シーン6 エラーメッセージ増加
赤い文字は、
空中に静かに浮かんでいた。
時間が止まった世界の中で、
それだけが不自然に存在している。
レティシアは目を細める。
理解できる。
言葉の意味は、
はっきりと読める。
だが――
その内容が、
あまりにも異質だった。
SYSTEM ERROR
WORLD CODE FAILURE
世界コードの異常。
まるで、
この世界そのものが
何かの「構造」で作られているかのような言葉。
レティシアはじっと見つめる。
その瞬間だった。
――ビッ。
赤い光が、
小さく弾けた。
文字が一瞬揺らぐ。
次の瞬間、
その下に
新しい文字が現れた。
EVENT ROUTE COLLAPSED
VILLAINESS SCRIPT BROKEN
レティシアの呼吸が止まる。
イベントルート。
ヴィラネススクリプト。
……悪役令嬢。
その言葉の意味を、
彼女は知っている。
ゆっくりと、
思考が繋がる。
舞踏会。
断罪。
婚約破棄。
ヒロイン。
そして、
悪役令嬢。
それは――
物語の構造。
ゲームの構造。
用意された展開。
レティシアの瞳が、
わずかに揺れる。
「……そういうこと」
小さな呟き。
その声は、
止まった世界の中に溶けていく。
EVENT ROUTE COLLAPSED
イベントルート崩壊。
VILLAINESS SCRIPT BROKEN
悪役令嬢の脚本破損。
つまり。
今日の舞踏会。
王太子による断罪。
それは、
この世界に用意された
「イベント」だった。
本来なら。
レティシアは、
反論できない。
証拠も出せない。
ただ断罪され、
婚約破棄され、
社交界から追放される。
それが、
悪役令嬢の役割。
だが。
彼女はそれを崩した。
証拠を出し、
証言を崩し、
断罪を無効にした。
その結果。
空中に浮かぶ赤い文字が、
静かに点滅する。
EVENT ROUTE COLLAPSED
レティシアは静かに息を吐いた。
そして、
冷静な声で呟く。
「……なるほど」
つまり。
断罪イベントは壊れた。




