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ソルティ・レモネードと白い夏  作者: John B. Rabitan
マリンブルー
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33/80

 ランドマークタワーに隣接するランドマークプラザは、五階建てのかなりの規模のショッピングモールだ。

 中央通路の上は吹き抜けになっていて、各階でその周りにさまざまな店がひしめき合っている。

 今、かけると陽子が手を取り合って歩いている一階にある店はほとんどがレストランだ。中華、洋食などさまざまで、全国的に有名なチェーン店も多い。ファーストフード店の姿もある。


 「どこ行くの?」


 陽子が聞いた。実は翔はまだ、陽子に行先を告げていない。


 「かわいいアート・キャンディ・ショップがあるんだ。名前は『アリスの家』」


 「なんでそこに?」


 「俺の幼馴染がバイトしてて、どうしてもよっぴーを見たいっていうから連れてきてほしい言ってリクエストがあったんだ」


 「幼馴染って女の人?」


 キャンディ・ショップで働いているとなると、あまり男は想像できないだろう。


 「一応。でもただの幼馴染だよ。幼稚園の時から高校までずっと一緒で家も近く」


 「え? アニメとかだと、そんな人とある日急に恋が芽生えてくっつくなんてあるじゃん」


 陽子はにやにやしながら横を歩く翔の顔をのぞきこんだ。


 「何か心配してる? そんなのだったらよっぴーを見たいっていうわけないじゃん」


 「そうかあ」


 「しかもあいつは彼氏いるし」


 翔は千恵の彼氏の大学名を告げた。


 「え? 私がダンス部の合同練習で行っている大学のライバル校じゃん」


 「そういえば前に大学の先輩に連れられて銀座に飲みに行ったら、ちょうどその日が大学野球でその二つの大学の試合の夜で、そんな夜の銀座っていえばその大学の学生であふれてるのに、何を考えたんだかあっちの大学の学生がのこのこ来てて、路上でトラブってたよ」


 「見てたの?」


 「先輩なんか口ポカーって開けて」


 陽子はそれが受けて笑った。


 「それでその先輩、翌日から入院しちゃった」


 「ええ?」


 陽子は笑顔の中にも少しだけ心配そうな顔をした。

 

 「けんかを見てただけで?」


 「いや、実際は入院の原因はそれとは関係ないんだけど」


 翔もまた笑った。


 本当はこの日は、翔は自分の家に来ないかと陽子を誘っていた。

 陽子の存在は親にも薄々ばれていたようだが、いちばん興味津々なのが妹の由佳だった。

 リークの経路はほぼ見当がついている。これから会いに行く千恵に決まっている。しかも、あれほど口止めしておいたにもかかわらす、そんな口止めは効果なしだった。

 だが、陽子はまだ怖いといった。翔の親や妹に会う自信がないというのだ。

 それならばせめて、同じく陽子に会いたがっている千恵に会わせることにした。

 

 「というわけで、俺の幼馴染と会ってくれる?」


 「うん、いいよ」


 陽子はケロッとして言った。


 「その店、キャンディだけ?」


 「グミも有名らしい」


 「わあ、グミ大好き」


 陽子ははしゃぎ始めた。

 店はすぐに見つかった。レストランとレストランに挟まれて、小ぢんまりとその店はあった。壁やドアはなく、売り場全体がオープンなスペースだ。

 色とりどりの多くのキャンディ、グミ、マシュマロ、キャラメルなどが商品棚にうまく飾られ、見ているだけでも楽しそうだった。

 大学の学祭の模擬店のような雰囲気もある。


 「ああ、いらっしゃい」


 翔たちの姿を見ると、エプロン姿で接客していた千恵が、接客を終えてニコニコして近寄ってきた。


 「よお、元気か」


 翔はそう言いながら、陽子の手を握ったまま店内に入った。


 「あなたがよっぴーちゃんね。かっわいい。いつものろけ話ばかり聞かされてるよ」


 「こちらが幼馴染の松澤千恵」


 陽子にも知恵を紹介した。


 「こんにちは」


 陽子もニコニコしてあいさつしたが、口数は多くはなかった。


 「なあ、なんかくれよ」


 翔が千恵に催促するように言った。


 「わかったわかった。二人にプレゼントするから、好きなの選んで」


 その間、接客はもう一人の女子高生と思われるバイトの子に任せきりの形になっていた。

 翔と陽子はあれこれ相談しながら、結局は陽子が気に入ったグミをひと袋選んだ。千恵はそれをレジに持って行って自分で会計し、自らのスマホの電子マネーで支払いをして渡してくれた。


 「じゃあ、サンキュー、もらっていくね」


 「気を付けて。お幸せに」


半分からかうような口調で、笑って千恵は言った。


「せっかくだから、みなとみらいの公園、行こうか」


「うん。つれてって」


「めっちゃうれしそうだけど、公園が? それともグミが?」


「両方」


高らかに宣言して、陽子はまたけらけら笑った。


二人はランドマークプラザの奥の方へと歩いた。

一階はまるで地階のような感じを受ける。しばらく行くとエスカレーターがあったので、翔は陽子と手をつないだまま二階へと上がった。一階はこのままいくと突き当たってしまうからだ。

 二階のいちばん奥で外に出るとそこは一見公園のようなデッキとなっていて、ジェットコースターのレールを模したのか巨大な知恵の輪かと思われるようなモニュメントがあった。すぐに次の建物であるクイーンズ・スクエアの入り口となる。

 内装は白で統一され、ランドマークプラザのようなショッピングモールではなく、お洒落なカフェ、ブティック、コンビニ、時には銀行などがあったりする。

 そこを通り抜けて再び外に出て、デッキの上の通路を歩く。正面右手には金融センターのビル越しに、帆船の帆をかたどった巨大な半円形のグランド・インターホテルがそびえている。右を見ると本物のジェットコースターの上に巨大観覧車が間近に見えた。

 やがてパシフィコ横浜のゲートをくぐり、国立大ホールの脇のデッキの階段を降りると、そこは広々とした芝生が広がる臨港パークだ。

 港に面した公園としては山下公園と同じだ。かなりの人の出はあるけれどそれほど溢れかえっているわけではなく、落ち着いた雰囲気だった。

 とにかく芝生が広がっているので、木立の多い山下公園に比べてとてつもない開放感がある。

 港に面した部分は岸壁ではなく、コンクリートではあるけれど自然の砂浜を模したようにだんだんと低くなり、ふちは海面の高さに近くにまでなる。海との間は低い鉄パイプの手すりで隔てられているだけだった。

 二人は海に向かった段差に腰を下ろした。

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