19.温泉卓球
温泉から出て、体を拭いて廊下を歩いていると、広間の隅にあるものが目に入った。
卓球台だ。
温泉宿によくある、あれである。
すると――
「卓球台!」
すずさんが真っ先に食いついた。
「おお!」
すずさんはもう完全にやる気だ。
「やろうやろう!」
ゆいさんもすぐに乗ってくる。
「いいわね」
りんさんもラケットを手に取る。
「せっかくだし少しやりましょうか」
あずささんも乗り気だった。
しずくさんは少し笑いながら言う。
「汗かくからほどほどにねー」
すると、すずさんが即答した。
「まだ温泉入ればいいし!」
「確かに」
ゆいさんも笑う。
そんな流れで、卓球大会が始まった。
「いくよー!」
すずさんのサーブ。
カン。
軽い音が響く。
「おっと」
ゆいさんが返す。
カン、カン。
温泉宿の卓球らしく、みんなでワイワイとラリーが続く。
「それ!」
すずさんが強めに打つ。
「あっ」
ボールがネットに当たって落ちた。
「惜しい!」
私は思わず笑った。
「はい次!」
今度はりんさんとあずささん。
二人とも意外と上手い。
カン、カン、カン。
ラリーが続く。
「おお」
すずさんが感心する。
「上手い」
「普通よ」
りんさんは涼しい顔だった。
そのあと、私も混ざることになった。
「あやめちゃんもやる?」
ゆいさんがラケットを差し出す。
「やります」
せっかくだし。
カン。
カン。
ラリーはそんなに続かなかった。
「あ」
私がミスする。
「惜しい惜しい」
すずさんが笑う。
でも楽しい。
温泉上がりに卓球。
温泉宿っぽいイベントだ。
しばらくみんなで交代しながら、ワイワイと卓球を続けた。
「はー」
すずさんがラケットを置く。
「汗かいた」
「結構動いたわね」
ゆいさんも笑う。
私も額の汗を拭いた。
「温泉入ります?」
私が言うと、
「入る入る!」
すずさんが即答した。
「もう一回入ろう」
「そうね」
りんさんも頷く。
「せっかくだし」
あずささんも笑った。
ということで。
私たちは、もう一度温泉へ向かった。
さっきより体が火照っている。
湯船に入る。
「はぁ……」
思わず声が出た。
「極楽」
すずさんが言う。
「温泉のあと卓球して、また温泉って最高」
確かに。
温泉宿って、こういう楽しみ方をする場所なんだろう。
私はのんびりと湯船に浸かった。
山の空気は静かで。
お湯は温かくて。
なんだか、とても贅沢な時間だった。




