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美少女が家族になった話  作者:


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コンクール②

学校に戻ると、先ほどまでステージ上で感じていた高揚感が、今度は実感を伴った歓喜となって爆発した。部員全員が肩の荷を下ろし、しかし県大会への期待に瞳を輝かせている。


俺は部員たちの前、いつもの指揮台の位置に立ち、大きな声で挨拶を切り出した。


「みんな、今日は本当にお疲れ様!」


部員たちがパッと俺に注目する。


「まずは、金賞! そして県大会出場決定、本当におめでとう。みんなの演奏、とても良かったです!」


部員たちが「ありがとうございます!」と口々に言い、その顔が一気にほころぶ。俺は手に持った講評の紙を掲げた。


「それから、もう一つ報告です。審査員の先生方からも非常に高い評価をもらえました。……点数を確認したところ、今回、『一位通過』でした!」


その瞬間、部室が揺れるほどの歓声が上がった。


「「「「おーーー!!!!」」」」


誰かが誰かと抱き合い、あちこちでハイタッチが飛び交う。その中心で、七海が誇らしげに俺を見つめていた。彼女の瞳には、今日一番の笑顔が浮かんでいる。


歓声が少し落ち着いたところで、俺は一度深く頭を下げた。


「……みんな、ここまで俺の不器用な指導についてきてくれて、本当にありがとう。みんなが一生懸命音に向き合ってくれたから、今日の結果があるんだ。指導させてくれて、本当にありがとう」


顔を上げると、部員たちが真剣な、しかしどこまでも温かい眼差しで俺を見ていた。


「……これから県大会、その先の東関東大会、そして全国大会まで……みんなともっと高いレベルの音楽を作っていきたい。ぜひ、このメンバーで最後までよろしくお願いします!!」


「「「「よろしくお願いします!!!」」」」


部員たちの返事は、今日一番の熱量で部室を震わせた。


「ああ、それと。ここに飲み物とお菓子置いておくから、帰る時に持っていってね」


俺は教壇の脇に用意しておいた段ボール箱を指差した。


「「「ありがとうございます!!!」」」


「小腹空いてたんだよね」「差し入れだ!」と盛り上がる声を聞いていると、ようやく肩の荷が下りたような気分になる。コンクールの緊張感から解放され、いつもの年相応の高校生に戻った彼らを見て、俺は小さく息を吐いた。


「悠先輩、ありがとうございます! 飲み物まで……気が利きますね!」


部員の一人がそう言って笑いかけ、俺は苦笑しながら応じる。


「これくらいしかできないからな。……とにかく、今日はみんなでゆっくり休んでくれ」


部員たちが飲み物やお菓子を片手に笑顔で部室を去っていく中、七海も楽しげに友人と談笑しながらお菓子を選んでいた。やがて友人たちも帰路につき、部室にはポツポツと、しかし着実に人が減っていく。

ついに、部室には俺と七海だけが残された。

二人きりの静かな空間。窓の外の茜色が、少しずつ紫紺の夜に染まりかけている。


「……お疲れ様」


「七海も、本当にお疲れ様」


そんな会話を交わした直後だった。

部室のドアが控えめに開き、穏やかな笑みを浮かべた顧問の先生が入ってきた。


「お疲れ様」


俺たちは反射的に姿勢を正し、深く頭を下げる。


「お疲れ様です!」


先生は優しく目を細め、部員たちが片付けた後の様子や、教壇に置かれた賞状を眺めた。


「今日の演奏、聴かせてもらったよ。素晴らしい音楽だった。……やっぱり君に任せて正解だったよ」


その言葉に、胸の奥がぎゅっと熱くなる。

当初、自分の指導が本当に正しいのか、不安に押しつぶされそうになる夜は何度もあった。先生のその言葉は、それら全ての迷いを打ち消してくれる何よりの勲章だった。


「……ありがとうございます。でも、これはあくまで部員たちが一生懸命ついてきてくれた結果です」


俺がそういうと、先生は「ふふ」と柔和に笑い、俺と七海を交互に見た。


「そうだな。でも、その部員たちの力を引き出したのは、他ならぬ君の指揮だよ。……本当にお疲れ様」


先生は俺の肩に優しく手を置き、短く労いの言葉をかけると、穏やかな足取りで部室を後にした。

先生が廊下へ消え、再び静寂が戻ってきた部室で、七海が小さく息を吐いた。


「……よかったね、悠くん」


彼女の表情には、俺自身の功績を自分のことのように喜ぶ、純粋な優しさが浮かんでいる。


「……ああ。先生にそう言ってもらえると、ようやく肩の荷が下りた気がするよ」


俺は指揮台から譜面台を片付け、部室の明かりを落とす準備を始めた。

窓の外はすっかり夜の帳が下りている。校庭の向こうには、街の明かりが遠く瞬いていた。


「さて。七海、帰ろうか。今日ぐらいは、自分たちをたくさん褒めてやろう」


「うん。……そうだね」


七海が楽器ケースを背負い、俺の隣に並ぶ。

学校の校門へと続く静かな廊下を、俺たちは肩を並べて歩き出した。コンクールの重圧から解放された夜風は、今日一日を労うように心地よく俺たちの頬を撫でていた。

読んでくださってありがとうございます。

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