第4話 同じ空、違う景色
駅舎の窓の外では、夕暮れがゆっくりと夜へ変わっていた。
四人はしばらく黙っていた。
誰も次の言葉を急がない。
静かな時間だった。
やがてオカリナ吹きが立ち上がり、窓の外を見た。
丘の草原。
流れる風。
遠くの町の灯り。
少し前まで見ていた景色と何も変わらない。
それなのに、どこか違って見えた。
「不思議だな。」
オカリナ吹きが言う。
「何が?」
フルート吹きが尋ねる。
「景色は同じなのにさ。」
彼は窓の外を指差した。
「俺にはただ綺麗な景色に見えてた。」
そしてバイオリン弾きを見る。
「でも君は、その景色を音楽にしようとしてる。」
フルート吹きを見る。
「君は、その景色が変わっていく瞬間を見てる。」
最後にピアノ弾きを見る。
「君は、その全部がどう繋がってるか見てる。」
ピアノ弾きは静かに笑った。
「君だって見ているじゃないか。」
「え?」
「私たちには見えない景色を。」
オカリナ吹きは少し首を傾げる。
するとバイオリン弾きが言った。
「鳥になったらどんな景色が見えるか。」
フルート吹きが続ける。
「馬になったら風をどう感じるか。」
ピアノ弾きが頷く。
「そういうことを考える人は、あまりいない。」
オカリナ吹きは思わず笑った。
「変なやつだからな。」
「そうだな。」
バイオリン弾きも笑う。
「変なやつだ。」
四人は声を上げて笑った。
笑い声が古い駅舎に響く。
そして気づく。
誰も間違っていないのだ。
世界を味わう人もいる。
世界を形にする人もいる。
世界と共に流れる人もいる。
世界の繋がりを見る人もいる。
同じ空の下にいても。
同じ風を感じても。
人は少しずつ違う世界を見ている。
だから面白い。
だから出会う意味がある。
やがてピアノ弾きが鍵盤に手を置いた。
一音。
静かな音が響く。
そこへバイオリンが重なる。
フルートが風のように流れる。
そして最後にオカリナが鳴る。
四つの音は違う。
けれど、不思議とひとつだった。
窓の外では夜が始まっている。
星が一つ。
また一つ。
空に灯る。
演奏が終わった時、誰も拍手はしなかった。
ただ静かに笑った。
それで十分だった。
同じ空を見上げながら。
それぞれ違う景色を見ていることを知ったから。
そして、その違いを好きになれたから。




