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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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「そのアパートやっぱり売る事にしたわ」


叔母から電話で知らされた裕は、いよいよかとまるで死刑宣告を受けるような気分で次の言葉を待った。


あれから時間を見つけてはダンジョンに潜っていたけれど、いまだに次の願いを叶えられてもいなかったし、まだ5000万円近くしか稼げていなかった。


何の目標も達成する事ができずにいる今、このアパートから離れると言う事はダンジョンを諦めると言う事で、裕が夢見ていた働かずに暮らして行ける人生はまず無理になったと言う事だ。


もっともこのダンジョンを見つける前の事を考えたら、5000万円近くのお金を手に入れられただけでも裕の人生としては少しは変わったとは思える。


「それで新しくアパートを建てる事にしたから、そこで引き続き管理人する気はある?」


叔母の思ってもいなかった言葉に裕の気分は少しだけ上向いた。


「良いの?」


「勿論よ。それで取り合えず新しいアパートが建つまではそこに住んでても良い事になってるから、それまで変わらずに管理人業務よろしくね」


「ああ、任せてよ」


叔母は長くこのアパートに住む金井さん(おばあちゃん)達の事を心配し、引き続きこのアパートに住まわせるか新しく自分が建てるアパートに越すまで待つかの交渉に勝ったと話していた。


(そりゃそうだよな、あの年で仮に似た様な家賃のアパートを探すってやっぱり大変だよな。って事は、叔母さんは金井さん達を新しいアパートに同じ様な家賃で住まわせる気なのか?それって大丈夫なのか?)


裕は人が好過ぎる叔母が心配になったが、思った以上に高値で買って貰ったからそこは大丈夫だと話していた。


そして結局初めに話を持ちかけて来た中国系の企業に売る事にして、話としては売買契約書に判を押すだけの段階になっていると言う事だった。


裕は話を聞きながら何だか不安を覚えずにはいられなかったが、それよりも少しの間とは言え自分の首が繋がった事を心から喜んでいた。


まだダンジョンに潜っていられる。


そう思うと叔母の事を考えて抱いた不安よりも希望が見えた様な気分の方が上回り、その間に次の願いが叶えられる様に頑張るしかないと改めて心に強く思う。


そして明らかなカウントダウンが始まってしまった今、今まで以上に気を引き締めてスケジュールも見直すかと考えていた。


「それで予定としてはいつ頃になるの?」

裕は新しいアパートが建つ予定を聞いてみる。


「急いで貰う事になっているから予定としてはだいたい3カ月位かしら。次の休みに予定地に最終確認に行くけど裕も一緒に行く?」


「行く!」


裕としても新しく建つと言うアパートが何処にどんな感じで建つのか大いに興味があった。


それに最悪引っ越すまでに少しでも多く稼げば、細々と管理人業務を続けるだけで生活して行けるかも知れないと思うと、やはりどんなアパートが建つのか知りたいのは確かだった。


しかし同時にそれだといつまでも叔母に頼るだけの人生の様で、少し情けない気もしていた。


(まぁ、最悪の場合なんだけどな)


裕は自分で自分にそう言い聞かせながら、叔母と予定のすり合わせをするのだった。



読んでいただきありがとうございます

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