軽策荘防衛戦
軽策血戦:璃月三万、十二万を破る
蕭山籬は軽策荘の隘口に立ち、背後に三万の璃月将兵が厳粛に敵を待ち構えていた。
遠方に土煙が巻き上がり、武田信玄の十二万大軍が黒雲が城を圧するように迫り来る。
帰終機が激しく空を裂き、魔物と人間の屍が共に舞い上がる。
重雲の剣は氷を誘い万里を凍らせ、行秋は墨を振るい雨を刃に変え、嘉明の火拳は天を焼き、胡桃の槍は幽冥を突き崩す。
真田幸村は赤い鎧をまとい鬼の如く、三重の防衛線を次々と突破するも、四人の合力によりついに押し戻される。
二回にわたる血戦の末、荘の前に四万の死体が横たわり、武田軍の軍旗は打ちひしがれて垂れていた……
軽策荘は恐ろしいほど静まり返っていた。
日頃最も騒がしい蝉さえ声を潜め、重く実った稲穂は午後の熱風の中で固まったように微動もしない。ただ荘の前、山の傾斜を開墾した棚田の上に、三万の璃月将兵が粛然と立っているだけだ。黒い甲冑はどこか物悲しい陽光を映し、槍や戟が林のように空に突き刺さる。鉄錆と土が混ざった気息が、音もなく空気に満ちて広がっていた。
蕭山籬は阵列の最前、最も要となる隘口に立っていた。山風は彼の紅い将旗をなびかせ、顎の下に白み始めた長い髭も揺らす。体格は特に魁梧というわけではなく、やや細身ではあるが、背筋はまっすぐに張り、まるで隘口に打ち込まれた鋼杭のように、永久に揺るぐことがない。彼の視線は、麾下の多くが若く幼さの残る顔、固く結んだ唇、武器を握り指関節を白くさせた手を眺め、やがて遠方へと投げられた。
来た。
地平線にまず細い黒い線が現れ、瞬く間にその線は拡がり翻る疫病のように広がり、緑と生気をすべて飲み込んでいく。土埃が空に舞い、黄色くくすんだ幕を作り、その下には無数の人頭、林の如き刀槍、さらに禍々しく不吉な気配を纏う魔物の姿が蠢いていた。武田信玄の十二万大軍は天地を覆う黒い潮流のように、息が詰まるほどの圧迫感を携え、ゆっくりと迫り来る。戦鼓の音はまだ届かぬが、無数の足が大地を踏む重たい残響が地面を伝い、人の心を痺れさせる。
「帰終機――準備せよ!」
蕭山籬の声は大きくはないが、前陣全体に澄んで響き渡った。
隘口両側の山の高地に、巧みに偽装され岩肌と一体化した帰終機が、厚い金属と奇妙なルーンを纏う弩身を守備兵が一気に現す。機械が軋み歯が浮くようなきしり音を立て、腕ほど太く元素の光沢を放つ弩矢が矢溝に填められ、迫り来る死の潮流に狙いを定める。
黒い潮が射程圏内に入った。
「撃て!」
蕭山籬の号令と共に、空気が瞬く間に引き裂かれた。
ブウン――!
それは弦の震えではなく、もっと雄大で破壊的な咆哮だ。数十条の灼熱の流光が山頂から噴き出し、致命的な軌道を描き、押し寄せる武田軍先鋒に突っ込む。
轟!轟!轟!
