平壌防衛戦
一夜の鬼城
平壌城、夜半。
申鶴は南側櫓の内壁に寄りかかり、目を閉じて気を調えていた。白い衣には幾筋かの暗紅色の飛沫が付いている――彼女の血ではない。仙人の身は凡兵の刃に傷つけられるはずがなく、それは昼間城壁の上で敵を討ち取った時に飛んだ血痕だ。目を閉じていても、彼女の知覚は蜘蛛の巣のように広がり、城内外三百丈の範囲を覆っていた。
刻晴は向かい側で眠っており、匣里龍吟を膝に横たえ、刀身にかすかな雷光が巡っていた。璃月七星の中で最も若い彼女は、眠りの中でも眉を少しひそめ、落ち着かない様子だった。今日、高永康弘と三十合にわたり戦った。彼の長大な太刀の一撃一撃は山岳のごとく重く、彼女の虎口を裂いた。包帯の下からは今も血が滲み出ている。
城壁の下から抑えられた泣き声が響いてくる。昼間に戦死した守備兵の遺体を収める遺族たちの声だ。香菱の大鍋はまだ湯気を立てていたが、スープをもらうために並ぶ人の数は大きく減っていた。空腹ではない。多くの人はもう食べる気力を失っていたのだ。
日本軍はこの日、三回の攻撃を仕掛けてきた。
一回目は辰の刻、長方天吉が率いる五千の歩兵が粗末な雲梯を担いで城壁に突進した。鉄狼牙棒が城壁を叩きつけ、レンガを震え割った。申鶴は氷の術で城壁の広い範囲を凍らせ、雲梯を滑らせて設置不能にした。刻晴は雷を呼び、三基の衝車を打ち砕いた。だが長方天吉はほとんど城壁の上まで迫った。香菱が慌てて絶雲唐辛子特製の煮込みスープの大鍋を真っ向からぶちまけ、この怪物を退かせたのだ。
二回目は午の刻。雑賀炳潤の銃兵隊が城外三百歩に陣を敷き、ボルトアクション銃で城上の守備兵を精密に狙撃した。十二名の朝鮮弓兵は姿を現す前に頭を撃ち抜かれた。刻晴は危険を顧みず城壁の外に飛び出し、雷元素で電磁攪乱を生み出して弾道を逸らせ、同時に申鶴が氷槍で遠距離から反撃し、銃兵隊を後退させた。
三回目は申の刻。高永康弘と小田成叡が連携して攻城した。槍と太刀は隙なく呼応し、剛と柔、遠距離と近距離を補い合った。申鶴と刻晴は共に迎え撃ち、城上から城壁中段、そしてまた城上へと戦いを続けた。氷と雷が絡み合い、槍と刀が狂ったように舞い、七十合を経てようやく二人を退かせた。代償として刻晴は負傷し、申鶴は多くの仙力を消耗した。
今のところ、平壌城外は一時的に静かだ。日本軍は二里先の陣営に引き、篝火が星のように広がっている。だがその火の向こうから、いつもとは違う気配が伝わってくる。休養の緩んだ音ではなく、抑えられたリズムを持つ叩き音だ。
申鶴が突然目を開けた。
彼女は矢狭間へ歩み寄り、南を眺めた。月光の下、敵陣の輪郭が……変化しているように見える。
「おかしい」と彼女は低く呟いた。
刻晴も目覚め、剣を握って立ち上がる。「どうした?」
「彼らは……築城している」申鶴の瞳がわずかに収縮する。仙人の視力は凡人には見えぬ細部を捉える。「陣営を補修しているのではない。砦を建てている」
刻晴は窓際に寄り、凝視した。確かに日本兵は秩序正しく動いている。一隊は背後の山林から木材・石材を運び、別の隊は基礎を掘り、大型の部材を組み立てる者もいる……
「一夜で砦を築く?」刻晴は信じられない。「ありえない」
だが事実は目の前にあった。時間が経つにつれ、簡素な砦の輪郭が驚異的な速さで姿を現す。城壁はレンガではなく、太い丸太を束ねた木塀。櫓は既製の見張り台を改造し、城門はどこかから取り外した扉だった……
さらに心を凍らせるのは砦の位置だ。平壌南側唯一の水源、普通江の支流のすぐそばに据えられている。完成すれば平壌の水は絶たれる。
「止めなければならない」刻晴は城壁から飛び降りようとした。
申鶴が彼女を押さえる。「待て。あちらを見よ」
彼女は砦の裏側、月光の届かぬ影を指した。幾つかの特別な人影がぼんやりと見える。顔は判別できないが、その気配は高永康弘、小田成叡、姿を見せていない他の六天大虎たちだ。
