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天守閣の突破戦

徳川家康配下の「戦国一の猛将」・本多忠勝は、見知らぬ土地に佇んでいた。

象徴的な鹿角の兜を身に固め、名槍「蜻蛉切」を手に、黒漆の甲冑は妖しき天光の下で冷たく輝いている。

数人の精鋭な徳川武士が後に従い、いずれも百戦錬磨の落ち着きを浮かべつつも、未知の領域へ迷い込んだ茫然とした面影を隠しきれない。


一瞬、まだ関ヶ原の戦場で駆け抜けていたはずが、次の瞬間、天地は回転し、抗いがたき力が彼らを引きずり込んだ。

足元が定まった時、目の前には馴染みの戦場はなく、想像を超えて雄大な城——稲妻城がそびえ立っていた。

天まで届く天守閣には不吉な紫の雷光が纏わり、静寂の中に胸を締め付ける威圧感が漂っている。


「この地……妖気が強い」

本多忠勝は金石のような声で沈め、辺りを見渡す。

「主公の安否は不明。我らはこの地を探り、帰り路を見つけねばならぬ。進め!」


彼は確かな足取りで歩み出し、後の武士たちも迷いなく従う。

天守閣へ続く道は広々としているが人影はなく、両側には青い鬼火が燃え、画梁彫欄を照らし出し、かえって妖しさを増している。


侵入、そして罠の発動


天守閣の外回廊へ足を踏み入れた途端、異変が起きた。


「カチャ……」

極めて微かな機関の音。百戦錬磨でなければ、到底聞き逃す音である。


「下がれ!」

本多忠勝が低く喝すると同時に、蜻蛉切を一閃!


「シュシュシュ――!」

无数の毒塗りの千本が壁の穴から雨あられと飛び出す。

武士たちは素早く反応し、刀で払い落としたり身を翻したりするが、一人だけ動作が遅れ、肩や脚に何本も貫かれ、一声も発さず顔色を黒くして倒れ、息絶えた。


「毒矢……卑怯者どもめ」

本多忠勝の目は鋭くなり、怒りが胸に込み上げる。

彼はためらうことなく槍を構え、進み続けた。


回廊の先には巨大な朱塗りの扉がある。

武士が押し開けようと隙間ができた瞬間、頭上から轟音が響く。


「上だ!」

別の武士が叫ぶ。


巨大な鉄の落とし扉が、無数の棘を付けてどっしりと落下してくる。

一撃で皆を肉片にする勢いである。


「ぬらあ!」

本多忠勝は吼え、退くどころか飛び出し、腕の筋を浮き立たせ、重たい蜻蛉切を頭上へ勢いよく突き上げた!

