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武闘派作家の取材記録〜悲劇の虚構救者〜  作者: 鍵男
1章、天文台の聖女
10/11

幕間「作家の誕生日」(挿絵あり)

挿絵(By みてみん)



最近俺は助手に避けられている、確信がある。どこかよそよそしい、もちろん会話もするし、内容も成り立っている。しかし気づけば助手は最近どこかにふらっと消える。


いつもは、必要以上に話しかけてくる彼女のことだ、今回は異常事態なのだ。


俺は彼女と俺の関係に何か変化が起ころうとしているのではないか、という不安半分。彼女に新たな趣味や人生が生まれたのではないか、という興味半分で彼女のことを調査することに決めた。






彼女は日常生活の家事全般ができないため俺がやっている、だから俺たちは同じ場所で寝泊まりしている。同じ場所、といっても部屋は違う、薄い壁を隔てた隣の部屋だ。

俺の今いる部屋は執筆部屋兼、書斎兼、寝床だ。


彼女の部屋は、寝るだけの場所だ。しかし致命的に汚く物が散乱しているのはいったいなぜなのか。


そんなことを考えながら執筆のメモにアイデアを書きなぐる。

そして昼、今起きてきたのだろう、彼女が俺の部屋にノックをしながら確認もせず入ってくる。これはいつも通りだ、彼女は基本的にいつも俺の部屋で何かをしている。何をするかはいつもバラバラだ、本を読んだり、雑談したり、今は使えない魔石を作ったり。


彼女は目をこすりながら部屋に入った途端、話しかける。

「くし、どっかいった。ある?」

いつも通り何かをなくしたようだ、服は着替えたようだが髪はぼさぼさだ。髪がぼさぼさなのは俺が言えたことではないが。


「あるぞ、ほら。」

あれだけ部屋が汚いと、物もなくすだろう。俺は自分が使うわけでもなく、彼女のためにこんなものを部屋に置いてあった。


「やって、今日出かけるから。」

彼女は寝起き特有のムスっとした感じで、俺の机の横の椅子にどすっと座る。俺に髪をとかせというのだ。


俺は自分の髪すらほぼ頓着しない、だから正直女性の髪など勝手がわからない。でもまぁ何とかなるだろ、という気持ちでやってみる。


くしは意外にもすんなり入る、彼女の髪はサラサラで手触りがいい。不器用な俺でも少しの時間で整えることに成功した!


「ありがと、」

彼女は礼を言う


「部屋かたずけろよ」

俺は、櫛をなくすことがないよう。お節介を言う


「わかんない、片づけ方が」

あぁ。俺も知っている、彼女は片づけ方がわかっていない。しかしそれは物を何処にしまえばいいかわからない、とかどれがゴミか、という判断ができないからではない。

汚いものを汚いと判断するセンサーが壊れているのだ。


前、彼女の部屋がゴミで足の踏み場が完全になくなったことがあった。俺は彼女の成長を思い、片づけを強要した。


しかし、物の数十分で彼女は片づけが終わったと言い出した。俺は確認したが、案の定汚い。


どこが片付いたのかと聞いてみると。彼女は汚いなど思っていなかったのだ。一つ一つ落ちているものを確認すると、彼女は元は見えていなかったように、驚き「確かに!それはゴミだ!」と言い出す。


俺はあきらめた、それから部屋は俺が定期的に片づけている。


「あぁ、いつかな。」


彼女の生活面での自立を祈って、彼女の言葉に返答を返す。



______________________________________




そして彼女は


「用があるから」と

彼女が最近の繰り返す行為、ふらっと抜け出すのを確認。


俺は不安と好奇心に導かれ影を縫いながらばれないよう後をつける。



彼女はいつもの帽子とワンピースに身を包み。大通りを歩く、その姿は何かにわくわくしているように見える。そして彼女の行く先には、






整った顔立ちの青年がいた。





男!?色恋か?????


彼女にしてはとても珍しい、いやそんな毛は無いと俺は勝手に思っていた。何せ70まで結婚歴なしだ。


いや、年齢で恋を濁すべきではないのはわかっている。彼女の見た目は若い、そのうえ、彼女の思考は比較的達観している。その浮世離れしたバイアスに惹かれ、あこがれる男がいてもおかしくはない。



しかし、肝心なのは彼女の幸福だ。



「見極めなくては」


彼女にふさわしい男かどうか、俺が見極める。



彼女は楽しそうに男と会話しながら、街を歩く。ちょくちょく男をおちょくっているのが、草むらに潜む俺の視点からでもわかる。


男も楽しそうだ、とてもいい相性に見える。


しかしそれは一見して、だ。人の本質とは、土壇場、恐怖のなかで見ることができる。

俺は路地裏にいる下品な会話をしている強面の男たちのリーダーに声をかける。


「もし、いいかな?」


「あ?」


「これをやる、あそこにいるカップルの男を3度殴れ。女は絶対に傷つけるな。」

金を手渡す、かなりの額だが。背に腹変えられん。


男はにやりと笑う。

「あんた、悪い男だな。俺に声かけたのは正解だぜ」


「あ、でも殺すなよ。」


「あ、あんたやばいやつか?殺すわけないだろ....」




男と別れ、しばらくあの二人を監視していると



予定通り男は青年に絡む、俺は黒色の本を片手に内容を記録する準備をする


(最悪の場合、デウス・エクス・マキナであの青年との出会いはもうなくす)


男と青年が言い合う、




ーーそこに俺の助手、彼女が火に油を注ぐ、喧嘩を最高のヘイトで買った。


「アンタがぶつかってきたんでしょ、その体躯でその器?