爆発音が連なり、元素の力が人混みで猛り狂う。氷の弩矢は破裂し、瞬く間に数十名の足軽と傍らの魔物を硬い氷像に閉じ込め、直ちに後ろから止まれぬ仲間に砕き散らされる。炎の弩矢は地面に着くと燃え盛る火の壁を生み、悲痛な絶叫の中、人は松明のように転げ回る。さらに岩元素を宿した弩矢は地面に巨大な落とし穴と鋭い石筍を生み出し、突進する陣形を混乱の渦に陥れる。
戦争はこの瞬間、帰終機の最も粗暴なやり方で、軽策荘前の大地に刻まれた。魔物の四肢と人間兵士の腕が共に舞い、生暖かい血雨と焦げ臭いにおいが、先ほどまで黄金に輝いていた稲田に降り注ぐ。
だが十二万人の奔流はあまりに膨大だ。帰終機の一斉射撃で一帯を一掃しても、次から次へと敵が隙間を埋め尽くし、果てしなく押し寄せる。先鋒の武士と魔物は巨大な盾を構え、仲間の死体を踏み越え叫びながら前へと殺到する。距離は急速に縮まっていく。
「落ち着け!」各級将校の怒号が阵列に響き渡る。璃月の兵士たちは千岩槍を強く握り、槍の柄を地面に突き立て重たい均一な音を立て、胸から溢れ出さんばかりの恐怖を抑えようとする。
敵先鋒が璃月軍の槍陣に迫る刹那、数つの影が軍陣から疾風のように飛び出した。
「氷稜・旋!」重雲の姿は白い稲妻のように陣前に躍り出、手中の長剣を遠く指し示す。厳しい冷気が彼を中心に一気に噴き出し、青いルーンが空に瞬いて消える。前方数十歩の地面はひび割れる音を絶やさず、厚い氷が瞬く間に広がり、最前の足軽と氷の深淵法師たちをその場に閉じ込める。氷は急速に成長し無数の鋭い氷棘となって勢いよく炸裂し、凍りついた人影を引き裂いた。
ほぼ同時に、行秋の姿は驚鴻のように優雅に重雲の側面に現れる。手中の長剣が舞い、まるで空に淋漓たる水墨の詩句を綴るかのようだ。「雨籠山を描く!」澄んだ叱咤と共に、漫天の雨糸が虚空から凝結し、一滴一滴が鋭利な剣意を宿す。彼の剣先の向くまま、無形の大網となって右側の敵を覆い尽くす。雨粒が掠めるだけで甲冑は容易に切り裂かれ、肉体に細かい血筋が浮かび、悲鳴を上げて次々と倒れ伏す。
左側からは灼熱の炎風が押し寄せる。「食らえ、熾魂轟天!」嘉明は砲弾のように敵陣に飛び込み、両拳に炎を纏い、飾り気のない最も直接的で狂暴な打撃を繰り出す。一撃ごとに爆発する火の光と飛び散る残骸を伴い、密集した敵陣の中に燃え盛る真空地帯を無理やり切り開く。
そして戦陣の隙間に、暗紅い影が蝶が花をくぐるように軽やかに躍動する。胡桃は護摩の杖を手に姿をくらませ、現れるたび槍先は敵の甲冑の弱い部分、喉や面当ての隙間を正確に突く。口には往生堂の調子外れな往生経を低く歌いながらも、槍の下に敵なく、立ち倒れた敵からは淡い黒い気流が立ち昇り、境界へと送られる残魂の気配だ。
四人の勇猛な奮戦は前線の槍陣の圧力を大いに和らげ、璃月の兵士たちは士気を大いに高め、ついに眼前に迫った敵を槍陣の前に突き倒し怒号を上げる。戦いは完全に白熱し、刀剣の激突音、怒号、絶叫、元素の破裂音が死の交響曲となって響き渡る。
だが武田軍の陣中から、さらに凶悪な気配が天に衝き上がった。
それは目を刺すような鮮やかな紅だ!
真田幸村は赤い大鎧を身にまとい、兜の鹿角の飾りはまるで悪鬼の角のよう。胯下の戦馬は雄大で、手中の十文字槍は稲妻の如く速く、通り過ぎるところ璃月の兵士は刈り取られる麦のように次々と倒れる。彼は足を止めることなく目標を明確に定め、璃月軍陣の中枢――翻る「蕭」の将旗へと真っ直ぐに迫る!
