一話 始まりのうちの三つ目
この事件が起きたのは2021年の8月10日だった。ある高校生が動画投稿サイトにて、人を惨殺する動画をあげた。何も触れず。ある人は宙に浮き、ある人は激しく遠くに飛ばされた。
そして、その一週間後動画を投稿した高校生は横浜市内の大型スーパーで射殺された。そのとき市民12人が死亡、警官3人が殉職した。
「起立、礼、着席」
いつもの変わらない風景。
うちの学校は8月の後半から授業が行われる。正直もう少し休みたい。
今日は目の前の席が空席だった。
しばらくして担任が話を始める。
「えー、何人かは知っていると思うが昨日小岩井が射殺され死亡した。」
クラスにどよめきが走る。小岩井はうちのクラスメイトだ。
「先生、正直にことを話すのはどうかと思います。」
クラス委員長の霧島霞きりしまかすみは特に動揺もせず質問をした。こういう時空気を読まないのが彼女である。
クラスのみんなは一度黙る。
「ああ、本来ならそうするつもりだ。しかし、これからお前たちは警察の方に事情聴取を受けてもらう。射殺されるほどの異常事態がおこったんだ。どうも、警察のほうもいまいち状況がつかめていなくてな。」
おかしな話だ。一般生徒に聞いても意味がないだろうに。
「それじゃあ、出席番号順に第一応接室まで来るように。」
喧噪の中、自分の順番を待つ。ちなみに俺の名前は渡会佐久間わたらいさくまなので呼ばれるのはまだまだ先である。
ちょうど中盤に差し掛かったとき前の席のやつが登校してきた。
「久しいな、我が半身よ。この世界も終焉の時が近い。」
「土日挟んだだけだけどな。おはよう、ななみ。」
こいつは直江ななみ《なおえななみ》。セリフのとおり中二病で俺と中学からの仲である。
中学のころはこいつとよく中二病ごっこしていた。おかげで半身だとかエレボスとか言われている。。ちなみに本人は自信をニュクスと呼んでいる。
「とういうか、今どうなってるの?」
あ、素に戻った。
「昨日のニュースみたか?高校生が射殺されたやつ。」
「あー、あれって確かうちのクラスの生徒だよね。」
今の時代は恐ろしいものでSNS等での拡散が異常に早い。昨日の射殺事件は一部始終の動画も挙がっていた。知っていてもおかしくはない。
「今そのことで警察の人がお見えになっている。俺ら高校生からいったい何が分かるというのか...」
「そ、そうだよね。どうしようもないよね」
少し戸惑った様子で答えた。
少しすると委員長がこっちによって来る。
「直江さん、今更登校したのね。あなたの番よ。」
「うん。わかった。じゃあ、あとでねエレボス!」
「ああ、じゃあまた」
そういって俺はななみを送り出した。
しばらくして俺の番が来た。
「とりあえず、座ってください。」
警察の方にそういわれる。
「では、さっそくで悪いのですがお亡くなりになられた小岩井君の性格とかをお聞きしてもよろしいですか。」
そういわれたので俺は小岩井について話した。
小岩井はやと、16歳。身長、体型ともに普通。性格のほうはいわゆる中二病である。自分のことを祝福の巫女と呼びお前女じゃねーじゃんと思ったことをよく覚えている。
クラス内でも自重することなくよく言えば自分を貫いている人物であった。
最近何か変わった様子などもなく学校に来ていた。
犯罪者の片りんはあったように思える。何事にも躊躇しない人であった。
一通り話し終えたところで警察の方から妙な質問をされた。
「君は超能力を信じるかい」
「はい?」
「本来警察は注意すべき存在なんだろうが彼が殺人をしている動画は見たかね?」
「はい、あいつの目の前の人がどんどん倒れていきました。」
インターネット上では半分デマとしてこの動画は流れているが、それを撮ったのは俺だ。目の前で見ていた。半分共犯者といっていいかも知れない。
「どうもね、あの動画本当らしいんだよ。鑑識の話では鈍器で頭部を殴られたらしい。しかし、彼の遺体にはそんな形跡はなかった。あったのは背中のあざだけだ。」
「すみません。そんなことこんな一高校生に言っていいんですか?」
「まあ、あまり言ってはいい話ではないがね。これ、あなたに渡しておきます」
渡されたのは名刺だった。
「気づいたことがあれば連絡してください。あ、私の名前は桐山です。」
全員に渡しているのか?どれだけ手掛かりがないんだ?
「わかりました。」
「では貴重なお時間ありがとうございました。」
部屋を出る。そういえばまだ言いそびれていたことがあった。
「そういえば、まだ答えていませんでしたね。超能力あると思いますよ。」
教室に戻ったら普通に授業していた。いつの間にか3時間目になっていたらしい。
前の席は空白だった。