「彼らは我々が打って出るのを待っている」申鶴は冷静に分析する。「昼間の強攻が通じなかったので、包囲策に転じた。城を出て築城を壊せば、罠に落ちる。城に留まれば、砦が完成した時、平壌は壺の中の亀となる」
刻晴は歯を食いしばる。「悪辣な計略……誰の案だ?」
二人は視線を交わし、同時に一人の名を思い浮かべた。
――
京都、聚楽第。
豊臣秀吉は眠っていなかった。テラスに立ち、朝鮮から急送されたばかりの戦報を手にしていた。報告には平壌城下三回の戦いの結果が詳しく記されていた。長方天吉は熱いスープに傷つき、雑賀炳潤の銃兵隊は雷の干渉を受け、高永康弘と小田成叡は二人の女を相手に手こずった……
「無駄者」秀吉の声は小さかったが、後ろで跪いていた石田三成は冷や汗を流した。
彼は戦報を火鉢に投げ入れ、紙が炎の中で丸まり、黒くなり、灰へと変わる様子を眺めた。
「六天大虎……ふん、六匹の病猫に過ぎぬ」
三成は低い声で言う。「殿下、怒りを鎮めてください。テイワットの者たちは妖術を使う。戦の責めではございません……」
「言い訳はいらぬ!」秀吉は勢いよく振り返り、狂気の炎を瞳に宿す。「平壌が欲しい!テイワットの妖人の首が欲しい!」
彼は巨大な朝鮮の砂盤の前へ歩み寄り、平壌城の模型をじっと見つめた。長い沈黙の後、突然笑った。
その笑い声は夜梟の鳴き声のように陰気だった。
「強攻で落とせぬのなら……彼らを困り果てさせよ」
彼は小旗を掴み、一本ずつ平壌周囲に刺していく。「命令を伝えよ。高永康弘らに強攻をやめ、築城へ転換させよ。一夜のうちに平壌城外に三座の砦を築き、水源・穀物道・退路をそれぞれ封じよ」
三成は驚く。「一夜……三座の砦?殿下、それは……」
「できぬと言うのか?」秀吉は彼を睨む。「ならば『大虎』たちに伝えよ。成し遂げられなければ切腹せよ。代わりにやり遂げられる者を送る」
指で砂盤の縁をなぞり、声は次第に低くなる。「テイワットの者がいかに強くとも、たった数人に過ぎない。水もなく、穀物もなく、援軍も来ぬ……彼らがどれだけ耐えられるか見てやろう」
三成は地面に伏す。「臣……承知いたしました。ただちに伝令いたします」
「待て」秀吉は彼を呼び止める。「直曲川葛と斎藤岳然へ密令を追加せよ。築城現場の近くに伏兵を敷け。テイワットの者が城を出て妨害に来たら……問答無用で討ち取れ」
「かしこまりました!」
三成が退いた後、秀吉は一人砂盤の前に立ち、平壌を眺めた。外では夜番が三つ更の木柝を叩く音が響く。夜は深まっていた。
「妖術……」彼はつぶやく。「真の絶望の前で、妖術に何の意味があろうか」
――
平壌城壁、寅の刻三つ(午前四時ごろ)。
最初の砦はほぼ形を成していた。丸太の塀は二丈の高さに達し、レンガ張りではないものの、太い丸太は通常の矢や投石を防ぐに十分だ。城門は取り付け済みで、櫓には後方から運ばれた軽砲まで据えられている。
東側では二基目の砦の工事が始まり、西側では三基目の基礎工事が開始された。日本軍の効率は恐ろしい。資材はあらかじめ作られており、組み立てるだけの状態だった。兵士たちは働き蟻のように行き交い、たいまつが光の帯となってつながっている。
「彼らは我々を閉じ込めて殺そうとしている」刻晴は次第に完成する三角形の包囲網を見つめる。「水源、穀物道、退路……すべて封じられる」
申鶴は黙った。今すぐ仙法を使えば砦を破壊できる。だがそうすれば実力をすべて曝し、大虎たちの一斉攻撃を招く。普段なら戦いを恐れないが、今は刻晴が負傷し、城内の守備兵は疲弊しきっている……
「時間を稼ぐ必要がある」彼女は最後に言った。「空たちが戻るか、明軍の主力が到着するのを待とう」
「彼らは時間を与えてはくれない」刻晴は普通江の方向を指す。「遅くとも夜明けまでに、最初の砦が水源を完全に支配する。そうなれば……」
