キングVSユウ 2回戦
ユウが戻って来るまで、ひとりでカクテルを作っていると、
比較的簡単なオーダーが多い事に気付いた。
「この数時間で、だいぶ様になってるじゃないか。」と、キングさんが空いたグラスを持って戻ってきた。
「そうですかね??」と、空いたグラスを受けとると
「あぁ。短時間だけど、マサヤに任せてみて正解だった様だな。」と、安心したように戻って行った。
「オーダーは、今のところ…全部作り終わったから、洗い物でもするか…」と、呟くと、オーダーメニューを完成させたユウが、
「これ持って行って、ちょっと話したら戻ってきますね。それまでよろしくお願いします。」とニコリと笑ってフロアへ行ったので、俺は制服の袖を捲って洗い物を始めると…
「いらっしゃいませ~♪って、なんで表から、来てるんですかっ~!?」と、びっくりしたマキさんの声がキッチンまで、聞こえてきたので、フロアを覗きに行くと…
「…オーナー。開店中に出勤するなら、裏口からって、決まりじゃ無いですか。」と呆れた声でキングさんがオーナーと喋っている。
「だってまだ、22時半前だろ??だから、客って訳だ。」と悪びれない返答が帰ってきた。
「流石だよね、ウチのオーナー。
こうやって、言い負かしちゃうんだからさ。」と、ユウは呑気にお客さんと話している。
「ユウ。オレは、言い負かされてるつもりは、無いんだが??」と、キングさんVSユウの図式がまたもできている。
今回で今日、2回戦目だ。
なんだか、嫌な予感が…するような…。
「じゃあ、誰かにジャッジして貰いますか?? おれとキング、どっちが合ってるか。」と、ニヤリとユウがこっちを向くと、全員の視線が俺の方へ向いていた。
「って、ワケで。
まぁ。正式には、来月の記念イベントからだけど、新しいメンバーの マサヤさんに決めて貰いましょうよ。」と
やはり、嫌な予感は当たった様だ…。
ユウに促されキッチンから出ると、何故か、フロアのセンターの方へ誘導された。
「待てよ。マサヤとユウは、昔からの知り合いなんだろ?? ユウに有利になる人選してるだろ??」と、
演技なのは分かってるが、怒っている様なキングさんを見ると、
『この人を怒らせると凄いことになるんだろうな。』と、実感できる。
「そんな、アンフェアな事出来る人じゃないですから、マサヤさんは。」
と、ピリピリムードが漂っているが、お客さん達は、やっぱり楽しんでいる。
「それは、俺も保証するよ。マサヤは、そんなヤツじゃないよ。」と、カズヒコさんも参戦している。
「さーてっ!!ジャッジマン マサヤくんっ!! ジャッジをどうぞっ!!」マキさんは、ノリノリで出てきた。
「ノリノリじゃないですか…。あーぁ。なんか、マキさんがでしゃばって来たせいか、冷めましたよ。おれ。」と、背伸びをしながら、ユウが気だるそうに言うと
「あぁ…。そこにはオレも同感だ。」とキングさんもストレッチをしながら、呟いた。
「じゃあ、一時休戦って事ですね。」と俺が言うと
「あぁ。」と二人から返事が帰ってきた。
「あっ。でも、俺は今後とも、どっちにも付きませんからね??」と、ニコリと笑って洗い物の続きをするため、キッチンへ戻った。




