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第二十四話:学園祭開幕! 王国を揺るがす『屋台メシ』

――カァン、カァン、カァン!

 

 学園の鐘が鳴り響き、色とりどりの魔法の花火が昼の空を彩った。

 ついに始まった『王立魔法学園祭』。

 

 例年の「静かで退屈な社交会」を期待してやってきた各国のVIPや貴族たちは、正門をくぐった瞬間に足を止めることになった。

 

「……な、なんだ、この香ばしい匂いは!?」

「学生たちが、外で火を使って何かを焼いているぞ!?」

 

 そこにあるのは、俺と美緒がプロデュースした「模擬店通り」だ。

 立ち並ぶテント、威勢のいい学生たちの呼び声。そして、空腹をダイレクトに刺激するソースの焦げる匂い。

 

 俺は実行委員長の腕章を巻き、美緒を伴って、混乱する来賓たちの前に立った。


「皆様、ようこそ。……これより始まるのは、美食と魔法の祝祭です。どうぞ、着飾ったままの姿で、当学園の知恵と魔法の融合を楽しんでください」


 俺は完璧な営業スマイルで、隣国の重鎮たちを誘導する。

 その隣で、美緒は既に「クレープ」を手に、幸せそうに頬張っていた。


「……ん! パパ、この生クリーム、魔力で冷やし固めたから最高に口溶けがいいわ! これ、一個銀貨一枚じゃ安すぎたんじゃない?」


「いいんだ。……まずは普及が先だ。セラフィナ、口元にクリームがついているぞ」


 俺は懐からハンカチを取り出し、彼女の唇の端を優しく拭ってやった。

 

 その瞬間。

 植え込みの陰から


「……ッ!」

「開始一分でもう浄化される……!」

「パパ、拭き方がプロ……!!」

という、例の『見守る会』の咽び泣きが聞こえてきたが、もはや背景音として処理する。


「おい……。これは一体、何の料理だ?」


 声をかけてきたのは、昨日の「魔剣粉砕」でまだ少し顔色が悪い帝国の皇子レオンだった。

 彼は半信半疑の顔で、学生が焼いている「魔法焼き(たこ焼き)」を見つめている。


「これは『魔法焼き』です。……精密な火属性魔法で表面をカリッとさせ、中はトロトロの状態を維持する。……殿下、一口いかがですか?」


「ふん。……生地を丸めただけの料理が、そんなに美味いわけが――」


 俺は、熱々のたこ焼き……もとい魔法焼きを、串に刺してレオンの口に放り込んだ。

 

「あふッ!? あ、あつい……あ……ハフ、ハフ……。…………っ!!」


 レオンの目が、カッと見開かれた。

 

「……な、なんだこれは!? 濃厚なソースの味と、中から溢れ出す旨味……! それに、この絶妙な火加減……! 我が帝国の宮廷料理人ですら、これほど完璧な温度管理はできんぞ!」


「『魔法の無駄遣い』。……我々が目指したのは、それです」


 俺は不敵に笑った。

 

 大陸中のVIPたちが、驚愕の声を上げながら次々と屋台に並び始める。


 聖騎士団の団長が「クレープ」を持って目を輝かせ、隣国の国王が「フライドポテト」を指で摘みながら、「これは革新だ! 軍事利用以外に、これほど魔法を平和的に、かつ効率的に使うとは!」と、感嘆の声を漏らしている。


(……よし。第一段階は成功だ)


 俺の狙いは、単に食べ物を売ることではない。

 

 「アラリックという実行委員長が率いるこの学園には、自分たちが想像もできない『新しい概念』がある」


 そう思わせることで、彼らの「王国への侮り」を根底から覆すこと。

 

 そして、その中心にいる俺と美緒を、絶対に敵に回してはいけない「未知の脅威」として定義することだ。


「パパ。……なんだか、皆さんの目つきが変わってきたわね。……尊敬と、恐怖が半分ずつ、かしら」


 美緒が、クレープを完食して俺の腕に寄り添う。

 

「ああ。……いい傾向だ。……セラフィナ、お前は次、何が食べたい?」


「んー、次はパパと一緒に綿菓子を半分こしたいな! パパの風属性魔法で作った、雲みたいな綿菓子!」


「……了解だ。……注文を受けよう」


 俺たちは、VIPたちの喧騒を置き去りにして、仲良く次の屋台へと向かった。

 

 背後では、エドワード王太子が「魔法焼きの売り子」として必死に働き、お客の貴族から「王太子が焼くたこ焼き……!? これこそ、王国の懐の深さか!」と、勘違いの極致のような絶賛を浴びていた。


「……あのアラリック様、見て。……パートナーを無視して食べ歩く他国の王族を余所に、セラフィナ様の食べたいものを最優先で用意されているわ……」

「(……キャーーー!! パパみが世界を救うぅぅ!!)」


 『見守る会』の熱狂を背に、学園祭はかつてない盛り上がりを見せていた。

 

 ――平和だな。

 

 俺は、娘のために作った真っ白な綿菓子を手渡し、彼女の幸せそうな笑顔を見つめながら、これから始まる「お化け屋敷」での阿鼻叫喚を思い、静かに口角を上げた。



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