75.雪の朝
クリスマスの次の日。
朝。
目が覚めた。
部屋の中は静か。
あやめは布団の中で少しぼんやりする。
そして。
カーテンの隙間が白いことに気付いた。
「……?」
起き上がる。
カーテンを開ける。
外を見る。
「雪です」
屋根。
道路。
庭。
うっすら白い。
積もっている。
「三センチくらいですかね」
この辺りは、あまり雪が降らない。
だから。
ちょっと嬉しい。
あやめは急いで着替える。
外へ出た。
空気は冷たい。
吐く息が白い。
そして。
地面。
誰の足跡もない。
「……」
あやめは一歩。
踏み出す。
サク。
白い雪の上に。
自分の足跡。
「おお」
もう一歩。
サク。
また足跡。
「なんか」
「楽しいですね」
あやめは少し歩き回った。
足跡。
足跡。
自分の足跡が増えていく。
なんとなく満足。
でも。
あやめは時計を見る。
「……」
「新聞配達」
仕事だ。
あやめは自転車のところへ行く。
雪。
ちょっと積もっている。
「まあ」
「なんとかなるでしょう」
出発。
最初は。
まだ良かった。
でも。
すぐ分かった。
「……」
「大変です」
まず。
滑る。
自転車。
危ない。
「これは」
「乗らない方がいいですね」
押して歩く。
でも。
歩くのも大変。
足元。
ぐに。
ずる。
取られる。
「うわっ」
何度か滑りそうになる。
それでも。
なんとか配達。
ポスト。
新聞。
ポスト。
新聞。
いつもより。
かなり時間がかかる。
手も冷たい。
足も冷たい。
そして。
やっと。
最後の家。
新聞を入れる。
「……終わりました」
あやめは空を見た。
朝の空。
うっすら青い。
あやめは小さく言う。
「雪」
「楽しいのは最初だけですね」
あやめはきっぱり結論を出した。
「雪なんか」
「大っきらいです」
そう言いながら。
あやめはフェアリーハイツへ戻った。




