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鉄甲戦船破壊戦

孤火、寒濤を照らす


その夜、龍芝は我ら十二人を率いて港に忍び込んだ。


五隻の鉄甲戦船は月光の下、眠りについた巨獣の如く、次々と我らに火をつけられ、天に衝き上げる松明と化した。


勝利の歓喜が冷めやらぬ撤退路に、鉄砲隊の一斉射撃の火が暗闇を引き裂いた。


最前線に突進する龍芝を見ると、荒風に翼を折られた雛鳥のように、勢いよく地に倒れ伏した。


彼が最後に我らに向けた眼差しに、恐怖はなく、果たせぬ後悔と無言の急がせる思いだけが宿っていた——


早く逃げろ。




潮風は塩気と硫黄のにおいを纏い、孤雲閣の岩肌の鋭い岩礁を渡り抜ける。夜に包まれた島は、鎖に縛られ息絶え絶えの巨獣のようだ。豊臣軍が駐留する港の方角だけ、点点の灯火がともり、悪意を秘めた獣の瞳のように煌めいている。


龍芝は冷たい岩の割れ目に身を伏せ、粗末な麻の着物は露に濡れ、少年の細く張り詰めた背中にぴったりと張りついていた。彼はその灯火を見つめ、焼き入れた短剣のように鋭い眼差しを向ける。十六歳の年頃、顔に残るはずの幼さは、一家崩壊の惨劇と絶えることのない憎しみに削り取られ、島の重く沈んだ岩肌と溶け合うような、硬く角ばった輪郭だけが残っていた。


彼の背後には、しゃがみ、あるいは横たわる十二の沈黙した影が並ぶ。彼らは島民最後の血気である——老漁師の岩吉は、風波の刻んだ皺が顔に走り、長年網を引くせいで指の関節は太く腫れている。その息子阿嵐はまだ半人前の少年で、緊張して唇を固く結び、魚叉を強く握りしめている。元町奉行所の小姓文四郎は、落ちぶれた今も品の良さを残し、欠けた玉佩を無意識に撫でている。ほかに鍛冶屋の弟子、山に逃れた樵夫、家を焼かれた未亡人阿椿……


手にするのは研ぎ澄ませた薪割り刀、錆びた脇差、尖った石を縛りつけた棍棒、そしてこの任で最も重要な、集められる限りの火薬と魚油で調合した火種である。粗末な壺に納められ、宝物のように胸に抱きしめられている。


「皆、しっかり覚えておけ」

龍芝は声を低く抑え、風にかき消されながらも、一字一句が人々の心に突き刺さる。

「岩吉叔父、三人を連れて一番東の船を任せる。文四郎、真ん中の二隻はお前たちが担当せよ。俺と阿嵐、阿椿で最大の旗船を仕留める。火をつけたら、成否にかかわらず直ちに北西の乱石浜へ撤退せよ。漁船がそこで待っている」


誰も声を上げず、重たい呼吸と鼓動だけが静寂の中で太鼓のように響く。港に停泊するこの鉄甲戦船こそ、豊臣軍が孤雲閣の喉元を扼る鉄の爪であることを、誰もが知っていた。これらを破壊してこそ、敵の絶え間ない補給を断ち、傲慢な侵略者に、孤雲閣の民はまだ絶えていないことを知らしめられる。


子の刻も半ばを過ぎ、陣営の灯火は大半が消え、見張り櫓を巡回する兵の姿が時折揺れる。いつしか海霧が立ち込め、月光に青白い紗をかけたように覆い隠す。


「行け」


龍芝が手を振ると、十三の黒い影は放たれた矢の如く、音もなく岩を滑り落ち、腰まで浸かる海水に没した。身に染みる冷たさは、無数の針が肌に突き刺さるようだ。阿嵐は身震いし、歯を食いしばって後に続く。船影を隠れ蓑に泳ぎ寄り、霧の中で鉄甲船の巨体はますます狰狞しく、船体は淡い月光を反射し、冷たく硬い金属の光沢を放っている。


登りは困難を極めた。船体の外板は滑り、足場はほとんどない。龍芝は短刀を板の隙間に突き立て、飛び出した鋲を足で蹴り、敏捷な壁虎のように這い上がる。爪はめくれて血を滲ませ、海水と混ざり、刺すような痛みが走る。彼はそれを顧みず、頭上の甲板だけを見つめていた。


ついに手を船縁にかけ、息を潜めて耳を澄まし、異変がないことを確かめると、勢いよく甲板に飛び上がった。甲板はひっそりと空き、遠く船楼から微かないびきが漏れるだけだ。彼は素早く綱を下ろし、下にいる仲間を一人ずつ引き上げた。


作戦は順風満帆とはいかなかった。西から二番目の船の見張りにいる豊臣足軽を討ち取る際、松造という義士の動きが一瞬遅れ、足軽は絶命の間際に短い咽び声を漏らした。音は小さかったが、近くの船にいる者たちは一気に冷や汗をかき、身をかがめて心臓が飛び出そうになる。幸い潮風の咽びと波の打ち寄せる音がその微音を飲み込み、大きな警戒を招かずに済んだ。龍芝は松造の方へ鋭く睨みをきかせ、暗闇で表情は見えぬものの、その圧力に松造は崩れ落ちそうになった。


龍芝はためらわず合図を送る。人々は定められた役割に従い、二人一組となって船縁を伝い、底倉や貨物倉へ忍び寄る。素早く身をかがめ、持ち込んだ壺をマストの下、綱の山の側、兵器や火薬が納められていると思われる場所に慎重に置いていく。龍芝は自ら最も大きな火油壺二つを旗船の底倉奥深く押し込む。そこは帆布と樽が積み上げられていた。


