表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラトビア転生記 〜TSしたミリオタが第二次世界大戦のラトビアを救う〜  作者: 雪楽党
1章 統一戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/127

34話

 言いようのない不安というものは的中するものだ。

 何となく、第3小隊を前方に分散偵察に出させると1個戦車大隊が発見された。

 幸いにも敵はこちらに気が付くことなく、第3小隊各車両は戻ってきた。

 現在わが隊は第3小隊の報告を受けて停止し、作戦を練っている。

 遭遇戦で押し切れないこともないかもしれないが、まだ開戦してから1日と経っていない。

 ここで部隊を壊滅させれば今後の作戦に支障をきたす。

 とはいってもここで立ち往生しててはどうしようもない。

 そこで私はヴェゼモアとロレンス大尉を呼び寄せ、作戦を練ることにした。


 十数分に及ぶ試行錯誤の結果、二つの案が出た。

 迂回か、突破か。

 これ以外にない。

 迂回し敵の後方を遮断してもいいが、逆にこちらが遮断される恐れがある。

 突破するのならば敵の撃滅はできるだろうが、こちらの被害も大きくなる。

「中佐、我々は国家の矛であり、盾であり、番犬であります。死は恐れてなどいません」

 ロレンス大尉の言葉を聞いてもなお悩む私を決断させたのはある伝令兵の言葉だった。

「――するわよ」

彼の言葉を聞いた私が命じるとロレンス大尉とヴェゼモアはすぐさま準備に取り掛かった。

 現在時刻は1400。

 昼に取れなかった昼食を急いで準備し、各員の水を補充する。

 そして、前進の準備が整ったのは1530であった。

 あたりはすでに薄暗く、あと数時間もすれば完全に夜となるだろう。

 その時我々の練度の高さが有利となる。

 少なくとも、海蛇大隊は数度の夜戦を経験している。

 彼らが後れを取ることはないだろう。


 

「……そろそろかな?」

 戦車の砲塔から頭を出しながら俺はつぶやく。

「少佐! そろそろ暗くなります!」

「解ってるさ!」

 さぁ、リューイ・ルーカス。どう来る。

 前世の貴様の手駒では太刀打ちできないだろうが、何があったか今は旅団を率いているらしいじゃないか。

 さぁ、どうする。

 思考を巡らせるとあたりが一気に明るくなった。

 待ち伏せ、その可能性が脳裏をよぎった。

 現在地点は駐屯地から数km前進した森に挟まれた街道。

 空を見上げれば敵が打ち上げたであろう照明弾。

「待ち伏せには完璧だな」

 小さくそう呟くと先頭を前進していた車両が撃破された。

 この細い道で行く手を塞ぐか。

 撃破された戦車の残骸が邪魔で前進は困難になった。

「退くぞ」

 俺は操縦手に命じると手旗信号を手に取り撤退の合図をする。

 そしてそのまま、前方に展開する第11小隊に殿をつとめるように命令した。



「撃て!」

 戦闘は私の車両から放たれた一撃によって始まった。

 私たちがとった選択は待ち伏せからの追撃。

 先頭の車両が破壊された敵はゾロゾロと撤退していく。

 今すぐに追撃せねば。

 そう思い追撃に移ろうとするが、敵の1個小隊がこの場に残っている。

「時間稼ぎね」

 私は唇をかみしめながら忌々しく呟く。

「次弾装填!」

 装填者にそう命じる。

 目標は敵の最後尾。

「撃て」

 私が命じると砲手は的確に敵を貫く。

 次々と配下の三号戦車が射撃し、敵を屠る。

「追撃に移りなさい。後続部隊に残党処理を命令」

「了解」

 通信手は手早く通信機を操作すると私の言葉を各部隊に伝える。

 そして、手早く戦車中隊をまとめると敵を追う。

 敵はBT7、まともに追っても追いつくことはできないだろう。

 だが、どこかで敵は我々を待ち伏せしているはずだ。

 どこにいる?!

 

 次の瞬間、車体が大きく揺れるのを感じた。

 敵の砲弾だ。運よく装甲で弾くことができたのだろう。

「右斜め前方30度、森の中からです!」

 通信機からそのような声が聞こえた。

 どこから撃たれたかは判明したが、姿が見えない。

 敵がどれだけいるのかも不明だ。

 先ほど見たところ1個中隊規模のようだった。

 単独行動している中隊か、それとも大隊の先遣隊か。

 どちらだ……。


 そう考えていると次弾が飛来した。

 標的は私の車両ではなく、一つ前の車両であった。

 一瞬、パッと光ったかと思うと直後に耳を切り裂くかのような爆発音。

 何事かと思いそちらへ視線を移すと砲塔が吹き飛んでいるのが見えた。

 破片が頬を切り裂く。

 不思議と痛みは感じなかった。

 あったのは敵への憎しみだけ。

「第3小隊! 後続の自動車化中隊から対戦車猟兵小隊を引き抜いて森の中へ進みなさい!!」

 私が叫ぶと、第3小隊の二号戦車が戦車の方向を変え、森へと突進していく。

 それにトラックから下車した対戦車猟兵2個小隊が続く。

 対戦車猟兵、自動車化中隊のなかにそれぞれ1個ずつ編成された精鋭小隊。

 ドイツ製の対戦車火器を数多く有した小隊。

 彼らを突入させるとものの数分と経たずに複数の爆発音。

 そして第3小隊からの「制圧完了」の報告。

 ニヤリと笑うとそのまま前進を命令する。

 どうしたソビエト。

 戦力の逐次投入は下策だぞ。と。


 1900。何度か敵の足止め程度の部隊をはねのけ、現在まで快調に進撃していた。

 だが、兵の疲労も限界に近づきつつある今、これ以上の進撃は難しいかもしれない。

 そこで第2小隊に周辺偵察を命じつつ、全体の停止を命じた。

 小高い丘陵のふもと。

 丘陵の上に前哨を置けば奇襲も受けないだろうし、何より川が近い。

 今まで戦闘に参加していない海蛇大隊に警備をやらせ、ほかの部隊には睡眠と夕食を与える。

 練度の低いソビエトが夜襲をかけてくることはまずないだろう。

 先ほど攻撃してきた部隊も後方に下がり、味方の増援と合流して防衛拠点を築いているに違いない。

 今は安心して眠れそうだ。



「ほらいた」

 リューイ達が休憩を取る丘陵から数百メートル先の森の中からミハウェルは彼女たちを観察していた。

「さすがですね、少佐」

 部下が俺のことを褒めたたえてくるが、それは当然のことだ。

 シチュエーションは違えど彼女と戦うのは二度目なのだから。

 彼女の本質的な部分は何があろうと変わらない。

 リューイ・ルーカスという人間は利点を重視する。

 あの場所で休息をとっているのは川が近く、前哨を置きやすい丘が近く、道路に面しているからだ。

 だからこそ、読みやすい。

 要は彼女の目線になって考えればいいだけなのだ。

「第2中隊、第3中隊はそれぞれ右翼と左翼に展開、灯火はつけるな」

「ハッ!」

 近くにいた兵士に命じると彼はそれぞれの中隊のもとへと走っていった。

「第1中隊出撃用意!」

 俺は彼らにそう命じ、出撃用意を取らせる。

 明かりは一切使わない。

 だが、それでも訓練を地獄のように積んできた俺たちならば不可能ではない。

「さぁ、リューイ・ルーカス。地獄を見せてやる」

 俺はそうほくそ笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