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Bar pomegranate  作者: 裕澄
44/48

3年

ユウがBarを辞めたあの日から、3年。

俺も含め、

Bar()は変わらないし、

あの空気感はすっかり、俺の居場所になっている。


カズヒコさんは、いつの間にかpomegranateのオーナー代行を俺に任せ、ブルーセカンド(劇団)の方も3年前よりは、顔を出さなくなった。


劇団でも、【副座長】なんて、肩書きが出来たのもあり、いつまでもMix_1と関わらない事はできない。と思っていた。


3年間で全国的な有名劇団となった、

Mix_1は普段劇団のメンバーで、役者達エキストラまでを、カバーするらしい。


でも、今回のドラマでは、外部の劇団や俳優も出すという試みをしているらしく、

丁寧かつ業務的な【各劇団座長・副座長様宛

Mix_1製作ドラマのエキストラ募集のお知らせ】というメールがMix_1サイドから、劇団のメールフォームに届いていた。


そのメールには、

【脚本・演出はNebelとなっており、皆様のお力をお貸し頂きより良い作品に、仕上げたいと思っております。】と書いてあった。


このメールを見てすぐ、カズヒコさんに「俺に行かせてください!」と電話をしていた。

経験を積ませてやりたい劇団の若手も、沢山居るがどうしても、ここは俺が行かなきゃならない。と思ってしまった。


この話を店で話したことがあり、トシユキさんは

「ケジメ付けに行くなんて、お前らしいな、胸はって行ってこい。仕事はオーナー代行のサブである、オレに任せろよ。」と言われ、

マキさんとユキコさんにも背中を押され、今ドラマの撮影現場に来ている。


このドラマは、ラブストーリーで俺が出るシーンは、Barで主人公にヒロインが告白をする前の食事のシーンで、

もちろん台詞(セリフ)はない。いわゆる、その他大勢のお客さんの役だ。


有り難いことに、カメラにはギリキリ、映る場所の位置みたいで、スタッフさんがこちらにも、細かな指示をしてくれる。(後ろ姿のみ映るらしい)


それにしても、バーテンダー役のエキストラがリハーサル中ずっと、自分が目立とうとする動きをしている。

内心俺は、「俺の方が上手くできるな。」と思っていた矢先、


「なぁ、バーテン役のエキストラさん。アンタさぁ。ウチの脚本ちゃんと読んでへんやろ。自分ばっかり目立とうとして、主役食う演技されるの、めっちゃ困るねんけど!」と、イライラした口調のユウが立っていた。


「ユウ、ちょっとは我慢せーよ。それに、そういうのは演出兼監督のオレの仕事やん。まぁ、えぇけど。」と、アキラさんが諦めたように、喋りかけた。

Nebelの中でも、ユウとアキラさんの2人は、ヒットメーカーコンビと言われている。

相変わらず、ユウはメディアへの顔出し出演は、していないらしい。


「残念やけど、脚本家がお気に召さへん様やから、他の人と変わって貰うしか無いわ。残念やったな。

背格好的に、他のエキストラ()でカバーするから。」と、アキラさんは、テキパキと他のスタッフに指示を出しはじめた。


「後ろ姿しか映ってへんし、背格好もおんなじ位やから、カウンターに座ってるスーツのエキストラさん。バーテンダー役変わってくれへん??」と、アキラさんが俺を指名した。


「えっ!?」と、俺がアキラさんの方を向くと

「嫌やったら、えぇねんけど?台詞一言だけあるし、どうする?」と、アキラさんはニコリと笑った。

「いいんですか??俺で。」と俺が聞くと

「じゃあ、決まりやな。衣装さん。スーツのエキストラさんと、バーテンのエキストラさんの衣装チェンジさせて。」と、衣装さんに更衣室まで連れて行かれ、

俺的には、すっかり着なれたバーテンダーの衣装に袖を通した。


その後は、無事にその撮影シーンは終わり、

他のエキストラと休憩していると、


「エキストラの皆さん、御協力有難うございました。これ、ウチらNebelからの差し入れやから、食べて帰ってください。」と、温かい有名店の豚まんが振る舞われた。


ユウに少し近づこうとすると、


「ユウさんっ!さっきほんとに、怖かったっすよ。

久しぶりに、怒ってるユウさん見た気がします…。」と、ユウがドラマのスタッフらしき人と喋っていると、


「怖いとか、あんまり言わんといてよ。また、メンバーから姉御ってからかわれるやん。」と笑顔で話している。

「それにしても、あの途中で交代したエキストラさん、ほんとにバーテンダーに見えましたよね??」と、スタッフさんがニコリと笑った。

「ホンマやなー。あぁいうの見極めるのアキラって、めっちゃ鋭いねん。この人やろ??」と、少し遠くで話すタイミングを見計らってた、俺の腕を引き寄せた。

「そーですっ!この人ですよっ。

さっきは有難う御座いました!引き受けていただいて。」と深々とお辞儀をされてしまった。


「ちょっと、この人と2人で喋りたいねんけど、えぇかな??」とスタッフさんにユウが目線を送るとさっきまで喋っていた、スタッフさんはどこかへ行ってしまった。


「…で、久しぶりですね。マサヤさん。

まさか、マサヤさん自身がエキストラに来るとは思ってませんでしたよ。

ウチらのMix_1に来る気ぃ、ありませんか??

マサヤさんの才能やったら直ぐにでも、舞台の主演とかなれますよ。

高待遇やと、おもいますけど??考えませんか?」と、ユウは手を差しのべた。


「…久しぶりに会って、

誘ってくれてるのは有り難いけど…

俺は、守らなきゃいけないんだ。Bar()とあの劇団は。俺の居場所だからな。」

と、俺はユウの差しのべた手を断った。

END


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