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闇の世界のプチバトル大会

闇姫が率いる闇の世界の闇の国。

そこで、とあるイベントが開かれようとしていた。



闇の世界のモンスターの一人…黒い人型モンスターが、街に設置した特設リングの上で頭を搔いていた。

その頭からは紫の触手が無数に生えている。

「うーん。参加者いねえな」

彼の名はドルド。見ての通り、この闇の世界で盛大なバトル大会を開催しようとしていた。

だが参加者が現れず、リングは質素なままだった。戦士のいない戦場など、花のない花壇のような物。

ドルドは、本日三回目となるスカウト活動に向かおうとしていた。


そんな時…彼の足元から、一つの声が聞こえてきた。

「おい、野郎。暇つぶしに良さそうなもん作ってんな」

足元…低い位置からの声に、ドルドは油断した。子供が声をかけてきたのかと思ったのだ。やたら声は低いが。

「何だ!ガキの来るところじゃね…」



…下を見ると、黒い球体に四本の大きな腕を生やしたモンスターが立っていた。得意げな笑みを見せるその顔は、黄色の眼光を放つ。


ドルドは青ざめる。

「…!?バ、バ、バッディー様ぁーー!?!?」

彼が即座に土下座したのも無理はない。このモンスター、バッディーは誰あろう、闇姫軍最強の戦士の一人なのだ。

「何を作ってるんだ?俺より千歳年下のガキ?」

四本腕をそれぞれ組ませ合うバッディー。ドルドは冷や汗を流しながら、無理に笑顔を取り繕う。



事情を聞いたバッディーは、どこか感心したように笑う。

そして…リングにあがり、腕を振り上げる。

「闇の世界の勇士達よ、ここに集え!!この俺、バッディーを相手して見事倒せたら、闇姫軍四天王の地位をくれてやる!ついでに今日の俺のオヤツのチョコもくれてやる!!」

その声は闇の街に響き渡る。歩道を歩いていた悪魔や魔物達は勿論、建物の僅かな隙間にある路地裏にさえ飛び込んでいった。



…数秒後。


雪崩のような足音が響き渡り、沢山の戦士が集まってきた!

「四天王の立場だとおお!?!?」

「闇姫様のおそばでお仕えするチャンスだああ!!」

「今日のオヤツのチャンスだあああ!!!」

流石、闇姫軍最強の男だった。ドルドのこれまでの宣伝も、バッディーのたった一声に打ち負かされてしまった瞬間だ。

幸い、ドルドは結果以外に興味はない男。挑戦者を集められた事に、素直に歓喜していた。



それからは戦士達が我先にとリングに上がりこみ、早速戦闘が始まった。

レフェリーになるはずだったドルドは押しのけられ、戦士達の準備運動とばかりに薙ぎ倒される。

リング上のバッディーの前で押しくら饅頭を始める戦士達。闇の世界には自信家の戦士が多く、バッディーにも勝てるという確信があったのだ。

バッディーは呆れる。

「はあ。そう焦んなてめえら。なんならてめえら全員でかかってこいよ。俺に傷をつけられたやつを四天王にしてやる」

戦士達の目の色が変わる…。


「…うおおおりゃあああ!!!」

全員が飛び込み、バッディーになだれ込んでくる!

一人だけでも体重百キロを優に超える程の戦士達。そんな彼等が、自分達の身も顧みずに迫ってくる。

そんな彼等を…バッディーは、小さな体で受け止めた。


四本の腕のうち、たった一本だけで彼等を受け止める。まるで急ブレーキがかけられたかのようにぴったりと止まる戦士達。その急停止により、彼等は彼等自身の力を跳ね返された衝撃を受ける。これだけで何人かはダウンし、リング上でうつぶせになる。

無慈悲な闇の戦士達は全く気にせず、バッディーに突進してくる!

「おらあ行くぞバッディー!!」

黒い牛頭の戦士が、頭突きを仕掛けてくる!バッディーは飛び跳ねて回避し、空中から拳を振り下ろし、たった一撃でダウンさせる!