槍先は見事に扉の軌道に食い込み、金属の軋む甲高い音を立てる。

象すら潰す力の扉を、彼はたった一人の力で食い止めたのだ。


「早く通れ!」

額の青筋を浮き立たせ、彼は低く叫ぶ。


武士たちは槍の下の隙間から次々に潜り抜ける。

最後の一人が通り抜けた瞬間、本多忠勝は力を抜き、宙返りで逃れた。

鉄扉は直後にどっかりと落ち、地面を揺るがせた。


伏兵の影、忍法の森羅


前庭を抜け、さらに広い殿前広場に出た。

ここには静寂はなく、紫色の忍装束をまとった数十の影が、柱陰や闇から音もなく現れ、手にする苦無が冷たく光っている。


「陣を組め!」

徳川武士の隊長が命じ、残る五人の武士は背中合わせで円陣を組み、数倍の敵に対峙する。


忍者たちは声も立てず、化物のように襲いかかる。

苦無と刀が激しくぶつかり合い、細かいカチャカチャという音が連鎖する。

身のこなしは軽やかで動きは妖しく、時に煙玉を投じ視界を奪い、時に身代わりの術で相手を翻弄する。

徳川武士も勇悍ではあるが、この奇怪な戦術には苦戦を強いられ、さらに二人が混乱の中で忍刀に急所を突かれ、動けなくなった。


本多忠勝はこれを見て目に鋭い光を宿らせる。

「鼠ども、いかほどの悪さをすると言うのだ!」


猛虎が羊群に躍り込むように、蜻蛉切は黒い旋風と化す。

槍の届くところ、忍者の刃は枯れ枝のようにあっさり折れ、槍先が妖しい弧を描くごとに、必ず血しぶきが舞い上がる。

常人を超えた力で、一振りごとに数人の忍者を一気に叩き飛ばす。

忍者の悪巧みも、絶対的な力と速さの前では効果を失った。


瞬く間に、広場に立っていられる忍者はわずかとなった。

残る者たちは形勢を悟り、素早く闇に紛れて消え去った。


緑の影の医術、鎖に縛われし魂


本多忠勝は深く息を吸い、騒ぐ気を鎮め、残る三人の部下を率いて天守閣の本殿へ足を踏み入れた。


本殿内は一層暗く、高所の窓からわずかに雷光が差すのみ。

空気にはかすかな薬草の香りが立ち込めている。

殿の奥から、しなやかな影がゆっくりと現れた。

覆面の飾りをつけ、冷静な瞳をのぞかせ、緑を基調とした忍装束をまとい、腰には薬袋と雷元素の神の眼を携えている。


「侵入者、止まれ」

久岐忍の声は穏やかだが、揺るぎない決意を宿している。

「ここは将軍様の御座の下。冒涜は許されぬ」


「我らは冒涜する意はない。ただ帰る道を求めるだけだ」

本多忠勝は槍を構えて立つ。

「我が行く手を阻むなら、敵となる」


久岐忍は言葉を返さず、両手で印を結び、指先に雷光を躍らせる。


「雷獄・縛の陣!」


瞬く間に、雷電で形作られた鎖が地面から無数に立ち上がり、生ける毒蛇のように本多忠勝たちに絡みつく。

一人の武士が間に合わず足首を雷鎖に縛られ、悲鳴を上げて全身痙攣し倒れた。


本多忠勝は蜻蛉切を疾らせ、槍風を巻き起こして襲い来る雷鎖を次々に砕く。

だが雷鎖は果てしなく湧き出し、砕かれても雷光の中で再生する。

しかも空気には目眩を催す異様な香りが立ち込めてくる——久岐忍が調合した麻痺の薬草と雷元素が混ざり合った毒霧である。


残る二人の武士は毒霧を吸い込み、動きは目に見えて鈍くなり、やがて雷鎖に捉えられ戦闘不能となった。


「毒や術を用いるとは……武士の道に非ず!」

本多忠勝は怒るが、自らも四肢に微かな痺れを覚える。

彼は息を詰め、体内の磅礴たる気を暴走させ、毒の侵食を強引に抑え込んだ。


久岐忍は身を翻し、魔物のように動き回り、雷鎖で攪乱し続け、隙を見て毒塗りの手裏剣を投げ込む。

正面からの突破ではなく、支配と削りを主とする戦術は、極めて手強い。


本多忠勝は長引くことを知り、機を見て、身すれすれの雷鎖を無視し、一歩踏み込む。地面の石は砕け散る!

蜻蛉切は毒竜の如く迸り、一往無前の勢いで久岐忍の胸元を突く。


その一撃はあまりに速く、あまりに烈し!