「あいつを食い止めろ!」一名の千岩軍将領が親兵を率いて迎え撃つ。
真田幸村は冷めた眼差しで、十文字槍を軽く突き出す。その速さは視覚で捉えられぬほどだ。槍先は厚い盾を貫き、胸甲を突き抜け、将領をそのまま突き飛ばす。槍を旋回させ甲高い風切り音を立て、取り囲んだ親兵を一掃する。赤備え騎兵が彼の後に続き、焼けた鉄の杭のように璃月軍の阵列に強く突き刺さる。
第一防衛線、突破された!
第二防衛線では兵士たちがさらに密集した槍陣を組む。真田幸村は手綱を強く引き、戦馬は立ち上がり、槍の雨の上空を飛び越え陣中に躍り込む。十文字槍が輪のように舞い血飛沫が飛び散り、個人の武勇だけで堅固な陣形に無理やり亀裂を開ける。
第三防衛線は蕭山籬の親衛営が構える最後の障壁だ。歴戦の老兵たちは怒号を上げ陣を組み、槍を林のように突き出し一歩ずつ進む。真田幸村はついに僅かに足止めされるも、雄たけびを上げ槍を力強く振るい、一撃ごとに山を崩し地を裂く威力で突き出される槍を薙ぎ払う。親兵は一人また一人と倒れ、防衛線は崩れ落ちんばかりに揺らぐ。
「将軍を狙っている!」重雲は傍らの赤備え騎兵を一刀で薙ぎ倒し、止め難き赤い影を見据える。
「もうこれ以上進ませるわけにはいかない!」行秋は剣勢を転じ、絡みつく敵を追い払う。
嘉明は一人の武士を拳で吹き飛ばし、顔の血汚れを拭い捨てる。「ちっ、こいつは手強いな!」
胡桃は身を翻し嘉明の側に現れ、護摩の杖を横に構える。「なら豪華な往生セットをプレゼントしてあげましょ!」
四人は言葉を交わすまでもなく、一斉に動き出す。
重雲が先に仕掛け、長剣を地面に突き立て、極寒の呪符が地面を急速に伝い真田幸村の足元に迫り、行動を封じようと氷を張り巡らせる。「寒病鬼差!」氷青い幻影が現れ、冷たい気を纏い襲いかかる。
真田幸村は足元の寒気を感じ、戦馬が落ち着かず足踏みする。彼は鼻で笑い、十文字槍を勢いよく地面に突き立て、狂暴な気流で広がる氷を打ち砕く。だがこの一瞬の停滞に、行秋の剣雨が既に身に迫っていた。密集した雨の剣がカチャカチャと彼の赤い鎧に叩きつき、大半は弾き返されるも細かい傷を残し、さらに動きを乱す。
「好機だ!」嘉明は瞬く間の隙を捉え、火の流星のように突進し、燃え盛る両拳で真田幸村の脇腹を強打する。「轟!」炎が炸裂し、真田幸村は低くうめき、赤い鎧に黒く焦げた跡が残り、胯下の戦馬もいななき二歩下がる。
真田幸村は怒りを募らせ、十文字槍を旋回させ甲高い甲高い鳴き声を上げ嘉明の顔面を突く。この一撃は反応できぬほど速い。槍先が届く刹那、斜めから一本の槍が伸び、槍先は十文字槍の刃側面を正確に弾く。
カーン!
