に自分の事を思ってくれているのだと改めて実感していた。
(まあ、最悪叔母がお金に困ったら今なら少しくらいは力になれるしな)
裕の隠した現金は実はギリギリ5000万円を超えていた。
新しいアパートが出来上がりここに引っ越すまでこれから90日位はあるらしいから、その間あのダンジョンで後どの位稼げるのか分からないが、最後までやれるだけやってみようと裕は強く思っていた。
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