彼女は言葉を続けなかったが、意味は明らかだ。水が三日絶たれれば、平壌は攻めずとも落ちる。
その瞬間、城下から物音が響いた。
香菱は鍋を背負い、数人の朝鮮の婦人を伴って城壁を登ってきた。鍋の中は温かいスープではなく、濃厚で刺激臭の漂う黒い液体だ。
「申鶴姉さん、刻晴姉さん!いい考えが浮かんだ!」香菱の瞳は輝いている。「これは菜種油、ラード、負傷兵から集めた膿……細かいことはどうでもいい。煮詰めて作った特製燃料だ!」
彼女はさじ一杯をすくう。液体はシロップのように粘り気が強い。
「火攻め?」刻晴の目が輝く。
「それだけじゃない!」香菱は乾燥させて粉末にした絶雲唐辛子と璃月の硝石を混ぜた袋を取り出す。「油に振りかけて火をつければ爆発する!威力は大きくないけれど、轟音と炎で大きな混乱を起こせる!」
申鶴は特製燃料の鍋を眺め、城外で急速に姿を現す砦を見て、頭の中で素早く計算した。
「実行可能だ」彼女は結論を下す。「だが陽動が必要だ。我々が仕掛けたと知られてはならない」
「私に任せて!」胡桃がどこからともなく現れ、紙人形をたくさん抱えている。「往生堂特製『紙人兵団』。十五分だけ動けるけれど、注意を引くには十分だ!」
計画はすぐに定まった。胡桃の紙人が西側で偽りの攻撃を仕掛け、混乱を生み出す。香菱と申鶴は東側の砦へ火攻めを実行。刻晴は中央に陣取り、随時援護に備える。
寅の刻六つ、行動が始まった。
胡桃は西城壁に立ち、指先を噛んで血を紙人形に滴らせた。紙人形は瞬く間に膨らみ、人間と同じ大きさの「兵士」へと変わり、よろよろと城壁を下り、西側で築城している日本軍へ突進した。
「敵襲!西側より敵襲!」
日本軍は案の定引っかかり、一部の兵力をそちらへ向けた。だが高永康弘たちは動かなかった。彼らはこれが陽動であると見抜いていた。
今がその時だ。
申鶴は燃料の大鍋を持ち上げ、白鶴のごとく城壁から舞い降りた。足先を壁面に軽く打ち、百丈先へと滑り出す。月光の下、彼女の姿はほとんど白い幻影に過ぎない。
東側の砦で、日本兵は最後の丸太塀を取り付けていた。突然、刺激的な臭いが鼻を突く――
粘り気の強い黒い油が真っ向からぶちまけられた!
続いて赤い粉末が油の上に撒かれる。
申鶴の指先に小さな仙火が宿り、そっと弾き飛ばされた。
「ドゴーン――!!」
炎が空へと噴き上がる!絶雲唐辛子の粉末が混ざった爆燃の炎だ。火の舌は三丈へと立ち昇り、瞬時に丸太塀の一区間を飲み込んだ。さらに恐ろしいのは油の粘りだ。兵士の体に付けば落とすことはできず、悲鳴が絶えなかった。
「消火せよ!急げ!」
日本軍は大混乱に陥る。申鶴はすでに城壁の上へ戻っており、白い衣は汚れ一つなく清らかだ。
だがこの瞬間、異変が起きた。
二つの人影が炎の中から飛び出し、城壁へ突撃してくる!
直曲川葛と斎藤岳然――ずっと暗闇に伏していた二人の大虎だ!
直曲川葛は両拳に鉄篭手をはめ、一撃一撃で空気を裂く。斎藤岳然の大刀は扉のように幅広く、一振りで城壁の櫓を半分砕いた。
彼らはこの機会をずっと待っていたのだ。
「申鶴先輩、気をつけて!」刻晴は剣を抜いて突進し、雷光を迸らせて直曲川葛の一撃を受け止めた。負傷している彼女は衝撃で三歩後退した。
申鶴の表情は無表情のまま、氷の剣を手に凝結させ、斎藤岳然の大刀へと迎え撃つ。氷と鉄がぶつかり、耳を刺す摩擦音が響く。
城下では炎が燃え続け、城の上では新たな戦いが始まっていた。
遠い京都で秀吉は報告を受ける。築城は襲撃を受けたが、敵を誘い出すことに成功した。満足げな笑みが彼の顔に浮かぶ。
「ついに……餌に食いついたか」
彼は白み始めた東の空を眺める。
「夜明け前に、テイワットの妖人の首を持ってこい」
平壌の夜はまだ長い。本当の殺しの罠は、ようやく展開され始めたばかりだ。




