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覚醒
ふわりと浮いた、という表現ではどうにも俗っぽい。
浮くなんてもんじゃない。もっと神聖な、神々しい何かに私は包まれていた。
その結果として、私は浮いただけ。
体験、ではない。感覚。
私の意識は宙を飛び、天井を通り抜け、屋根を通り抜け、真っ暗な夜空へと解き放たれた。外は暗い夜の世界。それでも、私の視界は金。おびただしいほどの光の塊。
それが、自分が発しているものだと認識すると、自分の中ですっと何かが目覚めた気がした。
はっとする。これは、まさか。
……だとしたら。
考えている暇などない。私の体はまっすぐ地上へと降りる。音が立つほど早く、それでも動きは滑らかに、大きくて長い、伝説の生き物となる。
『――龍、あんたは龍だよ』
そう囁く、母さんの声。懐かしいその声、あたたかいその声、誇らしいその名前。
蛇ではない。獅子ではない。それよりももっと強い、もっと凛々しい、もっと神聖な。
龍、という生き物。
神として崇められ、水を、火を、大地を守る、伝説の神獣。
あんたは龍だよ。その言葉が、今なら分かる。それは名前のことなんかじゃない。まるっきり、自分も本性を表すもので。
母さん、私は龍だったんだね。初めて気づいたその意味に、少しだけ涙がにじんだ。




