シーン7 世界の警告
赤い文字は、
まだ消えない。
静止した夜の街の中で、
それだけが不気味に輝いている。
レティシアは黙ってそれを見つめていた。
頭の中では、
すでに整理が始まっている。
断罪は
イベントだった。
悪役令嬢には
役割があった。
そして――
それを自分が壊した。
その瞬間。
赤い文字が再び震えた。
ビリッ。
小さなノイズが走る。
まるで壊れた魔法陣のような
不安定な揺らぎ。
次の瞬間。
新しい文字が、
その下に表示された。
赤い光。
冷たい文字列。
RECALCULATING STORY
SEARCHING NEW ROUTE
レティシアの瞳が、
わずかに細くなる。
RECALCULATING STORY
物語を再計算中。
SEARCHING NEW ROUTE
新しいルートを探索中。
沈黙。
彼女はその意味を、
すぐに理解した。
この世界には、
決められた物語がある。
ヒロイン。
王太子。
そして悪役令嬢。
すべての役割には、
用意された展開がある。
だが。
その展開は、
すでに壊れた。
舞踏会での断罪。
婚約破棄。
悪役令嬢の失脚。
それが成立しなかった。
だから今、
この世界は――
物語を作り直している。
レティシアは小さく息を吐く。
静止した馬車の中。
赤い文字が、
ゆっくりと点滅している。
それはまるで、
世界そのものが考えているようだった。
どうやって
物語を続けるか。
どうやって
破壊された展開を修正するか。
そして。
その光は、
まだ止まらない。
まるで、
新しい何かを探しているように。