久岐忍は慌てて躱すものの、槍先は肩の衣を裂き、一筋の血糸を飛ばした。

彼女は低く唸り、数歩下がり、雷鎖の勢いが一時的に衰える。


本多忠勝は隙を逃さず、槍を旋回させ突きを払いに変え、巨大な力で嵐を巻き起こし、周囲の毒霧を幾らか散らした。

久岐忍はただ退くのみ。精妙な術を持ちながらも、本多忠勝のような戦場の猛将の決死の突撃の前には、どうしても劣勢となる。

最終的に本多忠勝は槍の柄で彼女の背中を一撃し、久岐忍はよろけ、動けなくなって倒れた。


智勇の探索、疾風の推理


本多忠勝が息を整える暇もなく、軽やかでありながら鋭い声が柱の上から響く。


「おやおや、並外れた武勇ですね。アシンさえも止められないとは」


探偵帽子をかぶった身軽な少年が軽やかに飛び降りてくる。鹿野院平蔵である。

彼は興味深げに本多忠勝を眺め、まるで興味深い事件を審理するように。


「あなたの力は強大で、技は豪快そのもの。純粋な戦場の武芸です……しかし歩くたびに、地面の振動に異常に敏感な様子ですね?」

鹿野院平蔵は顎を撫で、推理の光を宿した瞳で見据える。

「さっきの罠が、心残りなのでしょう」


本多忠勝は心を引き締める。この少年、眼光はあまりにも鋭い。


「では、これを試してみます?」

鹿野院平蔵は微笑み、神の眼が風元素の輝きを放つ。


「風佑・聚散流旋!」


彼は直接攻撃することなく、両手を押し広げ、主殿内に二つの強力な旋風を生み出す。

旋風は人を傷つけはしないが、地面の埃や屑、さらにはさっき久岐忍が撒いた毒粉まで巻き上げ、濁った竜巻となって本多忠勝を左右から挟み撃つ。

さらに厄介なことに、旋風は気流を乱し、本多忠勝の聴覚と知覚を著しく妨げ、次の攻撃がどこから来るのか判断できなくする。


同時に鹿野院平蔵は風に紛れ、身のこなしを儚くし、卓越した体術と風元素の加速で、疾風のように本多忠勝の周囲を駆け回る。

時折、槍の隙間に入り込み、風のように速い手足の攻撃を加える。

威力は大きくないが、関節やツボなど急所を狙い、力を削ぎ攪乱することを主としている。


本多忠勝は山岳を動かす力を持ちながらも、粘り気のある渦に捕らえられたように、槍を振るたびに綿のような空しさを感じ、旋風に判断を惑わされ、力を発揮できない。

鹿野院平蔵は最も狡猾な狩人のように、言動で彼の感情を煽り、技の隙を探り続ける。


「怒っていますか?焦っていますか?仲間が次々に倒れ、ここに閉じ込められた焦り……」

鹿野院平蔵の声は四方八方から響く。

「そういう感情は、判断力を鈍らせますよ」


本多忠勝は怒鳴り続け、槍さばきはますます乱暴になり、その分だけ隙を晒すようになった。


「見つけた!」


鹿野院平蔵の瞳に鋭い光が宿り、本多忠勝が一撃を突き終え、力の切れ目に入った瞬間を捉え、風のように切り込み、風元素を込めた掌をその胸腹の急所へ叩き込む!


だが彼は本多忠勝の戦闘本能を見くびっていた。

掌の風が体に触れる寸前、本多忠勝は無理やり身を翻し、肩の鎧で一撃を喰らい、同時に左手を鉄鋏のように伸ばし、鹿野院平蔵の手首をがっちりと捕らえた!


「なんだと……!」

鹿野院平蔵は驚き、逃れようとするものの、その手は鉄のように動かない。


「小僧、知恵は悪くない」

本多忠勝の声は息を弾ませつつも、依然として落ち着いている。

「だが戦場においては、時には力を以て巧を破る、それこそが必要なのだ!」


言うや否や、右手の蜻蛉切は旋回し、柄で鹿野院平蔵の脇腹を強く一撃!

あまりの力に少年探偵は吹き飛ばされ、遠くの柱に激突し、滑り落ちて一時的に意識を失った。


殿内の旋風はゆっくりと収まった。


本多忠勝は槍で体を支え、わずかに息を弾ませる。

連戦、特に最後の鹿野院平蔵との知略と力の闘いは多大な体力を消耗させ、久岐忍の毒霧もめまいをもたらしている。

彼は倒れた久岐忍と鹿野院平蔵を一瞥し、縛られ倒れた部下たちにも目をやる。


深く息を吸い、堂々たる体をまっすぐに伸ばし、視線は殿の奥、さらなる高所へ続く階段へ注がれる。

そこには雷光が集い、魂を戦慄させる威圧感が仄かに漂っている。


彼は悟る。真の試練は、恐らくこれから始まるのだと。

蜻蛉切を強く握り、たった一人、確かな足取りで天守閣の最上階へ——雷電の権力の座へ、進み続ける。

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