親の遺伝子はよくてもお頭は最悪だったようね。」


俺は額に手を当て、頭痛を感じた。男は金で買われた復讐屋から、完全に個人の恨みを持った暴力屋になった。


男が俺の助手に殴りかかる、ーーーそこに青年が入り、彼女をかばう。

男は標的を青年に変える。一度、二度、三度.....五度殴ったところで。男は、手を止める。

青年は無言で男をずっとにらみつけていた。男は捨て台詞を吐きどこかへ消えた。



俺は酷く後悔した、あの青年はきっといい男だ。彼女に相応しい、俺も戦場にいたことはあるが。あの目が今時できる男はそういない。


黒色の本を閉じる、もう俺がいうことはなかった。


「帰って、小説を書こう」


________________________________


時は夜、静まり返った執筆部屋で俺は、まだメモに向き合う。

そこに何処からかドアが開く音がする、彼女はデートから帰ってきたようだ。


しかし、妙だ。足音は4個。音の軽さから一つは俺の助手に違いない。

残り三つ、重い音がする、何か持っている。剣か?


俺は戦闘態勢に入る。銃に手をかける、よくはわからないがこんなことは珍しい。何かが違う。





ドンっ!!





扉が蹴破られる、俺は身構える。




しかし、その決意は裏切られる。



「ハッピーバースデー!」


俺の助手が先頭となり紙吹雪を投げながら、入ってくる。


俺の目前にちぎられた小さな紙がきらきらと舞う





後ろに楽器を持った集団が音楽を奏でながら続く。


扉をくぐるたび一人ずつ自己紹介をしていく


「俺はハーモニカ!ジョン」


「私はアコーディオン!マイク」


「僕は鍵盤ハーモニカ!セバス」




「「「我らリード楽器愛好団!!!!バグパイプのスミスは今日デートだ!!!!」」」




似たような音が重なり、音楽になっている。全部ほぼ一緒だ、なぜよりによってバグパイプがいないのか。



パーティーハットをかぶった俺の助手はいじらしくニヤニヤしている


「ねぇ!驚いた!?」


そこで思い至る、彼女はデートをしていたわけではなかった、きっとこれの準備を今までしていたのだ。


「一階を借りてるの!ディナーはまだでしょ、ケーキもあるよ!」



これは喜劇だった。

___________________________________


夜は深け、もうすぐ12だ、リード楽器愛好団はもうとっくに帰った、俺は一階で助手のリードで誕生日を楽しんだ。


「そうか、俺、今日誕生日だったんだ。」


執筆部屋で、彼女からプレゼントされた万年筆を眺める。あの青年と選んだそうだ。ちなみにあの青年は俺の小説のファンだそうだ。


そこの助手が入ってくる。

「あぁ、ハーヴェ、あの青年にお礼がしたい、今度会いたいんだが」

俺が仕向けて殴らせたことは言っていない。


助手は小さな紙を机に置きながら言う

「あぁ、今度な。ほい、これ」


「これは?」


助手は何も言わず、速足で部屋を出ていく。




ーーー紙の内容は請求書だった。

楽器団

万年筆

料理

ケーキ(くそ高い)


苦労代.............????



「ちょ、まておい、まて」

俺は笑うしかなかった。




__________________________________





この俺たちの関係はきっと死ぬまで続く。そう感じる。


しかし今回の様に登場人物は物語に何が起こるかわからない。そう、あの星が導く町の様に。唐突に訪れた聖女との対立。俺はあんなことになるとは思っていなかったんだ。



もし物語を救いたいなら、俺は主人公でありながら同時に筆者でなくってはならない。

物語のプロット、テーマ、メッセージを現実から読み取らなくてはならない


聖女の敵になり、ーーいやきっと最初から俺は敵だったーーーやっとこれが物語の一幕であることに気付くんだ、ジャンルは「悲喜劇」

涙も笑いもなくてはならない



そしてテーマは


「明ける永夜、迎えた黎明」だ。


だからあの長い夜、俺は書き続けた。

信じた陽光が彼女の心を照らすまで。

たとえ最善が一つしかなかったとしても──

悩み、考え、あがき、無数の未来を模索した末に選んだ、俺なりのハッピーエンドへの道だった。



リード楽器愛公団は結構演奏が上手です。でも、それぞれリード楽器しか使いません。

あと、人の親を悪く言うのは絶対にやめよう!

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