澄んだ極まる金属音が響く。
胡桃は手首を僅かに震わせ膨大な力を受け流し、身を躍らせ護摩の杖が毒蛇が洞から出るように逆に真田幸村の喉元をなぐる。「蝶来い来生!」
真田幸村は槍を返して防がざるを得ず、槍竿同士が激しくぶつかり重たい衝撃音を立てる。彼の瞳に驚きが宿る、この少女の力と技は予想をはるかに超えていた。
重雲の氷柱、行秋の剣雨、嘉明の爆炎、胡桃の神出鬼没な槍影。四人は息の合った連携で、四方から絶え間ない攻勢を仕掛ける。真田幸村の武芸は強靭なれど、一瞬にして完全に封じ込められ、十文字槍は水も漏らさぬほど舞うも、一歩も前に進むことができない。赤備え騎兵が救援に駆けつけようとするも、立ち直った璃月の親衛に強く阻まれる。
戦いは短い膠着状態に入った。真田幸村は絶えず雄たけびを上げ槍勢はますます狂暴になるも、四人はまるで餅菓子のようにぴったりと張り付き、一歩も離さない。
フウ――フウ――!
武田軍本陣から低く長いラッパの音が響き渡る。
それは退兵の合図だ。
真田幸村の顔には不服と怒りがあふれるが、軍令がある以上逆らうことはできない。十文字槍を振るい胡桃の槍を払い、重雲の氷稜を蹴散らし、馬の向きを変える。
「璃月……覚えておけ!」
彼は無念のまま手こずらせた四人の若者を深く眺め、遠く終始揺るぐことなく立つ蕭山籬を見渡すと、残った赤備え騎兵を率い、潮流のように戦場を退いていく。
武田軍が引き潮のように戦場を離れると、轟く殺気立った叫び声は次第に静まり、代わって負傷兵の抑えきれぬうめき、戦友を失った者の低いすすり泣きが響く。
夕陽はついに血と火の絡みを抜け、最後の残光を軽策荘前の巨大な墓場に降り注いだ。
その光は、暗紅色に染まっていた。
目に届く限り一面の荒れ果てた光景だ。もと黄金に輝いていた稲田は踏み荒らされ濁った沼となり、砕けた武器、矢の突き刺さった盾、引き裂かれた旗があちこちに転がる。そして何より多いのは死体だ。幾重にも積み重なり山のようになり、荘前の窪地をほぼ埋め尽くす。璃月兵士の黒い甲冑と武田軍の赤備え、足軽の雑多な衣装が入り混じり、見分けもつかない。固まった血は土を濃い褐色に染め、空気には吐き気を催す濃厚な血生臭さと内臓の腐敗臭が充満している。
まさに四万の死体、大半は攻撃側の兵士がここに横たわっていた。武田軍がかつて威勢を誇った「風林火山」の軍旗は、数面が死体の山に斜めに突き立てられ、血汚れでボロボロになり、立ち始めた夕風に力なく垂れている。
蕭山籬は依然として隘口に立ち、まるで石像と化したかのようだ。彼はゆっくりと、三万の子弟の命を懸けて守り抜きながらも多大な犠牲を払ったこの大地を見渡す。帰終機の過熱で立ち昇る煙が山頭にたなびき、まるで弔いの線香のようだ。
重雲は剣を収め立ち、わずかに息を弾ませ、白い道着の裾は血汚れに染み透っている。行秋は黙って剣を鞘に収め、端正な顔には疲労と重たい思いが漂う。嘉明は腰の水筒を取り勢いよく飲み干すも、思わず咳き込み、血の混じった痰を吐き出す。胡桃は護摩の杖をそばに突き立て、眼前に広がる果てしない死を眺め、いつもの捉えどころのない笑みを消し、深い沈黙に包まれる。彼女は往生堂の鎮魂曲を低く歌い始め、その調べは遠く幽玄に、血に染まった戦場に漂っていた。
生き残った兵士たちは黙々と戦場を片付け、死体の山から息のある仲間を探し出す。動作は麻痺し機械的だ。誰も歓声を上げない。たとえ倍以上の敵の二回にわたる猛攻を退けたとしても。誰もが知っている、武田信玄の主力はまだ健在で、黒雲が空を覆うような十二万大軍は一時的に退き傷を癒しているだけだと。
さらなる大嵐は、これから訪れる。
軽策荘の夕暮れは、血と火に浸され、静かに長く続いた。