時間は引き延ばされ、一瞬一瞬が刃の上で踊るような緊張に満ちている。


やがて全員が海側の船縁に退き、いつでも海に飛び込める態勢を整えた。龍芝は深く息を吸い込み、懐から火縄を取り出して勢いよく着火させる。オレンジ色の小さな火が暗闇に躍り、堅い横顔と瞳に宿る決意の炎を照らし出す。


彼は火を導火線に近づけた。


「シュー——」


導火線に火が移り、細かい火花を散らし、毒蛇のように暗い船倉の奥へ素早く伸びていく。


「飛び込め!」


十数の影が次々と冷たい海水に身を投じる。彼らが水に入ったその瞬間——


「ドゴーン!!」


轟音が旗船の底部から響き渡り、重く大きな衝撃で船体は勢いよくせり上がる。灼熱の炎が瞬く間に甲板を突き破り、木くずと破片を巻き上げて天に衝き上げた。続いて連鎖反応のように二隻目、三隻目……爆発が相次ぎ、一つより一つ激しく荒れ狂った。


五隻の鉄甲戦船は瞬く間に巨大な五つの松明と化した。火の光は港全体を昼のように照らし、黒い煙は渦を巻き、空に浮かぶ残月を飲み込まんばかりに立ち昇る。燃えるマストは火鳥の翼のように、甲高い轟音を立てて折れ、墜落していく。海面は流れるような真っ赤に染まり、熱気が押し寄せ、眉や髪が焼けるにおいさえ感じられる。


龍芝は水面に顔を出し、顔の水を拭って振り返る。天に衝き上げる火の光が瞳に燃え盛る。やった、本当にやり遂げた!復讐の快感と破壊の衝動が胸の中で渦巻き、思わず天に向かって叫びたくなる。隣の阿嵐は顔を水に濡らし、海水か涙か見分けもつかず、口を開けて滅びの光景を呆然と見つめている。近くで岩吉が必死に泳ぎ、古銅色の顔を火に照らされ、そこに歓喜はなく、深く安堵した厳粛な面持ちだけが浮かんでいる。


「行け、急げ!」龍芝は嗄れた声で叫び、胸の激動を抑え、仲間を誘って定められた北西へ泳いでいく。


勝利の恍惚が残る中、生き残ろうとする本能が彼らを突き動かす。互いに支え合い、ふらつきながら岸に這い上がり、港の奥に広がる山林へ続く細い坂地に駆け込む。ここを抜けて密林に入れば、生きる望みが目の前に開ける。


疲労と興奮で足元はふらつき、風箱のような荒い息遣いが響く。誰も振り返らず、背後の火の光が彼らの姿を丸裸に照らし出していた。


だが坂地中腹の開けた砂利地に差し掛かった時、静まり返った暗闇の先から、整然と響く冷たい金属の擦れ音が突然響いた。


「構え——」


訛りの強い硬い日本語の号令が短く響いた。


龍芝は急に足を止め、その瞬間心臓の鼓動が止まったかのようになった。


暗闇は見えぬ刃で切り裂かれた。赤備えの胴具足をまとった豊臣鉄砲兵三列が、地底から現れた幽霊のように坂地の果てに整然と並び立つ。手にした鉄砲は構えられ、黒い銃口は背後の港の大火に照らされ、死の赤い光を煌めかせている。


その火の光は敵の冷たい面鎧を照らすだけでなく、龍芝たちの顔に残る歓喜を一瞬で凍らせ、突如湧き上がる極限の恐怖をも浮かび上がらせた。


「撃て!」


警告も問い質しもなく、冷酷無情な号令だけが下された。


「ドン!!!」


一列目の銃口から火が噴き出し、耳をつんざく轟音が夜の静寂を引き裂き、背後の港の燃える音を飲み込んだ。白い硝煙が立ち込め、刺激的なにおいが鼻を突く。


龍芝は抗いようのない大きな力に胸を強く打たれ、右胸は焼けた焼き鏝で貫かれたような衝撃に襲われる。その勢いで体は宙に浮き、後ろへ吹き飛んだ。空、燃える港、仲間の愕然とした顔が渦を巻き、ぼやけた光影となって眼前に広がる。


冷たく湿った砂利地に重く叩きつけられ、泥水が飛び散る。その時になって激痛が津波のように押し寄せ、全ての感覚を飲み込んだ。温かい液体が喉から溢れ出て呼吸を塞ぎ、鉄の錆のような濃いにおいが充満する。


視界は急速に暗くなり、端から黒い靄に覆われる。必死に目を見開き、硝煙立ち込める先を眺め、共に出陣しながら共に帰れぬ仲間たちの姿を見つめる。阿椿が腹部を押さえて倒れ、文四郎が玉佩を掴もうとするも二列目の銃弾に腕を砕かれ、岩吉は老体を息子阿嵐の前に立てて強く身を震わせ、枯れた木のようにゆっくりとひざまずくのが見えた……


体は動かず、指一本さえ上げることもできない。


最後に消えゆく残りの力を振り絞り、呆然と立ち尽くし、あるいは恐怖に身を伏せた生き残りたちに眼差しを向ける。視線はもう定まらず、散漫な瞳に映る天の火も消えゆく。


死への恐怖も敵への呪いもない。深淵のような果てしない後悔だけが、孤雲閣を取り巻いて晴れることのない海霧のように重く垂れ込める。


そして……無言の、切迫した急がせる思い——


はや……に……


この眼差しは生き残りたちの絶望の網膜に焼きつき、鉄砲の轟音よりも心を刺した。


三列目の一斉射撃の轟音が再び響き、卵が石にぶつかるような儚き抵抗に、最後の冷たい終止符を打った。

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