「ノロマなクソ牛が!」

バッディーは着地。着地点に偶然立っていた細身な槍使い戦士に、攻撃させる間も与えず薙ぎ払い、リングアウトに追い込む。

「鍛え直せ、ゴミが!!」

「流石バッディー様…!!」

槍使いの声は、悔しがりながらも感激していた。


全く動じないバッディーに、今度はスキンヘッドの大男六人が覆いかぶさるように襲いかかる。

「俺達六兄弟の力を見せてやれ!相手は四本腕、こっちは六人全員で十二本の腕だ!」

彼等は凄まじい勢いで拳を振りかざす!バッディーはその場から全く動かず…二本腕だけを振るい始める。

そして…拳をも使わず、指だけで突きまくる!

相手の手数は六、それに対してバッディーの手数は十。六兄弟は五秒も持たずに全滅、倒れていく。



「終わりか」


戦士達は倒れ…バッディーだけが、リングの中央に立っていた。倒れた戦士達が並びあい、新たなリングが作られたようだった。



「まだ終わってないぞ」


重圧感ある声が聞こえてくる。


視線を動かすと…。


そこには、真っ黒な体の巨漢が立っていた。

その体は分厚く、整った脂肪と筋肉に包まれており、両腕はまるで丸太のよう。

…闇の力士だ。

「俺の名はコクザンノマキ。バッディー、俺は四天王等に興味はない。ただ、お前のような強者と戦う機会を待ち望んでいた!手合わせ願おう」

「やっとまともそうなのがきたか」

バッディーは、面白そうに指を鳴らす。いくつもの関節が唸り、コクザンノマキを威嚇する。


両者は構えをとり…。


一斉にぶつかった!!

その瞬間、それまで無傷だったリングが潰れ、気絶した戦士達は力なく地面に押し流される。

確かな手応えに、バッディーの表情が変わる。

「お前、結構やるな…」

久々に面白い相手が出てきた。バッディーは笑みを見せたまま、コクザンノマキを掴む手により力を込める。

そのまま、彼の巨体を持ち上げ…近くに放り投げる!

コクザンノマキの体重が、彼自身に強い衝撃を与えるが、それでも大した反応を見せない。

「痛めつけ甲斐があるぜ!」

飛び込むバッディー。コクザンノマキは素早く立ち上がり、その攻撃を受け止める。

今度は大地がひび割れ、衝撃波が絶えず放たれ合う。一番近くにいたドルドは吹き飛ばされ、空中で身動きが取れずにパニックになっている。

互いの打撃をぶつけ合い、受け合う。避ける事もせずに自身の肉体一つで全て受けきる。二人の戦闘スタイルは同じだった。


「コクザンノマキ、テメェほどのやつは珍しい。しかし俺は闇姫軍最強の一人だ。敗北という概念そのものが無ぇんだよ!!」

四本の腕でコクザンノマキに掴みかかり、頭上に掲げて振り回す!小さなバッディーが巨漢をぶん回す様は、言葉を失う光景だった。

地面に叩き込み、引きずり回し…最終的にストンプを食らわせ、数秒の間に多大なダメージを負わせる。

手数と力が無駄なく混じり合う攻撃…コクザンノマキは、敬意を払うより他なかった。

「す、素晴らしい相手だった…」

彼もまた、気を失ってしまう。ついにバッディーは、ほとんど傷を受けずに完全勝利を収めた。


「すごい強さですね、バッディー様」

ドルドが瓦礫の中から歩み出てきた。バッディーは得意げな様子で、倒れた戦士達を見渡す。

「俺の優勝だな。おいテメェ。何か賞品あるんだろ?」

バッディーの一言に、ドルドはニヤリと笑う。待ってましたとばかりの様子だ。近くにあったバッグに近寄り、手を突っ込む。

「ええ。強き戦士にはこれをお渡しする事になっているのです」

そう言って彼が取り出したのは…。



{おめでとう!}の一言が書かれた、青い鉢巻だった。

有無をも言わさず、バッディーの頭に巻きつけるドルド。お似合いですよとばかりに笑い、拍手までする。


「おめでとう!!優勝だー!!」







「…こんだけ?」


その後、ドルドはバッディーの四本腕の犠牲になったという…。


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