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建物は白い不定形で、背後には小高い丘が緑に覆われて見降ろしていた。
パーキングエリアの向こうの本線越しの反対側にも、やはりいくつか小さな丘程度の山がある。
店内は狭いけれど、それほど人はいなかった。カウンター席もあって固定された丸椅子の一人用テーブル席も並んでいる。その中に少しあった四角いテーブル席に、三人は席を取った。
「まだ十一時か。昼にはちょっと早いかな」
比企がスマホの時計を見ながらつぶやくと、安達が比企を見た。
「いや、腹減った。寺島は?」
「俺も」
「実は俺もだ」
比企も賛同した時点で食事をすることになった。
すぐにチケットの自動販売機に言っていろいろと物色したが、翔はビッグチキンカツカレーが目に入った。
「千円以上か。ま、いっか」
蓮田と違ってここは現金のほか仕える電子決算は一種類のみで、翔が使っている電子マネーとは違うので仕方なく現金を入れ、ビッグチキンカツカレーのボタンを押した。
安達は海老天丼、比企はスタミナ丼のチケットを購入していた。
ここも同じようにそのまま席で待ち、チケットの番号を呼ばれるのを待った。チケットを購入したその時点で、すでに購入情報は厨房の方へ行っているようだ。
時間をかけていろいろ話ながら食事を楽しみ、十二時過ぎには店を出ることにした。
「福島西インターまであと十分もかからねえ。ひとっ走りだ」
とりあえず高速を降りたら、あとは必要に応じてどこででもバイクを停めて今後の行程を話し合うこともできる。だが、基本的に福島西インターからは磐梯吾妻スカイラインを走ることになっている。国道115号、すなわち土湯バイパスでも目的地には着くことができ、むしろそっちの方が近道なのだがなにしろおもしろみがない。
ネットで調べた情報ではあるけれど、スカイラインの方がダイナミックな景色とツーリングの醍醐味があるとあったからだ。
福島西インターまではほとんど人工の建造物は見えない自然の中を高速は進み、途中に短いトンネルもあった。
やがて視界が開けて田園地帯ののどかな風景の中を走るとすぐに、「福島西インターまであと2キロ」の標識があった。
すぐにあと1キロ、あと500mと近づいていき、ようやく出口との分岐点となった。
三台はその出口へ向かう進路へ進むと道は大きく右へ旋回して、本線の下のガードをくぐって一度本線の右側に出た。すぐに左に湾曲して料金所だ。
料金を支払ってゲートをくぐると、いよいよ一般道になる。
出たところで、三台は一度停まった。
「寺島、本当に大丈夫か?」
安達が心配そうに翔に聞く。
「スカイラインに入ってしまえば道形だけど、問題はそこまでたどり着けるかだ」
翔は笑った。
「大丈夫。しっかり調べてある。ナビにも入れた」
今度は翔が先頭を走る。まずは料金所から片側二車線の国道115号、つまり福島西バイパスを「猪苗代」と書かれた方へ左折する。すぐに、先ほどまで走っていた東北自動車道のガードをくぐる。あとはひたすらまっすぐだ。
道の左右にはどこまでもトチノキの街路樹が続くのが見事だ。地方都市特有のまばらに民家のある住宅街だ。畑も時々あったりする。
交差点もkじゃなり広々としていて、別の土地に来たなと実感する。やがて、道の左側は水田が広がるようになった。
交通量は結構多い。だが片側だけでも二車線あるので 渋滞するようなことはなさそうだ。
道の両側は水田のほかは、民家よりも大規模な作業所、車関係の量販店、ガソリンスタンド、などが続くようになったが、いずれも平屋造りだ。
だいぶ走ってから「猪苗代湖は直進、磐梯吾妻スカイラインは右折」と青い標識がある交差点に差し掛かった。ここを間違えたら大変なことになると、翔は緊張の一瞬だ。
久しぶりの数階建ての建物となる大きな病院のあるその交差点の手前で、翔は左手のハンドサインで後ろの二人に右折する旨を告げた。
右折した道が県道126号だが、トチノキの街路樹はこちらでもそのまま整然と続いていた。ただ、交通量はぐっと減ってきていた。
長い橋で川を渡ったころから、両サイドの建造物も好きう失くなってきた。ときどきリンゴなどの果樹園もある。ここがフルーツラインと呼ばれている道らしい。
そこをまただいぶ走って標識があり、左折すれば磐梯吾妻スカイラインの文字に、翔は走っている道が正しいことを知った。
福島西インターからここまで、おそらく十分はかかっていないだろう。このガソリンスタンドとJAのの産物直売所の立派な建物に対角線に挟まれた角を左折すれば、いよいよここから県道70号、すなわち磐梯吾妻スカイラインだ。ここからはもうトチノキの街路樹ともおさらばだ。
スカイラインといってもまだこのあたりは畑と民家の間を走る平坦な道で、観光農園や果実の直売所などもよく見かける。だがこれから、行く手をふさぐように横たわる山脈を越えていくことになるようだ。
もうあとはひたすらまっすぐ走り、「高湯温泉まであと6.5キロ」の青い看板をちらと見たあたりから道全体が大きく右にカーブし、すぐにヘアピンカーブに左に旋回してすぐに右に旋回。そのあたりから、左右は鬱蒼とした緑に覆われるようになった。
道は確実に標高を増していく。道幅もこれまでよりぐっと狭くなった。翔は4速から3速にシフトダウンして、登り坂に備えた。後ろの二人もそうするはずだ。
もうすっかり山道で、右を見ると崖の下を走っているようだが、左は逆に木々の間から向こうの山との間が下に見え、どんどん標高が高くなっていっているのを感じる。
時には左右から木立が覆いかぶさってきているように感じる場所もあり、またやはり左右とも背の高い杉の林が続いていたりする場所もあった。
しばらく行くと山の中に旅館が立ち並ぶエリアがあり、そこが先ほど看板が出ていた高湯温泉らしい。
右に旋回してすぐに左にヘアピンにカーブする、そんな状況が何度か繰り返され、そのたびに確実に標高は上がっていた。
スカイラインの入り口からかれこれもう三十分も走っているだろうか、時々は向こうの山の手前の下界が見下ろされたりする
そしてある右カーブを曲がったとき、景色が一変した。ものすごく視界が広々と開け、翔は走りながらも「おお」と歓声を上げた。




